
ホンダが消える59 上場来初の赤字、EVが主犯ではない 売れるクルマはどこに?
ホンダが2026年3月期で上場来初の赤字幅が最大6900億円にまで拡大した引き金は、5年前に宣言したEVへの全面転換。三部敏弘社長はじめ経営トップが説明するのですから、素直にそう理解したいのですが、どうも納得できません。
求められるエンジン車で稼ぐ力
2040年を目標にした全面転換の宣言は2021年。三部社長が就任した4月23日に表明しました。EVの開発・生産体制を整え、電気モーターやバッテリーなどを供給する部品調達網を構築するには、巨額の投資が必要です。目論見通りに達成したとしても、19年間の歳月はエンジン車で高収益を維持しながら、EV投資を継続する企業体力が必要。素人でもわかる経営の常識です。高収益を継続する方程式の解答を見出せないならEVへの全面転換を宣言するべきではありません。
ところが、ホンダの四輪事業にはEVの巨額投資を支える力強さが見当たりません。三部社長が就任する1年前の2021年3月期から5年間、営業利益の推移を見てみます。2021年度902億円、2022年度2362億円、2023年度166億円の赤字、2024年度5606億円、2025年度2438億円。
営業利益率でみると、2021年度は1%、2022年度は2・5%、2023年度は赤字ですから?、2024年度は4・1%、2025年度は1・7%。2024年度が4%台に上昇した要因は赤字脱却に向けてコスト削減などの努力もありますが、円安効果にかなり助けられています。この5年間で見る限り、ホンダの四輪車事業の営業利益率は2%程度を判断してもよさそうです。トヨタ自動車の営業利益率は8〜11%を推移していますから、ホンダの稼ぐ力は4分の1程度。
二輪車に助けられる四輪車
ホンダ全体の収益構造は売上高が四輪車の3分の1以下の二輪車が高収益率を継続していることでなんとか格好はついています。四輪車事業だけで考えれば、とてもEV事業に向けて巨額投資する余裕はありません。
しかも、四輪車事業が営業赤字を計上した2023年3月期は三部社長が就任して2年間過ぎた決算。身をもって窮地に立っていることを体感しているのです。今後もEV投資を継続するかどうかの実力を持ち合わせているどうか再考する時間が十分にありました。
だからこそ、このままエンジン車に固執しても四輪車事業の展望は拓けないと判断し、EVへ一気にシフトしたのでしょうか。誰がみても成功すると思えない日産自動車とEVでの協業に何度も挑んだのも、公言できない脆弱なホンダを隠したい一心だったなのでしょうか。
「N-BOX」のヒット車は?
四輪車事業が脆弱な理由は明快です。ヒット車を出すことができないからです。軽自動車「N-BOX」が新車販売ランキングで登録車を含む新車全体で4年連続、軽で11年連続でトップの座を守っていますが、目ぼしいヒットは「N-BOX」だけ。他の自動車メーカーの販売店は「ホンダといえば軽」と揶揄するほど。
直近で最も注目を浴びている「プレリュード」をみてください。三部社長は2025年10月末に開幕したジャパンモビリティーショーで、9月に発売したばかりの「プレリュード」をこう紹介しました。「社長の私が買って乗っている。ホンダ渾身のモデル」。走行性能、デザインいずれもすばらしく、個人的にも買いたい車です。でも、価格は600万円を超え、家族というよりは「大人の2人」が楽しむスペシャリティカー。国内外で確実に売れると思いますが、四輪車事業を支える力とは思えません。
ホンダがEVに再び挑戦するためには、「N-BOX」以外に続くヒット車をいくつも世に送り出すしかありません。しかし、まだ試行錯誤は続きそうです。
例えば、創業以来ホンダの強さの源泉といわれた本田技術研究所。2020年に技術開発の効率化を掲げて、本社に統合しましたが、6年後の2026年に再び分離、独立した組織に戻します。CVCC、エアバッグ、F1を制覇した高性能エンジンなど画期的な技術開発が生み出され、その「ホンダらしさ」が多くの人をファンにしました。残念ながら、2020年代は「らしさ」を失いかけていました。元に戻したからといって一気呵成に蘇るわけがありません。
試行錯誤は続く
優秀な技術者の育成など「ホンダらしさ」を生み出す源泉は、損失処理でなんとか帳尻合わせはできるEV投資と違います。ホンダファンの1人として「元気でヤンチャなホンダ」の復活を願っています。

