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世界の富を産む街を歩く 航空・宇宙は世界、そして未来も制すのか
シアトルはボーイング発祥の地です。近郊のエバレットにある同社の主力工場ではB787などが生産されています。工場は高さ11階建てで全長3キロを超える巨大な規模で、従業員が3万人以上働いているそうです。ちょっと想像できません。「Boeing FUTURE of FLIGHT」という工場見学ツアーがあり、ぜひ体験したかったのですが残念ながら滞在中は諸事情により募集停止中でした。ちなみに帰国した翌日に「ツアー再開」がボーイングから届き、呆然としましたが・・・。
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ボーイングの工場ツアー案内
航空・宇宙の巨大企業の一面を垣間見たいと考え直し、シアトル郊外の航空博物館へ向かいました。市の中心部からバスで30分ほどで到着。この場所はボーイング創業の地で、1965年に開館しました。ワシントンD.C.のスミソニアン国立航空宇宙博物館を2度訪れたことがありましたが、こちらはボーイングが主役の展示です。どうボーイングをアピールするのか楽しみでした。
博物館は道路を挟さんで本館と実機が並ぶ展示場「アビエーション・パビリオン」の2棟で構成され、予想以上に広くて普通に見学しても2時間はかかりました。同じバスで博物館に到着した男性が帰りのバスでも顔を合わせ、みんな熱心に見学してしまうと感じ入ったものです。すぐ隣には航空機が離発着する滑走路があり、世界最大の航空機メーカーはなにもかもデカイ。
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航空時代の先駆け、複葉機
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航空機や爆撃機などがびっしり
まず本館の正面玄関を入ると、全体のフロアはボーイング創業からの歴史を説明するフロア、創業当初から製作してきた航空機、軍用機を紹介するフロア、さらに米国が進めてきたアポロ計画など宇宙プロジェクトを展示するフロアなどに大きく分かれていました。
創業当初はまだ複葉機の時代です。当時の製作工程が再現されており、航空機の部品を熟練の職人が一つ一つ加工する場面を人形が演じていました。米国の産業・企業といえばアップルやグーグルなどシリコンバレーのスターばかりが代表するイメージになっていますが、米国経済も手作業で部品を作る製造業から発展し、機械、自動車、航空機、コンピューターが誕生しました。当たり前のことですが、産業の土台作りはどこでも基本は同じですね。
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ボーイング創業当時を再現
歴史を遡る航空機の展示はスミソニアンとほぼ同じ風景です。正直、既視感がありますが、田宮模型でしか見たことが無かった戦闘機が次々と目の前に登場するので、一機ごとじっくり鑑賞してしまいます。やはり航空機の本場は違う。アポロ計画など宇宙のフロアにはソ連時代の「ソユーズ」、そして「月の石」も。さりげなく、すごい展示が並んでいます。宇宙の本家本元は違います。
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ソユーズもありました
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月の石
個人的な好みでは「アビエーション・パビリオン」がとても面白かった。B29、大統領専用機「エア・フォースワン」、過去の旅客機などが並んでいます。音速旅客機「コンコルド」を初めて見ることができました。狭い機内にも入り、音速を仮想実感。いろいろ物議を醸した音速旅客機ですが、音速の壁を破る大型機の製作に挑んだ欧州の航空機メーカーには敬意を評します。
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エンジンの構造も間近に
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槍先のようなコンコルドの機首
最も見入ったのは「B52」。こちらも初めて間近に拝見しました。巨大な爆撃機ですから、ベトナム戦争に参加した兵士・家族に感謝する専用パークに展示されていました。小さい頃、ベトナム戦争などの映像でよく目にした爆撃機です。沖縄の嘉手納基地でずらりと並んだ隊列風景を遠くから眺めたことがあります。
パークに駐機するB52に近づくと、でかいジェットエンジン、長くて太い主翼がすごい存在感を放ち、迫ってくる印象です。主翼があまりにも巨大なため、翼の先に車輪がついていることを知りました。この主翼が歪まないよう設計通り維持する部品や組み立て構造はどうなっているのでしょう?こんなにでかい爆撃機の中に、日本のモノづくりでは考えられない高度な技術がぎっしり詰め込まれているはずです。
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B29の機首
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B52の全景
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B52の翼の先には小さな車輪がありました
スミソニアン博物館を見学した後も同じでしたが、航空・宇宙の発展には「戦争」を抜きに語れません。航空・宇宙は戦争を機に進化し、産業として巨大化しました。その典型例のひとつがボーイングです。
第1次世界大戦から複葉機が戦闘機に変貌する過程でエンジン、機体設計は加速し、第2次大戦でドイツでロケットが誕生します。そのロケット技術は米国とソ連による冷戦を通じて、どちらが先に宇宙を制するかを競う争いに火をつけました。現在はステルス戦闘機、ロシアのウクライナ侵攻で最も重要な攻撃機となったドローンなどが主役を演じています。いずれも航空博物館でその原型モデルを見ることができます。
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宇宙旅行は人類の夢だったはず
航空博物館を出て帰りのバスを停留所で待つ時間、近未来の航空博物館はどんな展示が並ぶのか考えてしまいました。航空・宇宙は国の力、威信を守るために発展し、空と宇宙を握る者が世界を制し、戦争で勝利する。米国、中国、ロシアなどが終わりのない競争を繰り広げたら、どんな結果をもたらすのか。きっと確実に言えるのは終末の時を迎えた後、「航空博物館」として展示するものは何も残っていないことです。
博物館に隣接する高校の玄関には「空には限界がない」と書かれていました。本当かな〜。
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空には限界ないというけれど・・・