65歳から始めたサイト制作「今日も頑張れ 宗谷本線」に元気もらう

 JR宗谷本線に乗車したことがありますか。楽しいですよ。気動車キハはちょっと横揺れしながら、沿線のあちこちで見かけるエゾシカが近寄らないよう時折、甲高い声で「キハ〜」と警笛を鳴らし、走り続けます。

警笛が甲高く「キハ〜」

 真冬、名寄駅から北に向かう稚内駅までの車窓からは真っ白な雪原、あるいは山々が見え、線路ぎわは黒いチャコールグレーの肌が木々が並びます。白と黒の水墨画と似た淡白な風景と思うかもしれませんが、白も黒もそれぞれ微妙に色合いが違います。雪原にはエゾシカかウサギの足跡が点々と残り、生きている自然の息遣いを感じることができます。名寄駅から稚内駅までは4時間余り。私にとっては東海道新幹線の東京ー新大阪より短く、楽しい時間です。

 JR宗谷本線は日本最北端の駅、稚内と旭川を結ぶ約260キロを結ぶ路線です。明治時代まで遡れば、ロシアの脅威に備える陸軍最強の部隊が拠点を構えた旭川を中心に稚内、オホーツクの網走まで道北の開発、経済を支えてきました。今はもう当時の繁栄は見る影もありません。通学に利用する高校生のほかは、インバウンドで訪れる外国人観光客が新たなお客さんになっています。

 元々、人口密度が低く、人口減のスピードが全国最速の北海道です。利用するお客は減り、気動車が走れば走るほど赤字が増えます。2023年の営業係数は旭川ー名寄で703、名寄ー稚内で903。100円の収入を得るために旭川ー名寄は7倍、名寄ー稚内は9倍の費用が必要なのです。宗谷本線全線の赤字額は年間50億円前後だそうです。

 利用客が減少しているのですから、駅も廃止になります。2021年3月のダイヤ改正で12駅がなくなりました。JR北海道がスタートした1987年は59駅ありましたが、2025年3月には35駅に。名寄駅から北の雄信内、南幌延、抜海の3駅が消えました。駅名の由来がアイヌ語の発音を参考に当て字していることもあって、駅名が格好良いと思いませんか。「抜海」は響きも漢字も凡人には思いつきません。

ポスターの世界はワンダーランド

 宗谷本線は寂しい路線と思われますか。鉄道事業として考えたら、先行きは真っ暗かも。でも、「今日も頑張れ 宗谷本線」のポスターを見てください。やる気が出てきます。線路を直走る気動車キハの後をウサギ、キタキツネ、雪だるま、ヒグマが追いかけ、ニンゲン、エゾシカも続きます。空には大鷲が舞っています。見上げれば、輝く太陽、雷光を放つ黒い雨雲なども。年間50億円の赤字を計上してダイヤ改正のたびに駅が廃止される路線とは思えない「明日に向かって生きる希望」を感じませんか。

 実際に乗車しているとわかります。名寄駅からしばらく走ると、エゾシカが並走したり、気動車の前を走ったり。サンタクロースのトナカイの橇(そり)みたいな楽しい光景が待っています。ワンマンカーの運転手さんはエゾシカを見つけるたびに警笛を鳴らし「キハ〜」を連呼。衝突しそうになると停止する時も。助手席には万が一の事故に備えて保守点検の担当者が座っている光景も好きです。運転手席の窓枠を額縁に見立てると、ルーブル美術館に掲げられている油絵のようです。失礼ながら赤字路線という窮状を忘れ、ワンダーランドの鉄道車両に迷い込んだ気分になりますよ。

 かなり強引と思うかもしれませんが、自分自身のサイト制作と重なり、とても励まされます。個人のブログですから、広告収入なんて期待できません。まあ、JRと違って利益を出さなければいけない立場じゃありませんから、気は楽。でも、サーバーなど諸経費は考えれば赤字。まあ、JR北海道ほどじゃありませんが・・・。

「きょうも頑張れ サイト制作」と背中を押す

 その代わり、毎日が楽しい。どんな原稿をどう書こうかあれこれ考えるのが楽しいし、サイトにアップした後の反響もこれまた楽しい。予想もしない大量のアクセス数に達したり、全く反応がなかったり。2年も3年も前に書いてアップした原稿が突然、人気を集めることも。おまけはまだまだあります。原稿のアイデアを捻り出すために毎日散歩する近所の公園で、たぬきに出会ったり。運が良ければカワセミが獲物を狙い、佇んでいる姿と出会うこともあります。公園でほぼ毎日、体が不自由で杖をつきながら散歩する男性にお会いしますが、いつも励まされます。

 「今日も頑張れ宗谷本線」のポスターを見ながら、「きょうも頑張れ サイト制作」と自分に鼓舞しています。このポスター、ほんと素晴らしい。

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