
ホンダが消える49 儲かる見込みがないなら、そろそろ四輪車を捨てる時かも
ホンダが2025年3月期決算を発表しました。相変わらず4輪車は儲からず、2輪車の頑張りで面目を保った印象でしょうか。2輪車がなかったら、日産自動車と同じ運命?そんなガサツな見方をしちゃいます。仮に日産と経営統合したら、2輪車の利益を食い潰してしまったでしょう。ホンダは4輪車の収益力が回復するシナリオを持っているのでしょうか。この5年間、抱いている疑問が消えません。そろそろ4輪車を切り離して、祖業の2輪車メーカーに戻った方が経営は楽になるのではないか。そんな勘違いをしそうです。
二輪車と四輪車の収益格差は大きい
改めて、2輪車と4輪車の収益力の格差を痛感しました。2025年3月期をざっと確認します。売上高は前期比6・2%増の21兆6887億円と伸びましたが、営業利益は12・2%減の1兆2134億円と減益に。営業利益率は5・6%と1・2ポイント低下しました。当期利益は24・5%減の8358億円。4輪車の製品保証引当金の考え方を変えたので減益幅が広がったそうですが、変更前の方法で試算しても、営業利益は6・2%と0・6ポイント下がります。
主因はいつもながら青色吐息の4輪車事業。なにしろ2輪車事業は、販売台数、営業利益、営業利益率が過去最高。売上高は12・6%増の3兆6266億円、営業利益は19・3%増の6634億円、営業利益率は18・3%と前期より1ポイント上昇。素晴らしいの一言しかありません。
これに対して四輪車事業は寂しい数字が続きます。売上高は4・9%増の14兆4678億円と伸びたものの、営業利益は56・5%減の2438億円と半減以下。営業利益は1・7%と2・4ポイントも低下しました。1%台って信じられますか? 2025年3月期がたまたま営業利益率が低いなら救われますが、ずっ〜と低空飛行のまま。2023年3月期は赤字でした。ホンダジェットのように急上昇できないの?と余計なことを考えてしまいます。
二輪車の強さが四輪車に見当たらない
2輪車事業の稼ぐ力は恐るべき水準です。4輪車に比べて売上高は4分の1であるにもかかわらず、営業利益は2・7倍も稼ぎ出しています。さらに驚くのは営業利益率が金融サービスの9・0%を2倍も超える18・3%であることです。
ホンダは決算発表時、年間2000万台以上を販売する世界シェアナンバーワンの地位を誇示し、「プラットフォームやパワートレインを共用化して、圧倒的な販売台数を束ねることで、他社を凌駕する低コスト体質を構築し、利益の拡大を実現してまいりました」と胸を張りましたが、誰も異論は無いでしょう。
なぜ4輪車事業は儲からないのか。後付けの説明はいくらでもできます。2009年に就任した伊東孝紳社長が掲げた「世界販売600万台」の大風呂敷によって販売車種が過剰となり、設備過剰や在庫増などで収益力を失い、その後遺症を今も引きずっている。あるいは1980年代から収益の大黒柱だった北米戦略が2000年代に入って失敗し、ブランド、販売力が低下した。それとも中国への過度な依存が自国資本を最優先する政策に転じるという中国政府の手のひら返しによって裏目に出た、などなど。
いろいろ理屈をこじ付けることはできますが、要は2輪車事業と同じことができない、言い換えれば「真逆のベクトル」に向かって事業が進んでいるのです。年間600万台を掲げた世界戦略は10年後の今は年間400万台を下回る水準にとどまり、量産効果による低コスト体質はとても期待できません。市場シェアも圧倒するどころか、国内外ともに中位クラスがほとんど。稼ぎ頭のアジアは大幅に減少し、中国は惨敗。金城湯池だった北米はライバル車との競争で販売奨励金によって販売台数を維持するのがやっと。6000億円を超える巨額赤字を計上した日産自動車と同じ構図です。
足踏みする事業改革
この10年間、伊東社長が残した後遺症の解消に努めてきたはずです。4輪車事業の14兆円という巨体をガサガサと揺らせば、かなりスリムにできたのではないかと期待したのですが、系列部品メーカーを切り離すなど大手術したにもかかわらず、あまり効果は出ていないようです。もうどうして良いのかわからなくなったのではないか。そんな不安を覚えます。
2026年3月期もまだ先が見えません。目の前にはトランプ関税、ドル円相場の推移、電気自動車(EV)の立ち上げ・・・など不確定要因が待ち構えています。販売も2輪車は増加を見込んでいますが、4輪車は前年実績割れの微減と予想。三部敏宏社長は、ハイブリッドカーの原価低減などで収益力を高めるほか、次世代のEV投入によって収益力を高めると説明しています。
残念ながら、明るい希望が見当たりません。決算の発表資料の表紙には2025年中に復活する「プレリュード」が掲げられていました。1980年代、高い人気を集めたスポーツクーペです。東北自動車道を突っ走った楽しい思い出があるクルマです。2023年10月のモビリティショーでお披露目したモデルを見ました。多くの人が囲み、写真が撮れないほどの人気でした。ホンダ大好きのオーラが会場を満たしていました。文字通り、ホンダに酔いしれるとは、こういうクルマなのかと改めて痛感したものです。
ホンダはプレリュードに4輪車事業の希望を託したのでしょう。果たしてプレリュードのように再び疾走するのでしょうか。優れた新車がいくつもあっても、売れるのは軽「N-BOX」だけ。結局、ホンダの4輪車事業は浮上できない。ブレリュード発売がそんな悲しい前奏曲にならないでほしいです。