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ダイキンの井上会長が退任、でもグローバルグループ代表は離さず 世代交代のヒートポンプは?

  ダイキン工業が5月9日、井上礼之会長が退任し、名誉会長になると発表しました。4月26日に「From to ZERO」でそろそろ身を引く時期ではと問いかけましたが、それから2週間後に発表となりました。井上会長は取締役からも退きます。兼務のグローバルグループ代表執行役員も手放し、形式上は経営から身を引くのかと淡い期待を持っていましたが、10年前の2014年に創設した役職だけはやっぱりぎゅっと握ったまま。すべてを退いても自身の息のかかった人物が引き継いでいるのですから、追い出される心配はありません。でも、ダイキン中枢の権力は手放せない。名経営者といえども、引き際は難しいですね。

売上高は30年間で10倍以上

 井上氏は、ダイキンの中興の祖です。1994年6月の社長就任以来、積極的なM&Aを進め、国内の業務用空調機器メーカーだったダイキンを世界トップに成長させました。2002年6月には会長となりましたが、何も変わりません。経営の実権を30年にわたって握り、この間に売上高は10倍上も拡大しました。

 井上会長の退任は2024年でダイキンが創業100周年を迎え、新体制への移行を決断したそうです。その新体制は、十河政則社長兼最高経営責任者(CEO)が代表権のある会長兼CEOに、竹中直文専務執行役員が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格します。6月27日に開く株主総会後の取締役会で正式に決定します。

後継の十河氏は井上氏のクローン

 といっても、十河氏は井上氏のクローンのような存在です。井上会長が社長に就任した1994年6月から半年余り後の1995年1月に総務部担当部長兼秘書課長に就任しています。井上氏自身、人事畑で育っただけに、会社の要に最も信頼を置ける人材を起用したと見て良いでしょう。十河氏はその通り、人事・総務畑を歩み続け、秘書業務は社長に就任する2011年6月まで務めます。もちろん、社長としても井上会長を支えて続けます。井上会長が経営の実権を握り続けている30年間、常に影のように付き添ってきた人物です。

 しかも、十河氏は75歳、竹中氏は60歳。実力があるから抜擢したと考えていますが、十河氏との年齢差以上に竹中社長が経営手腕を発揮する範囲は狭いのではないでしょうか。しかも、井上氏の存在があります。会長と取締役を外れたとはいえ、89歳の井上氏が名誉会長兼グローバルグループ代表執行役員として残ります。新しい経営体制で最も実権を握る十河氏は、「井上氏が築いてきた人が基軸の経営を引き継いで、グループのさらなる発展につなげたい。今後もグループの求心力を高める役割を担ってもらう」と語っています。竹中社長は井上、十河の両重鎮に挟まれ、どんなことができるのでしょうか?

竹中社長が力量を発揮できるのはいつ?

 

 ダイキンの新経営陣は創業100年を迎え、次の100年に向けて挑戦する経営戦略の布石です。経営戦略では新たなテーマを2つ加えました。まずは空調機器で世界トップに立った今、世界最大の人口を抱え、経済力でも世界上位に躍り出るインドへ攻勢をかけます。さらに化学・高機能材・環境材料のリーディングカンパニーをめざし、空気をキーワードにカーボンニュートラル時代に飛翔する事業へ進化する狙いです。

 しかも、ダイキンは、海外売上高比率が7割を超え、グループ全従業員数の8割が海外で働くグローバル企業となりました。世界戦略こそがダイキンの次の100年を決めます。全体を鳥瞰するのは誰か。グローバルグループ代表執行役員の井上氏です。国内の業務用空調機器メーカーが事業内容を変革しながら、さらに世界でどう成長するのか。新しい力と発想を生み出す経営の世代交代が必須です。ただ、新経営体制をみると、世代交代に欠かせないエネルギーを供給するヒートポンプはまだ研究開発中のようです。

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