日産・ルノーの秘密契約 身売りのルノーを日産が自らの身売りで救済 稚拙な外交力が露わに
日産自動車は2022年6月30日、仏ルノーとの提携契約の内容の一部を有価証券報告書で初めて公開しました。当初から日産が大幅に譲歩し過ぎと考えていましたが、資本提携の枠組みは日産もルノーも倒産寸前まで追い込まれていたとはいえ、日産が情けないほど譲歩していることが判明しました。日産を庇うつもりはありませんが、日仏政府の駆け引き、外交力の差を如実に反映した結果です。まだまだ続くであろう国際的な企業救済を考えるうえで悔しい教訓です。
不平等な契約内容を初めて公開
実は、日産、ルノーの契約内容について2日前の6月28日に開催した定時株主総会で株主から開示要求されていました。総会では否決されてしまいましたが、日産は契約上の守秘義務に抵触しない範囲で情報を開示する考えを明らかにしていました。日産がルノーと資本提携を結んだのは1999年です。もう23年近くの歳月が過ぎたにもかかわらず、ようやく公開です。戦後の外交極秘文書のようです。お互いに株式上場しているのですから、両社の未来を予測するためには重要な契約ですから、20年以上も極秘扱いする理由がよくわかりません。カルロス・ゴーン元社長の役員報酬を巡るゴタゴタや日産社内の権力闘争が話題になっても、外部の人間にはよく理解できなかったのは当然です。
両社の力関係を簡単に要約します。日産は資本・業務提携時にルノーと基本契約を結んでおり、2001年12月には「アライアンス基本契約」、2002年3月には「改定アライアンス基本契約」と3度、改定されています。現在はルノーが日産の株式を43.7%を所有する筆頭株主として実権を握っています。これに対し日産はルノーの株式を15%だけを所有。両社の力関係の差は明白です。
公開された契約内容の一部をみると、まず株式取得の制限は、第三者が日産の株式20%以上、あるいは日産の取締役の指名権を取得する、あるいは取得意思を明らかにした場合を除き、ルノーは日産の取締役会の事前承諾を得られなければ日産の株式44.4%を超を取得することは禁じられています。これに対し、日産は、ルノーの取締役会による事前承諾を得られなければルノーの株式15%超を取得できません。ルノーが株主総会のルールに反する行動をした場合は、ルノーの取締役会による事前承諾がなくても日産はルノーの株式を追加取得できるとされていますが、法律やガバナンスルールにうるさい欧州のルノーが単純な過ちを犯すとは思えません。ということは日産はルノーに対し手足が縛られているのと同じです。
幕末の日米修好通商条約を思い出す
まるで幕末の日米修好通商条約の焼き直しを見る思いです。幕末の徳川政府は、米国に対し港や居留地などを開放する一方、外国人の犯罪を裁けない、関税を日本政府だけで決定できないなどを軸にした不平等条約を米国政府と交わしました。時は1885年です。それから114年が過ぎたにもかかわらず、日本の自動車メーカー第2位の日産は、「対等」という文字がどこかへ置き忘れてしまったかのような資本提携をルノーと交わしました。皮肉にも日産のスーパースターだったカルロス・ゴーン氏がレバノン逃亡するという予想もしない事件の誘因にもなりました。