ゴールデンカムイ再び? 北海道で金鉱が息を吹き返すかも

「ゴールデンカムイ」を連想してしまうニュースです。

遠軽町に金鉱脈

 カナダの鉱山開発企業「ジャパン・ゴールド」がオホーツク海に面した遠軽町の白竜地区の国有林を試掘調査し、高密度の金を含む鉱石が見つけました。白龍地区はかつて「東洋一の金山」と評された鴻之舞鉱山(紋別市)から南に5キロほど離れた地域。今春、国の許可を得て調査すると、金が1トンあたり24・1グラム含む高密度の金鉱石が見つかりました。

 ジャパン・ゴールドは「金鉱山となる兆候を示す指標」と判断し、今後も調査して開発するかどうかを検討するそうです。仮に採掘するとしても10年先になるそうですが、金価格は過去最高を更新し続けており、10年後の採掘開始を期待したいと願うのが私だけではないでしょう?

 鉱山の歴史は物語をなぞるよう

 もっと面白いのは鉱山の歴史を振り返ると、まるでゴールデンカムイの物語に登場する舞台そのもの。

 鴻之舞鉱山は1915年に鉱床が発見され、その後は現在の住友金属鉱山が経営し、本格採掘が始まります。埋蔵量は佐渡、菱刈に続く日本3位で、1940年ごろには年間2・5トン、銀46トンを産出。最盛期は1万4000人が暮らしたそうです。1973年に閉山しました。

 ところが、鉱床が発見されるよりも10年以上も前の明治30年代に砂金が発見され、全国から砂金堀りが集まり、ゴールドラッシュに沸いたそうです。皮膚の感覚を失うほど冷たい水温を我慢しながら、周辺の川のあちこちに一攫千金を夢見る砂金堀りの姿を目に浮かびませんか。ゴールデンカムイの重要なエピソードシーンが次々とリアルに再現されていたのです。

 ゴールドラッシュの時期が物語と重なります。日露戦争は明治37、38年の2年間。西暦では1904、05年。ゴールドラッシュが始まった直後の頃の明治末期です。

 物語は北海道のゴールドラッシュで集められた莫大な金塊を巡る争奪戦。日露戦争に参加した元兵士「不死身の杉元」とアイヌの少女アシリパがアイヌ民族が和人からの自立を目指して集めた金塊を探します。網走監獄所の脱獄囚や旭川の第7師団、なんと箱館戦争で戦死したはずの土方歳三も加わり、北海道と樺太を舞台に物語は展開します。

 大ヒットした魅力の一つにていねいな時代考証があります。作家の野田サトルさんは北海道出身で、曽祖父が屯田兵ということもあって当時の空気をしっかりと再現しています。物語の流れに欠かせないアイヌ文化も専門家の中川裕さんの力によって、本州から訪れた和人が驚く様々な伝承や狩りなど正確に描いたことも単に争奪戦のドタバタ劇に終わらせず、物語の幅を広げています。

 鴻之舞鉱山の復活で、ゴールデンカムイの杉元やアシリパが再び現れ、北海道中を駆け回ることを夢想しているわけではありません。

どんな困難にも諦めないアシリパが本当の金塊

 期待したいのは北海道に新たな活力を吹き込むことです。豊かな農水産物に恵まれ、雄大な自然に魅せられた海外の観光客の急増で観光産業は活況を呈していますが、先行きはとても楽観できません。

 北海道の人口は少子高齢化や首都圏への流出などで減少し続けており、2025年末には68年ぶりに500万人を下回りました。減少幅は全国最大です。しかも、札幌市が道内の各地から若者らを集めているため、札幌市以外の人口減は急激です。繰り返しになりますが、鴻之舞鉱山の採掘で1万4000人もの街が出来上がりました。仮に再び採掘が始まれば、オホーツク沿岸の経済には多大な朗報です。

 金山の復活は起爆剤に過ぎません。ゴールデンカムイに魅了されるのは「不死身の杉元」やアイヌ自立を願うアシリパらがどんな困難に遭遇しても目標に向かって進み、諦めないことです。これこそ今、手にしたい本当の金塊です。

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