65歳から始めたメディアサイト制作 電子書籍に挑む(上)過去記事を埋没させない

 電子書籍を出版しました。「From to ZERO」で連載した「釜島辺の求職体験記シリーズ」をもとに新たなエピソードなどを加えて、書籍化しました。このシリーズの内容については、別稿で説明しております。こちらをご参照ください。

「釜島辺の「求職体験記」が電子書籍化 6月30日発売」 https://from-to-zero.com/kamashimahenseries/

 小さなサイトを四苦八苦しながらも、発信力やコンテンツをどう充実していくか。65歳から始めたメディアサイトを制作する過程で「なぜ電子書籍を出版したのか」「その後の展開をどう考えているか」について書きたいと思います。

小サイトの発信力をいかに高めるのか

 メディアサイト「From to ZERO 」はほぼ毎日、新しい記事を掲載しています。単発の場合もありますし、連載企画として10回を超えるシリーズの場合もあります。テーマはさまざまですが、サイト主宰者や執筆陣の経歴から自動車など企業経営、経済が多く、アフリカなど海外事情が大半を占めます。

 大手メディアのように原稿料をしっかりと支払う体力があれば、執筆者を増やしてもっとテーマの幅を広げ、より多くの読者に訴えたいのですが、残念ながらそれだけの余力はありません。それでも、執筆する元新聞記者やジャーナリストは、自身の中でフツフツと湧き上がる思いを「字にしたい」と考え、原稿を書きます。

 このサイトはもともと新聞社やテレビ、雑誌など培った経験を持つシニアがまだまだ原稿を書きたいという気持ちを頼りに、より複眼的な視野をネットから発信したい狙いがありました。ただ、資金や人材で限界がありますので、とにかく自分の身の丈に合わせて、発信力を高めていくしかありません。

 ネットコンテンツには新聞やメディアにない強さを持っています。ただ、コインの裏表のように弱さも併せ持っています。

ネットは掲載量は無限

 強さは、その掲載能力。新聞の限られた紙面に縛られることなく、好きなだけの分量を書き込み、ネット上で掲載できます。新聞の企画に比べて2倍ぐらいの行数はすぐに書けてしまいます。もちろん、ダラダラと長い文章になってしまっては元も子もないですが、読者にわかりやすく理解してもらうために必要な背景やポイントを詳細に説明できるのはネットメディアの優れた特性です。

 文章と動画のコラボも容易です。最近のNHKは「NHK+」でテキスト情報を大幅に増やし、テレビ局の枠を超えた新たな巨大メディアになろうとしています。NHKが抱える多くの優秀な記者やディレクターを考えれば、彼らが提案したコンテンツがすべて採用していたら、テレビやラジオの限られた放送枠は溢れかえっているはずです。自分たちが取材したネタを動画映像だけでなく文章でも再構成し、放送時間枠に縛られない見逃し配信を通じて多くの視聴者や読者に伝えいたいと考えるのは当然です。

 この「From to ZERO」がNHKのマネはとてもできるわけがありませんが、可能性は追求するつもりです。

過去記事が埋もれてしまう

 弱さはネットメディアの強さがそのまま裏返しにしたものです。ネット上では際限ない情報データを掲載、発信できるため、記事は毎日増え続けます。その記事量は、日々の記事だけでなく蓄積された記事そのものがメディアの強さとなりますが、ネットの読者は、大量のコンテンツすべてを目にするわけがありません。利便性や時間の効率化を考え、メディアのトップメージを眺めて読みたい記事を見つけ、選びます。

 過去記事などを含めて検索する場合も一般的です。でも、グーグル検索などを使って「読みたいテーマ」「気になる記事・ワード」で探す場合を考えてください。最初に登場する画面でまず探し、次のページをクリックしていくはずです。深く追いかけたいテーマならまだしも、ちょっと検索のレベルなら最初に登場するページの記事が読まれます。

 話題性や記事量で常に劣勢な個人商店のようなサイトの場合は、かなり致命的な弱さです。限られた手持ちのコンテンツでなんとか読者を引き続ける努力が不可欠です。

 幸運にもサイトを発見してもらい、記事を読んでもらったら万々歳ですが、現実はサイトのトップページに掲載しきれない過去の記事は埋没し、読者の目にはなかなか触れません。もちろん、ページレイアウトに工夫して過去記事を掘り起こし、再び読者のみなさんの目に触れる機会を増やす努力はしています。

個人サイトの限界をどう突破するのか

 残念ながら限界はあります。WordPressで利用できる「テーマ」と呼ぶレイアウトソフトを購入し、自分なりに再設計します。無料のテーマもありますが、自分のイメージに合ったレイアウトを構築するには、やはり数万円の費用がかかります。会社勤めをしている時は、お酒を飲んだ勢いで1万円を払った経験がありますが、今は年金生活者。万円単位の支払いはさすがに躊躇します。多額の費用を投じてサイトデザインを設計しているわけではないので、デザインやレイアウトなどで読者を引き寄せる吸引力はどうしても弱い。

 限られたお金を有効に使い、この2年間に書きためた記事をできるだけ発信するためにはどうするか。

 次のステップへ進むために悩んでいると、連載シリーズの中から予想外に人気を集める記事も現れ始めます。「一人勝手なテーマと考えていたら、意外にも読者の興味を刺激している」「掲載してから1年以上経過しているにもかかわらず、最近再び読まれ始めている」。

 「特ダネじゃなきゃ読まれない」。新聞記者時代に染み込んだ「新鮮なコンテンツだから読まれる」といった常識がネット上にはなく、1年前、2年前のコンテンツでも時間の経過ととも腐ることなく、読んでもらえることがわかってきました。連載ものは過去記事の中に埋没することなく、魅力をアピールするチャンスがある。

 「それじゃ書籍としてまとめようか」。実は以前から迷っていました。しかし、新聞社に勤めていたころに何冊も発刊している経験があるだけに、その手間と費用を考えると、書籍化は躊躇せざるを得ません。新聞社の販売力があるからこそ販売冊数が伸び、なんとか利益を捻出していたからです。

「電子書籍はどう?」の誘いが舞い込む

 そんな時、友人から「電子書籍にしてみてはどうか」という提案が舞い込みました。

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