残念な会社 パナソニック 市場創造できない! 背負った看板の重さが挑戦を阻む (その2)
パナソニックの最大の弱点は市場を創出した成功体験がないことです。数多くのヒット製品を世に送り出していますが、主力製品は日本ビクター、三洋電機はじめ国内外の企業と提携を重ねて製品化している例がほとんど。ソニーのウォークマン、任天堂のゲームボーイ、シャープの液晶など世界を席巻する「マーケット」を創出した事例は見当たりません。表現は厳しいですが、知恵と手先は良いので世渡りがうまいが、器用貧乏に終わってしまう。貧乏な会社じゃないので、この例は間違っていますね。
津賀社長時代にはパナソニックならではの新しい概念「HomeX」を提案しまています。インターネットとデジタル技術を活用して、住む人の思いに合わせて家電や住宅機器が機能します。家を情報技術の塊ととらえ、「暮らしやすい」をキーワードにソフトとハードを一体にしたエレクトロニクス産業に生まれ変わろうという願いが込めれていると理解していました。
負の遺産の清算は残ったまま
残念ながら、パナソニックの組織は、拡大路線を突っ走る事業部制時代が残した負の遺産を清算することができません。会社一丸となって目標に突っ走る軍隊のような組織力には定評がありますが、加速度的なデジタル技術の進化で「日進月歩」から「秒新日歩」のスピードで変化するエレクトロニクス産業です。
まずは顧客に最も近い現場の意見が経営幹部に伝わる風通しの良い組織に生まれ変わるのが先決でした。新しい挑戦を評価し、失敗しても加点する組織です。上司の指示に従う保身の空気をどこまで一掃できるか、に尽きます。結局、「HomeX」が新しい市場に向けた、いえいえ新しいパナソニックへの起爆剤になりませんでした。
パナソニックが優良企業に復活するためには、今背負っている過去の成功体験をどう昇華できるかにかかっています。どん底にあったソニーは当時の平井一夫社長はボロクソにOBらから批判を浴びていました。またソニー出身の社員をアマゾンやスポティファイなど世界で注目を集める企業で見かけました。ソニーをやめても海外のユニコーン企業で活躍できる人材を多く輩出していました。今のパナソニックはどうでしょうか。パナソニックだけでしか通用しないのなら、これからもパナソニックはパナソニックのままでしょう。
「失敗すればやり直せば良い」が復活への里程標
まずは社内外からどのぐらいの意見、批判を集められるのか、それを社長はじめ社員全員が共有できるのか。松下幸之助さんは「とにかくやってみることだ。失敗すればやり直せば良い」と説いています。それが復活できるかできないかの最初の里程標のように思えてなりません。
最後につまらない妄想を。三洋電機はユニークな技術と発想で世界から注目を浴びる製品を世に送り出しました。でも、営業力がない。パナソニックは技術力と人材が豊富なんだけど、おもしろい新製品を創り出すことができない。でも、営業力は他を圧倒する。歴史に「もし」はありませんが、井植歳男さんが松下電器を離れずに松下幸之助さんと一緒に経営していたら、ソニーやアップルのような会社になっていたかもしれませんね。夢物語です。