手話講座3年間の仮決算③キングコングも手話でコミュニケーション、ゴジラはまだ!?

 キングコングが手話できるって知っていました? 3年間、手話を勉強してきましたが、手話を読み取る能力ではキングコングが上回っている印象でした。キングコングはやっぱり凄いなあ〜。

 手話ができることを知ったのは、映画「ゴジラ×コング新たなる帝国」で。主役はもちろん、ゴジラとキングコング。世界的なキャラクターのコンビで制作されている「モンスター・ヴァース」シリーズの最新作です。

映画の少女と手話で意思疎通

 そもそもゴジラは日本生まれ。1954年に第1作が公開。日本から世界へ舞台を広げ、2024年に70周年を迎えました。先日のアカデミー賞では「ゴジラ−1・0」で「視覚効果賞」を受賞しました。 キングコングは1933年に初公開。昨年90年周年を迎えました。70周年と90周年。改めて考えたら、歴史的なコンビです。著作権を手にする米映画会社の資金力に感服します。

 ゴジラ誕生の翌年に生まれた私です。映画やテレビを見る年頃には、もうゴジラもキングコングもお馴染みのキャラクター。モスラ、ガメラ、キングギドラなど新たな怪獣が登場しても、好きなのはゴジラとキングコング。遺伝するかどうか知りませんが、家族もハマってしまい、新作が公開されれば映画館へ。

 当然のように映画「ゴジラ×コング新たなる帝国」に向かいしました。基本はゴジラとキングコングが掛け合い漫才のように取っ組み合いを演じるエンターテインメント。ところが、ゴジラとコングのバトルよりも目がテンになったのは、キングコングの巧みな手話でした。

吠え声の中で手話の力が浮かび上がる

 手話のキーパースンは映画で重要な役を演じる少女「ジア」。聴覚障害を持っているため、コミュニケーションは手話を介します。映画の主人公を務めるキングコングは元々、ジアの祖先が先住民として住む島の守護神でした。少女ジアにシンパシーを感じており、ジアも親友として手話を教え、両者は意思疎通できるという物語の設定です。

 ジアの所作はとても優しく美しい。映画は米国の制作ですから手話は米国語の所作。日本語の手話も満足に理解できないレベルですから偉そうなことは言えませんが、手、表情、口元などすべてが語っています。そのジアの手話にコングが自然に答えます。手と顔が手話講座で教えられたかのように所作したのに驚いてしまいました。その動きに目が奪われて、お恥ずかしいことに会話の内容は覚えていません。

女優はろう者とハリウッドの境界を拓く

 少女ジアを演じるのはKylle Hottleさん。映画のパンフレットではケイリー・ホトルと表記されていますが、カイリー・ホットルと記載している例もあります。前作の映画「ゴジラVSコング」で聴覚障害の先住民少女ジア役で映画デビューし、今回がシリーズ2作目。家族も聴覚障害を抱えており、ホトルさんは、「ろう者コミュニティーのためにハリウッドの境界を切り拓く」と映画のパンフレットは説明しています。

 映画「ゴジラ×コング新たなる帝国」は繰り返しですが、ゴジラ、キングコングなど巨大生物が主人公で、大半がバトルの連続です。失礼ながら、「ワォー」「ウガアー」の吠え声ばかりが映画館内を響き渡り、英語であろうが日本であろうが場面を見ていれば物語の進行がわかる仕掛けです。

 その中で手話は効果的に表現され、それぞれの登場人物の胸の内を語るコミュニケーションツールとして使われています。口語の代わりに手、瞳、心の動きすべてを総合して心と心を通い合わせる愛情が醸し出されてきます。バトルで飛び交う吠え声があまりに大きくて「騒音みたい」と感じていましたが、手話が伝える力をあぶり出す役割を果たしていたのかもしれません。

 「せっかく3年間、手話を勉強したのだから、まだまだ続けよう」。映画を見終わった後の率直な感想です。そういえば、ゴジラはまだ勉強不足のようでした。次回作ではゴジラもこれから少女ジアと手話でコミュニケーションする可能性もあるようです。ゴジラは年齢一つ上の先輩です。あの大きな背中とヒレを追いかけるつもりで、手話を勉強し続ける覚悟です。

◆ 写真は映画「ゴジラ×コング 新たなる帝国」のパンフレットから撮影しました。

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