実録・産業史19)マレリ、いや日ラヂ、関東精器がんばれ 自動車部品メーカーの消滅が始まるのか
マレリはカルロス・ゴーンの系列解体で誕生
マレリの経営危機は氷山の一角です。カルロス・ゴーンによる系列解体のあおりを受けて独立系の道を歩まざるを得なかったマレリが先頭を切る形で水面に浮上しただけです。自動車部品の開発・生産は納入先であるトヨタや日産などの開発動向に合わせて進みます。10年後を見通した場合、心臓部の駆動力が内燃機関エンジンから電気モーターへ切り替わるのが確実。部品メーカーは開発や生産の投資についてかなり慎重にならざるを得ません。
成長投資を手控えれば、待っているのは経営の縮小から立ち往生です。電気自動車関連の部品や自動車以外の事業分野を開拓するする道が残されているだけです。自動車部品メーカーは精密加工した部品を大量生産する技術とノウハウを豊富に持っています。この得意分野をどう活かすかが自らの未来を定めることになります。
トヨタ系のデンソーはTSMC,ソニーの半導体工場に資本出資
偶然にもマレリの経営危機が浮上した15日、デンソーは、台湾のTSMCとソニーグループの合弁会社に約400億円を出資して10%超の株式を取得すると発表しました。この合弁会社は、熊本県に自動車向けなどの半導体を生産する工場を建設し、2024年末までに生産を始める計画です。
デンソーは自動車の電子・電装部品分野でトヨタをも寄せ付けない世界的な技術水準を走っています。TSMCやソニーとは工場を拡充してより微細加工を施した半導体を生産する計画で、電気自動車の開発でさらに先行する考えのようです。
自動車産業はトヨタなどの完成車メーカーを頂点に数多くの部品メーカーによる裾野が広がるピラミッド構造を形成しています。デンソーやマレリはピラミッドの頂点から少し下がった位置にある部品メーカーです。デンソーやマレリよりピラミッド下層にある部品メーカーは企業体力、技術開発力で見劣りします。
経営支援を求めても、助けの手を授けてくれる相手がいるかどうか。新規事業分野の進出に向けて同業同士、あるいは優秀な生産技術を求めて電機やITなどの異業種からM&Aが本格化するのは確実です。
マレリの経営危機は自動車産業が大変革を迎える大嵐を予感させる「春一番」です。