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2035年 排気用マフラーの三五はどんな自動車部品会社になっているのだろう

 思わず目が点になりました。自動車の排気ガス用マフラーがまるでパイプオルガンのように並んでいます。場所は東京で開催したジャパン・モビリティーショー。あれ、確かここは自動車部品メーカーの展示ブースだったはず。不思議そうな顔をしていたせいか、声をかけられました。

マフラーがパイプオルガンのように

 「わが社は、音響メーカーのようなものなのです。搭載する自動車のキャラクターを想定して、排気音の響きも設計しています」と説明します。こちらのポカーンと口を開けている表情を見て、してやったりとばかりに笑っています。

三五はサンゴと呼んでください。

 会社名は三五。ブースの壁には「サンジュウゴ」ではなく「サンゴ」です、と描かれています。トヨタ自動車を主力納入先にする金属加工メーカーで、精密加工技術を駆使してマフラーなど排気システム、ボディ・シャシー、駆動系など幅広い製品を手掛けています。気さくに声をかけてくれたのは役員さんでした。

 三五は排気用マフラーの音色開発に力を入れており、高級スポーツカーに相応しいF1サウンドなどパイプオルガンを奏でるように音色を設計できるそうです。車好きなら、すぐに頷くはずです。マフラーの音色はエンジン、シャーシーに劣らず重要な要素ですから。加速時に高回転するエンジンが生む響きをマフラーが魅力あるサウンドに引き立てます。オーディオに例えれば、スピーカーというよりはアンプの役割に近いと思います。

 当然、クルマの個性を引き出すサウンドを奏でるマフラーを設計、加工するには優れた技術力が欠かせません。パイプオルガンのように並ぶマフラーは、三五の技術力を体現しているわけです。マフラーが奏でる”楽器”を制作し、展示する意図はなんだろう?素朴な疑問が浮かびます。

EV時代にこそマフラーが必要

 目からウロコでした。「そうだ、マフラーの響きはこれからもっと必要になる」と気づいたのです。電気自動車(EV)の時代が到来すれば、エンジンが消えます。となれば、真っ先に不要になるのは内燃機関エンジンと関連した部品。排気ガスを排出するマフラーもそのひとつ。マフラーを生産する部品メーカーとしてEV時代は、会社の命運を揺るがす危機のはず。こう考えたのは、とんだ勘違い。

 ハイブリッド車誕生の時を思い出したのです。1997年にトヨタが「プリウス」を発売した時、環境にやさしい車として持て囃されましたが、スタート時に電気モーターで駆動するため、エンジン車と違って「走るサウンド」が違います。いつもエンジン音の大小で車との距離感を測るのが癖になっています。

 ところが、ハイブリッド車はエンジン音がなく、静かに近づいてくるため、気づかない。人と車の接触事故が起こる可能性が指摘されました。トヨタの技術者は、「あえて通行人に気づいてもらう音、サウンドを奏でる必要がある」と話していたのを思い出したのです。

 ましてEVは電気モーターだけで走ります。ハイブリッド車は電気モーターからエンジンに切り替われば、車らしいサウンドを奏でますが、EVにエンジン音に匹敵するサウンドを期待するのは無理。しかし、運転するドライバーや乗客は、走行する音、サウンドを聴きながら、スピード感を確認し、クルマの移動を楽しみます。EVこそマフラーが必要なのです。

遊び心が危機をチャンスに

 もっとも、EVが普及したとしても、エンジン車が消滅するわけではありません。航続距離、充電インフラ、価格の高さなどの課題を抱えているだけに、EVの弱点を補うエンジン車はまだまだ生産されます。三五はマフラーだけを生産しているわけではありませんから、企業の将来が揺らぐことはありません。むしろ、EVをきっかけに新しいマフラー需要が創出され、飛躍のチャンスを手にするかもしれません。

沖縄のサンゴで焙煎したコーヒー

 三五の皆さんはモビリティショーに出展した理由について、学生や若者に自動車部品メーカーの可能性をアピールする狙いがあると説明していました。展示内容も洒落ていますが、ブースの来場者には沖縄のコーヒーを配布していました。風化した骨格サンゴを使って焙煎しており、沖縄から持ち出しが禁止されているため、沖縄だけでしか生産できないコーヒーです。商品名は「35」。誰しもサンゴと読みたいと思いますが、「スリーファイブ」と読むそうです。自動車部品メーカーの三五は「サンゴ」ですが、コーヒーは「スリーファイブ」。「35」繋がりとはいえ、遊び心に敬服します。

2035年に自動車産業はどう変貌するのか

 世界の自動車メーカーは欧州連合(EU)が掲げた2035年に向けてEVへの転換を急いでいます。内燃機関エンジンを搭載する車がどこまで減少するのか予想できませんが、自動車の設計そのものを大きく変革する潮流が生まれています。あと10年ちょっとで自動車産業はどんな姿になるのでしょうか。三五が2035年にどんな会社になっているのか。洒落っ気たっぷりの社風ですから、とてもユニークな自動車部品メーカーに変貌しているはずです。楽しみです。

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