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早朝、雲が描く美しいぺワ湖

ポカラを歩いていたら、村上春樹の「世界の終わり」の脱出口を見つけてしまった。ナマステ

 村上春樹さんの小説を初めて読んだのが「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」(新潮社)。1985年に出版されていますから、それから1年以内かちょっと過ぎた頃に読んでいます。

 村上さんの作品は以前から興味はあったのですが、なんか正体不明に映り、イメージができなかったせいかすぐに手に取ることができませんでした。直感だけです。でも、近所の古本屋で「世界の終わり」を見つけ、割安に買ったのだから読後が良くなくても後悔はしないだろうと思い直して読み始めたのです。

 私にとっては古本屋さんが「村上春樹のワールド」の入り口でした。案の定、読み初めは筋書きが頭に収まりません。この表現がぴったりします。文章を読んでも脳に染み込まないのです。「どうしようかぁ」と当惑しました。「古本だから損はない。どこまで読んだらおもしろくなるか、このままずっとおもしろくないのか付き合ってみよう」と少しずつ読み続けたのです。

 それが正解でした。面白くてやめられなくなりました。小説の筋書きに惚れ込んだわけではありません。小説が創り上げる宇宙が新鮮でした。主人公の世界に二つの世界が現れ同時並行、そして交差しながら出来事が起こります。どちらが現実か仮想かはわかりません。

 ユングが考えた影の存在ともいえるトリックスターを意識したのかわかりませんが、文字通り「影」というキャラクターが登場し、期待通りの役回りを演じます。主人公が意識した世界の中で、主人公が意識しない様々な出来事が起こり物語が複雑化し、読者にとって謎解きの遊びが始まります。まるで物理学で知った陽電子と陰電子が描く鏡の世界に似ています。でも、鏡の向こうとは異なるストーリーが綴られ、もし陽電子のプラスと陰電子のマイナスが接触すると・・・。物理の世界では主人公は光となって消えてしまいます。

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 時間軸を半日戻します。早朝、ポカラ行きのバスを見つけるため、カトマンズのバスセンターへ向かいます。宿泊したホテルのスタッフに聞いたら「あの広場に行けば路線バスがたくさんあるから、探せばわかる」と言われたので、早起きして向かいます。

 バスの看板を見てなんとなく行き先はわかるのですが、住んでいる日本でも同じように、探しているバスが確かに目的地にたどり着くのかを確認するのが結構大変です。バスの運転席に座っている運転手に何度も行き先を確認します。

 以前、インドのカルカッタ(現コルカタ)の空港でバス会社の受付と運転手に何度も確認して乗車したら、行き先が全く違う悲惨な経験をしたことがあります。確認した二人ともバス会社のスタッフではなく、そこに偶然居た人だったそうです。

 なぜ偶然、受付と運転手席に居たのか不明でした。当然、教えてもらった情報は全て間違いでした。ですから、カトマンズでもネパール人は信用していますが、確認した情報を鵜呑みにはできません。納得するまで確認し続けます。新聞記者の基本と同じです。

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