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ホンダが消える40 EVの覇者は唯我独尊!日産・三菱と組んで勝算はあるのか

 自身の技術と発想を信じ、突っ走る。長年、産業の興亡を取材してきた経験から、世界の壁をぶち破るエネルギーは、唯我独尊から生まれるのではないかと考えています。「100年に1度の変革期」に直面する自動車産業でも、EV(電気自動車)市場を牽引する米テスラ、中国BYDの経済合理性で説明できない躍進ぶりを見ると納得します。ホンダ創業者、本田宗一郎、藤沢武夫の2人にも唯我独尊のオーラが放たれていました。今のホンダはどうでしょうか。周りを見渡して眼が泳ぎ、自信無さげに映ります。EVの覇者になれるのでしょうか。

三菱自の合流に驚きゼロ

 ホンダと日産自動車のEV協業に三菱自動車が参加します。驚きはゼロ。日産は三菱自の株式34%を保有しており、軽自動車の開発・生産では事業を一体化。EVでも大ヒットを放っています。日産も三菱自もお互いに助け合いながら、明日を切り拓く兄弟会社です。2024年3月、ホンダと日産がEVで協業すると発表した時点で三菱自の合流は確実視されていました。

 ホンダが日産と協業する狙いは明快です。世界のEV市場を席巻するテスラ、BYDに対抗できるサプライチェーンを構築することです。EVに出遅れた日本勢が追い上げるためには、電気モーターなどの駆動系部品、バッテリーの調達コストを押し下げ、価格競争で勝負できる体制を急速に整えなければいけません。BYDなど中国のE Vメーカーは政府の後押しを受けて部品を大量生産する一方、割安な輸出戦略を展開しています。とにかく、まずは中国勢やテスラの量的優位に追いつき、肩を並べる必要がありました。

 EVの基本ソフト(OS)ともいえるソフト開発も急務でした。車の性能はインターネットや人工知能(AI)を駆使するソフトウエアで決まります。進化は始まったばかりですから、今後の開発・生産投資にどれだけ資金を投入できるかが勝負の分かれ目となります。将来に必要な投資負担を考えれば、ホンダ単独よりは日産と手を組んだ方が重荷もリスクも軽減できます。

投資軽減よりも新たなリスクも

 だからといって三菱自の合流がプラスと判断するのは早計です。日産と三菱自は共同で軽EVをヒットさせた実績があるわけですから、この成功体験を捨てるわけがありません。EVそのものの開発・生産の歴史もホンダよりも長く、さまざまな成功・失敗を重ねています。

 2024年3月にホンダと日産がEV協業で記者会見した様子を見る限り、まだ互いに疑心暗鬼の部分を抱えているのがよくわかります。そこに三菱自が加われば、さらに複雑怪奇な協業に陥るのではないでしょうか。個人的には重石がnた一つ増えた印象です。

 元々、ホンダは提携戦略が下手です。本田宗一郎という強烈な個性を放つ創業者が率いた組織ですから、自分たちと異なる企業風土と擦り合わせして成果を捻り出すのが不得意なのです。

GMとの提携も不発のまま

 長年、提携関係を維持する米GMを見てください。1999年に提携して以来、エンジン、EV、燃料電池車の開発などで手を組んでいますが、いずれも成果は乏しいまま。喫緊の課題であるEV開発でも2022年4月に量販車の開発に合意しましたが、2024年1月に断念することを発表しました。EV の有望市場と予測された自動運転の分野でも協力していましたが、GMは2024年7月23日に専用車両の開発を中止すると発表しました。

GMが断念した無人の自動運転車

 ホンダはGMが開発する自動運転車両を使って日本で無人タクシーサービスを開始する計画でした。現在は、他の車両を使って事業継続を模索する方針を明らかにしていますが、無人の自動運転は安全第一が最優先されるだけに簡単に新しいパートナーを見つけるわけではありません。

 近未来の戦略図を美しく描いても、実際にクルマが走り出さなければ「絵に描いた餅」です。残念ながら、GMに関して文字通り、画餅のまま。日産・三菱自との協業も、相乗効果を引き出す可能性よりも3社による擦り合わせに追われ、開発などのフットワークが鈍る公算が大きいように思えます。

原点に戻るなら、まだ間に合う

 2021年4月、就任したばかりの三部社長が2040年には新車すべてをEVと燃料電池車に切り替えると宣言しました。実現可能性を疑う声は今もありますが、久しぶりにホンダの唯我独尊を見た思いです。日産、三菱自、GMとの提携を改めて反芻して、もう一度ホンダの原点に立ち戻ったらどうでしょうか。今なら間に合います。

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