世界の自動車販売 テスラ・EVが急伸、背後から中国が猛攻 自動車の地殻変動は予想以上
世界の新車販売トップ10のランキングが自動車産業の地殻変動を告げていました。電気自動車(EV)の普及スピードは予想以上で、テスラと中国メーカーはEVの大波にのって急伸しています。エンジン車を支配していた欧米、そして日本の主要メーカーは確実に足元から大きく揺らぎ始めています。
インドなど新興国は全体の24%も
世界の自動車に関するデータを調査するJATOによると、2022年の世界新車販売は7940万台で、前年比2%減。半導体不足などで供給が間に合わず、欧米など主要市場は減少しましたが、インドなどアジア、中東、アフリカの新興国は伸びています。地域別でシェアをみると、欧米、中国だけで世界の69%を占めます。新興国は24%まで拡大し、いよいよ世界市場の動向を左右する勢いをみせてきました。とりわけ、インドは24%増の437万台で、日本を抜いて世界第3位へ。人口あたりの普及率はまだ低いですから、欧米に迫る日は近いのでしょう。
EVは66%増、世界シェアは9%超
最大の注目はやはり電気自動車(EV)。予想通り、爆進しています。前年比66%増の737万台。すごい伸び率です。世界の販売シェアは5・5%から9・3%へ増加しており、中国と欧州で10%を超える伸び率を記録しました。日本との温度差を感じます。
世界最大のEV市場である中国だけをみると、世界のEV販売の過半を占めています。2022年だけで新しいブランドの車が15も現れ、中国でトップシェアを握る米テスラは43%増と伸ばしたにもかかわらず、中国メーカーにシェアを食われ、シェアは17・6%と3ポイントダウンしました。テスラが値下げなどで対抗するのも肯けます。
テスラはトップ10に2車
とはいえ、テスラの勢いには舌を巻きます。世界の新車販売トップ10をみると、テスラは第3位に「モデルY」、第10位に「モデル3」がそれぞれランキング入りしました。特にモデルYは91%増の74万7000台と大躍進です。価格は日本円で580万円以上もする高級車。しかもEV関連のインフラの制約などを考慮すれば、販売地域はまだ狭い。人気ぶりに刮目せざるえません。テスラ車は自動運転やリコールなど技術的な問題が指摘されますが、欧米、中国などでのEVの購入意欲は日本で考えているよりも、かなり大きく、この勢いはますます強まると考えるべきなのでしょう。
乗用車で世界のトップ10をみてみます。第1位はトヨタ自動車の「RAV4」。トヨタは第2位に「カローラセダン」、第5位に「カムリ」、第6位に「ハイラックス」、第8位に「カローラクロス」の5車がランキング入りしました。世界一の座を守り続ける強さは健在です。第4位はホンダの「CR-V」。ホンダで最も人気の高い車の一つです。日産自動車は第7位に小型乗用車「セントラ」、フォードは第9位に「F-150」でそれぞれランク入り。
トヨタはトップ10に5車
トップ10のうち5車が占めたトヨタはさすがですが、その次がなんとテスラの2車が続きます。テスラは販売する車種は4モデルだけ。それが2モデルもランキング入り。トヨタに比べ車種が少なくEVだけですから、EVに注目する消費者の視線はかなり熱いことが推察できます。しかも、新車販売の人気車種は、使い勝手の良いSUVにシフトしています。JATOによると、SUVの販売は2・3%増の3280万台で、新車全体で占める比率は40%を超えました。
今後の新車市場の動向を読み解くキーワードは「EV」と「SUV」。2つのキーワードです。テスラのモデルYが突出した伸びをみせたのも、EVと小型SUVを体現しているからです。ホンダの「CR-V」がトヨタの「RAV4」に続いているのも同じ理由です。小型SUVの人気を反映した結果です。トヨタのハイラックス、フォードのF-150も乗用車の分類とはいえ、米国で人気の小型トラックです。
キーワードはEVとSUV
ホンダが2040年をめどにすべての新車をEVへ転換する理由も明快にわかるはずです。世界の自動車メーカーとの競争に打ち勝つためには、EVとSUVのキーワードを飲み込んだ新車開発が必須とわかったからです。
裏返せば、EV開発で出遅れているトヨタがいつまでトップ10の常連組として、その地位を守り続けられるのか。「RAV4」は相変わらず強いかもしれませんが、セダンの「カローラ」「カムリ」は次第にダウンする可能性があります。テスラが開発するEVの仕上がりはまだ道半ばですから、クルマとして成熟していけばトヨタを追い抜く公算は無視できません。そこにBYDなど中国メーカーが食い込んでくるのでしょう。
2023年のトップ10のランキングがどう入れ替わるのか。結果が楽しみです。