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軽EVは日本を救うか⑥ スズキのカーボンニュートラル(上)中小企業の魂を掲げトヨタ・ダイハツと融合

 スズキがカーボンニュートラルに対応した「2030年度に向けた成長経営戦略」を発表しました。「軽EVは日本を救うか」シリーズを5回に渡って展開してきましたが、スズキの経営戦略をみると、ほぼ同じストーリーを描いています。自分自身の読みが合っていることにホッとする半面、予想し得なかったブレイクスルーが見当たらないことに物足りなさを覚えました。

連載5回のストーリーをなぞるよう

 自動車会社という大規模な器を抱え、従業員、その家族、多くの取引先を考えれば無茶なことはできません。経営理念の説明のなかでチャレンジ精神を忘れない「中小企業型経営」を強調する一方、机上の空論を排する「現場・現物・現実」の三現主義を強調しています。これまで5回の連載の内容と重複する印象を持たれるかもしれませんが、スズキの成長戦略を参考に「軽EV」が日本経済をどう変革していくかを改めて検証してみます。

 2023年1月26日、鈴木俊弘社長は「2030年度に向けた成長戦略説明会」を開き、カーボンニュートラル実現の施策を明らかにしました。

 詳細な内容は以下のアドレスから参照できます。https://www.release.tdnet.info/inbs/140120230126593949.pdf

 説明会は、スズキの原点である鈴木式織機製作所を創業した鈴木道雄氏の物語から始まり、事業が二輪車、四輪車へと広がる軌跡を辿っていきます。かつて当時社長の鈴木修さんの自宅を訪れる時、雑貨屋さんのおばあちゃんに場所を訊ねたら「鈴木自動車の社長は知らないけれど、織機の社長なら知っているよ」と教えてもらった思い出が蘇りました。

改めて鈴木修さんの凄みを思い知る

 その織機会社は、軽自動車の先駆モデルとなった「アルト」、メダカが鯨と手を組んだといわれた米GMとの提携、途上国市場での大成功例であるインド進出と次々に大胆な経営判断を下します。改めて、スズキを世界企業へ育て上げた鈴木修さんの経営者の凄みを思い知ります。

 鈴木修さんはメダカがくじらと手を組んだといわれたGMとの提携について「メダカなら飲み込まれるが、小さな蚊なら空へ舞い上がれる」と周囲の心配を蹴飛ばします。インド進出の際も「世界の自動車メーカーの中では中小だが、インドならスズキがシェアトップ。インドのGMだ」と従業員に呼びかけています。

 スズキが織機から世界的な自動車メーカーへ転身できたのは、鈴木修さんの先駆的な挑戦力があったから。いまの言葉でいえば、ビジネスの常識に縛られないディスラプター、破壊者の精神です。「中小企業と揶揄されながらも大企業に負けないぞ」という魂を忘れずに自らを常に鼓舞。その強い気持ちをバネに誰も予想しえない創造的な経営に挑戦し、成功する。凄まじい執念です。

 その視線から成長戦略を眺めると、手堅いEV展開、脱炭素の取り組みが目立ち、ちょっと寂しい思いです。

EVは2023年度から投入開始

 まずEVの投入計画。日本では2023年度から発売を開始し、2030年度までに6モデルをそろえます。欧州とインドは24年度から発売、30年度までに欧州は5モデル、インドは6モデルまで増やします。ちなみに二輪車のEVは24年度から投入し、8モデルまで追加するそうです。カーボンニュートラルの対応はEVだけでは十分ではないため、並行してハイブリッド車、天然ガスやバイオガスなどを使った内燃機関のモデルも加え、車種モデルとしての脱炭素化を進める計画です。

 スズキはトヨタ自動車がEVなど次世代自動車の開発で主導する会社「CJPT」に参加し、ダイハツ工業とともに軽商用EVの実用化に取り組んでいます。EV関連はもちろん、ハイブリッド技術、天然ガスなどCO2排出を縮減するエンジンの分野でもトヨタと綿密な関係です。

EV、ハイブリッドで提携するトヨタGと深化

 2030年までにスズキとトヨタグループの提携関係はより深まり、その過程を通じて軽自動車でダイハツの協業化、そして一体化が加速していきます。23年中に登場する軽EVは、世界から出遅れている日本のEV市場を底上げするとともに、スズキがトヨタグループと融合する道筋を突っ走ることになります。

 次回に続きます。

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