ポカラのバス停留所前

ポカラで村上春樹の「世界の終わり」の脱出口を見つけてしまった。ナマステ ②

「ノルウェーの森」でも主人公と恋人とのやり取り、心の移ろいなどが描かれています。自分自身にとっては小説の世界の絵空事と受け止められません。精神の病が進むとお昼に姉と話している現実と、夜の姉とのギャップが大きく、現実と幻影の境目がだんだん分からなくなっていきます。

「世界の終わり」が茫洋とした読後感だったという表現を借りれば、「ノルウェーの森」は現実の世界でした。小説の進行通り、自分の生活でも姉との心の距離がどんどん遠のいていきます。怖いです。偶然にも小説の舞台となった中央線に私も住んでいたこともあったのでしょう。さらに主人公の恋人が通った武蔵野の大学に姉は通っていました。小説が描く世界と姉と自分が暮らす生活がどんどん重なっていきます。

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蛇口からボウフラが、でも飲まないから大丈夫

ポカラの生活の一部

ポカラの生活の風景

ポカラのバス停留所から荷物を背負い、街に向かって歩き始めます。川が流れています。名前は知りません。まもなく水門が見えます。きっとダムの役目を果たしているのでしょう。初めて見る風景ですから、荷物を背負っているとはいえ飽きもせず歩きます。時間の経過は全く感じません。

街が見えてきました。思ったよりペワ湖畔には街があります。日本の感覚でいえば集落ですか。もっといえばバラックに近い建屋も目立ちます。でも、ここはネパールです。しかも、ポカラに来たからには五ツ星ホテルに宿泊する考えはもともとありませんし、財力もありません。できるだけ現地の人と同じ生活状況を体感するのが希望です。家並みが増えていく方向へ歩いていくと、右の横道に「ゲストハウス」という表示を見つけました。

その表示は新品でした。看板が新品ということはゲストハウスの建屋も設備も新品なはず。という楽観論に頼って窓口と思える家に向かっていくと若者が待ち構えていました。とっても気楽な雰囲気です。「部屋の中を見せて」と言ったら、「こっちだよ」と木がいっぱい生えた中庭に建っているゲストハウスを紹介してくれました。

ポカラのゲストハウス

ポカラのゲストハウス

予想通り、建屋は完成したばかりなのでとても綺麗。ただ宿泊するにしても、一番注意する必要があるのは水です。生水は飲めないのは常識ですが、衛生状態を調べるためには水がまず”リトマス試験紙”です。屋外にある水道の蛇口をひねると、水は流れ出てきました。

よく見るとゴミのようなものが見えます。もっとよく見ると蚊の幼虫、ボウフラでした。心の声は「う〜ん」がかなり大きかったのですが、「どうせ蛇口から水を飲むことはしない。喉が乾いたら、お店で売っているコーラを飲むしかない」と納得して、宿泊を決めました。結果、とても快適でした。ポカラを再び訪れた時も、このゲストハウスに宿泊したぐらいですから。ただ、再訪は数年後でしたが、かなり傷んでいました。

それもポカラです。

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