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残念な会社 パナソニック 優良企業の体力を無駄使い、頭と身体がバラバラに動く (その1)

 多くの人があそこは優良企業と信じているのに、実態は空回りしている会社が少なくありません。パナソニックはその1例です。40年間、企業経営を取材してきましたが、東芝に続いてガッカリする会社はパナソニックです。深い愛情を込めて「残念な会社」としてリストに掲載します。

ソニーの影すらみえなくなってしまった

ソニーの影すら、すでに見えなくなってしまったのではないでしょう。かつてソニーのライバルと誰も信じていたパナソニックです。2022年4月1日、ホールディングスへ移行し、社名をパナソニックホールディングと変更しました。これまでのパナソニックは持ち株会社となり、その下に事業会社7社を収めます。

 ちょうど1年前、ソニーはソニーグループへ社名を変更しました。パナソニックと違って持ち株会社制度を選択せず、グループ本社としてエレクトロニクス、音楽・映画、ゲームなどエンタテインメント、金融など主要事業をまとめあげ、グループ全体の本社としての指揮命令系統を明確にしました。なんとなくソニーと同じ経営改革の道を歩み始めたように見えますが、その実情は全く違います。

パナソニックもソニーも家電産業の修羅場をなんとか切り抜けてきました。サムスンやLGなど韓国勢に追い落とされ、中国など新興メーカーの安売りで敗退せざるえない場面を幾度も経験し、ともに地獄の底を垣間見ています。とりわけソニーは1990年代、出井伸之社長というスター経営者のもとで「われわれはデジタル・ドリーム・キッズ」と謳歌し、マイクロソフトやアップルなど米国勢と並び、追い抜くという幻影を見ました。アップルの創業者、スティーブ・ジョブスは「ソニーを尊敬する」と言い切ったぐらいですから。

 世界の頂点を見たつもりだっただけに、その落ち込みはまさに奈落の底へ落ちた思いです。ソニー OBから「もうソニーじゃない」という厳しい非難を浴びながら這い上がり、2022年3月期決算は営業利益は1兆2000億円と史上最高の好決算になる見込みです。

そしてパナソニック。2022年3月期決算の営業利益見通しは3700億円と前年度より回復していますが、ソニーの4分の1弱にとどまります。営業利益率は5%。対するソニーは12%。ライバル視されるどころか、もう優良企業として比較する対象にすらならないです。

この経営格差はどうして広がってしまったのでしょうか。パナソニックが現在、主力で販売している製品群をひと目見ればわかります。家電製品は中国などと価格競争の泥仕合から抜け出せなず、成長戦略の柱と期待した米電気自動車メーカーのテスラ向け車載電池はまだ安定しません。2022年度3月期の第3四半期までの決算内容をみていると、増減の差はありますが主力事業いずれもこれまでのトレンドから抜けざせず足踏み状態になることがわかります。

経営改革が空回りに、三洋電機などの買収・提携を活かせず

 その理由はなぜでしょうか。過去の決断した経営改革がすべて空回りの結果に終わったしてまったからです。中村邦夫社長時代に大規模投資したテレビ事業はどうでしょうか。シャープが市場を切り開いた液晶分野はテレビでも主力製品となりました。パナソニックはブラウン管のテレビから薄型テレビへ移行する過程をチャンスと捉え、液晶とプラズマディスプレーの2方式の製品開発に大規模投資しました。

 当時、ディスプレー工場の建設は軽く1500億円を超えます。それが液晶とプラズマディスプレーの2方式それぞれに振り向けます。特にプラズマディスプレーは消費電力が高く、ヘアードライヤーをずっと使っているのと同じといわれました。テレビはほぼ日中、映っている製品です。消費電力は半端ない。誰が見ても2方式の投資は効率が良くないとわかりますが、社内から声が聞こえないのか、中村社長の考えは変わりません。結果はみなさんがご存知の通り、ディスプレー事業は縮小され工場閉鎖が相次ぎます。数千億円の投資は藻屑の泡となって消えました。

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