オーバーツーリズム 日本人は英語、外国人は日本語を使い、互いに笑うことから

  もうネイティブでした。北海道・富良野市のスキー場にあるレストランでの出来事です。

 ラーメンを食べようと思い、メニューパネルが並ぶ自動販売機で食券を購入しました。料理を受け取るカウンターに行き、スタッフにラーメンを受け取る順番が印字された食券を手渡した時です。「☆◆▽・・・」と言われました。えっと驚いた顔をしたら、表情を変えずに「食券番号が壁のパネルに表示されたら、取りに来てください」と改めて話しました。

レストランで食券を渡したら「☆◆▽・・・」

 私の次に待っていた外国人スキーヤーはなにも不思議そうな顔をせずに「OK」といった感じで席に戻ります。英会話はそれなりにできますが、最初の一言がぜんぜんヒアリングできませんでした。私への一言目は「きっとネイティブにしかわからない英語だったんだ〜」と勝手に納得するしかありませんでした。

 富良野のスキー場はニセコと並ぶほど世界での知名度が高く、海外から多くのスキーヤーが訪れています。ニセコを国際的なスキーリゾートに育てた火付け役であるオーストラリアはもちろん、米国、欧州、アジアの各国・地域から家族連れなどで長期間滞在しています。

 ですから、昼食時のレストランは日本語と英語が飛び交います。ニセコのレストランはまず英語で会話するのが常識になっているそうですが、富良野でも混雑時は日本人だろうが外国人だろうが識別する余裕がなくなるのでしょう。しかも、注文するメニューはラーメン、カレー、ザンギ、ビールなどに集中します。とにかく最初は英語で注文と受け取りの手順を確認するのが手っ取り早い。スタッフの気持ちはよくわかります。

とても甘〜いティムタム

 それじゃスキー場内は英語がどんどん”公用語”となっているのか。そんな感じはしません。なぜなら、外国人スキーヤーの皆さんが日本語で話す場面をよく目にするからです。スキー場のリフトに乗車する時、リフト待ちで並んでいる時、リフトで相席になった時・・・。いろいろな場面がありますが、挨拶のみならず譲り合いなどいわゆるソーシャルスキルの延長線上として積極的に日本語で話しかけてきます。ここ数年、富良野へ毎冬通っていますが、この傾向は強まっています。

外国スキーヤーも日本語を多用

 もっとも、日本語で「すいません」と声をかけながら、リフトの列に割り込む外国人スキーヤーもいます。日本語で話せば日本人はなんでも笑って許してくれると思い込んでいるようです。割り込みなどマナー違反を繰り返すスキーヤーは日本人にもいます。日本、外国と区別することではありません。要は、何度も試行錯誤を経験して、お互い慣れてしまうしかないのでしょう。

 外国からの訪日客の急増に伴うオーバーツーリズムが問題になっています。よく話題になるのが京都市。市内の路線バスが満員で乗れずに1時間ほど歩いて目的地に向かった経験もしましたし、タクシーでは「日本人は乗車料金が低いので、外国人を優先して乗せる」と事実上、乗車拒否されたこともあります。

 もっとも、タイで逆の立場を経験したことがあります。バンコク市内を流れる川を渡る水上バスに乗ろうと思い、船頭さんに料金を聴いたら、「〇〇バーツを払えるか」と返ってきました。「オーケー」と言ったら、水上バスにすでに乗っていたお客さん10人ほどが降ろされ、私1人だけが乗って出発してしまったのです。船頭さんが示した料金はなんと貸切料金。他の客に比べて割高でしたが、当時の日本円はバーツに対しとても高いので、日本人からみれば「安い」と感じてしまい、貸切とは知らずに「オーケー」と答えてしまったのでした。

オーバーツーリズムもお互い様

 現在のオーバーツーリズムは、日本が海外から割安とみられてしまう立場です。しかも、英語など多言語でコミュニケーションせざるを得ない機会が増えています。言語もマナーも違う国同士が理解するためには、下手でも自国以外の言語を使い、意思を伝えることから始めるしかないと痛感しています。とりわけスキー場は楽しむために訪れています。不愉快な思いより、互いに幸せな気分に浸っていたいですから。

アルコールならなんでも

 富良野のあるコンビニの店頭にはオーストラリア人が大好きなお菓子「TimTam(ティムタム)」やアルコールが大量に陳列されています。多人数でワイワイ騒ぎなら、楽しい旅の夜を過ごすため、4、5人で買い物を訪れる外国人観光客を見かけます。場所は富良野ですが、店内の空気はオーストラリアでした。富良野の街に日本以外の色々な空気が混じり合い、言葉が飛び交い、「非日常」が「日常」と思えてくる日が訪れる。時間はかかるかもしれませんが、実現したらもっと楽しいスキーを体感できるはずです。

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