ポカラ 激流を吸い込む滝 村上春樹の「世界の終わり」の脱出口に向かう ナマステ④
大木の木陰から10分ほど歩きます。川岸が近づいてきました。岸辺には水たまりができています。その一つに2頭の水牛が水浴びをしています。かわいいです。ところがすっかり忘れていましたが、お昼が近づき気温が高くなっていました。汗をたくさんかき始めます。水分補給の時です。
ネパールやインドでは当時、コカ・コーラ以外の飲料は腐っていると思えとアドバイスされていました。インドではコカ・コーラもインド企業が生産しているので、腐っている時があると注意されたこともあります。こうなれば幸運か不運かの占いみたいなものです。
道路沿いにあったお店でコカコーラを買おうと寄ったら、向こうから日本人の女性2人が歩いてきました。再び迷います。「笑って声をかけた方が良いか」「姿を見なかったふりをして無視した方が良いのか」。
声をかけたら「せっかくポカラにまで来たのに汚い格好をした日本人に声をかけられた」と思うのに決まっています。といって無視したフリをすると、スカした奴だと思われます。考える間もなく目と目が合い、軽く会釈しました。
案の定、「なんでここで日本人に会うの。私たち運が悪い」といった表情に変わります。そのまま通り過ぎていきました。少々不愉快でしたが、水牛がのんびり水たまりに入っている表情を見てすぐに忘れました。
コカ・コーラを買ったお店近くの路上にある水道の蛇口で子供たちが水浴びをしています。そばを流れる川にかかる橋から何度も飛び込んで遊んでいたのですが、水遊びを終えると身体を水道で洗っています。「おっさん、どこに行くんだ、泉に行くのか」といった感じで話しかけてきました。「案内するよ」。私は独りですから話し相手がいても良いかと考え、「一緒に行くか」。年頃は小学生か中学生か、わかりません。カトマンズでも経験しましたが、栄養状態が良くないので年齢と背格好が日本の尺度では計れません。まあ、どうでも良いです。その少年はペラペラの薄いサンダルを履いていました。しかし、そのサンダルは足の裏にくっついているみたいに少年の足を守ってくれているようです。
滝までの道中、川を渡ったりするのですが、濡れて滑りやすい岩に足を置いても滑る気配が全くないのです。岩上をぴょんぴょん飛びまわります。スニーカーを履いているこちらの足元がおぼつかないのに、なぜ。かなり安いサンダルなのに、まるで足の裏皮に吸盤がついているようです。その少年のサンダルの裏を眺めなら、ようやく目指す滝が近づいてきました。