イグアナ とハイブリッド車⑤ 食欲は旺盛、電気とガソリンに続き植物、水素、CO2
ハイブリッド車の食欲はすごい。もともとガソリンも電気も両方をエネルギーとして取り込もうという動物です。100年ちょっと遡れば、ガソリンを燃料とする内燃機関エンジンの祖先にすぐにたどり着きます。エンジンが良いのか、電気が良いのかなどは地球の歴史からみれば、まだ歴史と呼べるほどの時間が経過しているわけではありません。どんどん変態するのは当たり前。
自動車のDNAは「いかに気持ち良く移動するか」
自動車の体内に染み込むDNAは「いかに気持ち良く移動するか」。楽しくクルマを操作できるかだけではありません。運転する人、利用する人が毎日生活する地球環境に悪影響を与えていないか、運ぶ荷物を大事に予定通りに届けることができるのか。最も大事なのは命を預けるに値する乗り物かどうか。このDNA、言い換えれば自動車が誕生した時から一瞬たりとも忘れてはいけない原点です。
ガソリンでも電気でもどちらでも良いはず
この”歴史観”に立って見ると、ハイブリッド車がガソリン、電気に拘る理由はありません。ガソリンはたまたま燃料として目の前にあっただけと思えば、次代の進化がすぐに見えてきます。
今に目の前にある”エサ”はeFuel。太陽光など再生可能エネルギーで得た電気を使い、ブタノールや水素、さらに炭素を含むメタンやブタンなどから生み出される合成液体燃料です。CO2の削減を目的にした燃料だけに、使用する電気は再生可能エネルギーに限り、原料もCO2を利用します。製造工程から燃料として完成するまでカーボンニュートラルの枠組みから外れないのがミソ。これまで活用されずに排出されていた温暖化ガスをクリーンな状態に戻しながら、ガソリンの代替燃料として活用すると言えば良いでしょうか。
eFuel、SAFの実用化が近い
代替燃料への切り替えはすでに航空業界でも始まっています。ジェット燃料に代わるSAFです。日本ではミドリムシの研究開発、製品化で知られるユーグレナがバイオ燃料を生産し、飲食店などから出てくる廃棄物や廃棄油なども使って量産が始まっています。成田空港にSAFを供給する施設が完成し、航空機の燃料として本格的に利用される段階にまでこぎつけています。
eFuelも2010年代に欧州で提唱され、アウディやポルシェなどが研究開発で先行しており、日本でもトヨタ自動車、日産自動車、ホンダが本格的に実用化に取り組んでいます。生成されたeFuelはガソリンやディーゼルなどと混ぜ合わせて使用します。
ハイブリッド車の新たなエネルギー源として有力視される背景には、CO2削減の考え方を自動車が排出する量だけに限定せず、素材・部品の製造から運転までエネルギー全体にまで広げようという動きがあるからです。電気自動車は運転中、CO2を排出しませんし、エネルギー効率も高い。しかし、主力部品のバッテリーの製造工程で多くのCO2を排出することが知られています。電気自動車一台を生産するまでに排出する量は、バッテリーなど素材・部品の製造すべてを含めればガソリン車と変わらないのではないかという指摘すらあります。
今後の技術革新もハイブリッド車の背中をまだ押し続けます。代替燃料の開発や生産工程の進化は、CO2排出のみならず逆にCO2を原料として利用することを可能にするはずです。そうなれば、電気自動車一辺倒よりも、エンジンと電気双方のメリットをフルに活用できるハイブリッド車が健在である方が地球全体のエネルギー消費としては最適解になります。
ハイブリッドはエンジン、モーターで幅広に進化できる
ハイブリッド車はガソリンを使ったエンジン、電気モーターの二つの駆動方式を内蔵しています。どちらの方式もかならずもっと進化します。それぞれの進化を新たなDNAとして染み込ませれば、電気や水素など一つのエネルギーに限定した自動車よりも脱炭素という難問を解く答に近づくことができます。
長生きするためにも食生活を大事にしなさいと医者によく言われます。ハイブリッド車の近未来を考えると、つくづくその通りだと思います。