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自動車産業が消える② スマホ革命の再来 根底から技術がひっくり返る 未練は禁物

 電気自動車(EV)が生み出す衝撃は、エンジン部品の関連産業だけで収まるわけがありません。100年以上積み重ねてきた自動車の設計・生産を根底からひっくり返すのです。アップルやグーグルがEVの実用化に取り組むのは、iPhoneなどスマーフォーンが巻き起こした技術革命の再来を予感しているからです。

iPhoneが登場した時、日本はおもちゃと見下す

 スマホの衝撃を思い出してください。手のひらに載る大きさに電話はもちろん、メール、インターネット検索、デジタルカメラを搭載。片手でほぼ何でもできるようになります。半導体やCPUの飛躍的な進化でかつてのスーパーコンピューター並みの情報処理能力もすぐに備えました。

 スマホの伸びに反比例するかのように固定電話、FAX、デジタルカメラは使われなくなり、昭和の遺物になってしまいます。今振り返れば、当然と思うかもしれませんが、実はそうでもないのです。

携帯電話の技術革新は日本が先駆

 NTTやKDDIが勘違いの好例です。iモードや写メなどで携帯電話の世界を一気に広げ、アップルのスティーブ・ジョブスらを驚かせました。iモードは携帯電話でコミュニケーションを一気に変える情報技術革命の先駆と高く評価されていました。iPhoneが登場した時、技術的な視点からみれば日本製が格段にレベルが高く、ライバルにならないと見下していたのですから。

 なにしろ当時のiPhoneは日本製部品が多く使われ、音楽再生など機能そのものはすでに日本メーカーが実用化しているものばかり。きつい言い方ですが、日本発技術の寄せ集め。情報通信技術のトップランナーを自任するNTTから見たら、iPhoneはおもちゃ、いわゆるガジェットに映っていたのです。そしてその結論、NTTとアップルの勝負はどっち?もうみなさんはわかっていますよね。

EVもスマホと同じ道を走る

 日本のEVも同じ道を突っ走っています。内燃機関エンジンを搭載した日本製の自動車は燃費、耐久性や故障率などどれをとっても高品質の評価を得ています。イーロン・マスクがEVメーカーのテスラを創業した時、日本車メーカーは胸の内で「成功するわけがない」と呟いていました。プラ模型を組み立てるように車の格好は整うけれど、走行性能や安全性能は一朝一夕でできるわけがない。そう確信していました

 トヨタ自動車はテスラと一時期、資本提携しています。それは日米の協力関係を重視した政治的なスタンドプレー。テスラが操業するカリフォルニア州の工場も、元はトヨタ・GMの合米事業NUMMIが利用したフリーモント工場です。

オセロと同じ、一手で形勢逆転

 ところが、EVの展開は予想外のシナリオで進み始めます。地球温暖化に対応する切り札として欧州が率先してEVへの転換を宣言します。地球環境の対応はガソリンと電機モーターを組み合わせたハイブリッド車でリードしていた日本車は、EVの課題を熟知しているため、実現のハードルは高く、予定通りには進まないと踏んでいました。

 自動車の環境技術で遅れをとっていた欧米の自動車メーカーとって、日本車の環境技術をひっくり返す好機。一斉にEVへの切り替えへ走ります。中国も深刻な大気汚染に加え、世界で最もCO2を大量に排出するとの批判をかわすため、EV政策を押し進めます。オセロゲームで白と黒が一手で形勢逆転する瞬間と同じシーンを想像してください。

 しかし、日本の自動車産業がこのまま後手に回ったままとは思いません。事実上、EVはまだ誕生したばかり。進化はこれから。進化する過程で従来の自動車で考えられない発想で新しい技術が求められます。自動車は技術力だけでなく、量産、コスト双方を満たなさければいけません。この分野は日本の部品メーカーが得意とするところです。

 自動車部品メーカーにとって、内燃機関エンジンからEVへ切り替わる「100年に1度」の変革期は苦難の始まりではありません。新しい自動車産業の始まりです。技術力やEVが直面する壁をブレイクスルーできる会社にとって、系列の呪縛から解き放たれるチャンスです。

成功体験は捨て、自社の技術を新しい発想で活かす

 このチャンスを掴むためには過去に積み上げてきた成功体験を忘れ、新たな技術革命に突っ込む勇気が必須です。スマホが人々のライフスタイルを一新したのと同様、EVは「移動する」ことをゼロから考えることを求めます。

 甘い成功体験を捨てきれず、引きずる未練は禁物。捨てるのは未練、技術を捨てる必要はありません。新たな発想で自社技術を活用するかが問われるだけです。

 日本からかならず世界を驚かしてくれるメーカーがEVの舞台に飛び出してくると信じています。

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