マーケティング調査会社のJDパワージャパンが発表した「2023年日本自動車初期品質調査」によると、輸入車を含めた量販ブランドでダイハツ工業とホンダが1位になりました。ダイハツは2年連続、ホンダは3年ぶりの首位返り咲きです。ちなみに上級ブランドはレクサスが1位。いずれの車も誰もがうなずく1位です。
ダイハツ、ホンダはレクサスを上回る
この調査は新車を購入したユーザーを対象に車の基本性能について質問したもので、その聞き取り結果を比較してランキングしたものです。対象はエンジン車や電気自動車(EV)が混在していますが、これから普及するEVはエンジン車以上に基本性能が競争力を占うキーワードになります。調査結果を参考に「勝ち残るEV」とはどのような車なのかを考えてみました。
JDパワーの発表資料によると、調査は年に1回、新車購入後2~13ヶ月経過したユーザーを対象に、所有する自動車の不具合経験を9カテゴリー221項目について聴取し、自動車の初期品質に関するユーザー評価を数値化しています。実施は今年で13 回。今回は2023年5、6月にかけてインターネットで実施し、2万1647人から回答を得ました。対象のユーザーは18歳以上。車種は14ブランドが選ばれました。
調査は新車購入者が対象で、9分野で評価
算出するスコアは「外装」「走行性能」「装備品/コントロール/ディスプレイ」「運転支援」「インフォテインメント」「シート」「空調」「内装」「パワートレイン」の9つのカテゴリーに分けて、合計221項目について不具合指摘数を集計して初期品質の度合いを算出しています。スコアが少ないほど品質が高いことを示します。
総合評価で1位に輝いたダイハツとホンダは100台当たり不具合を指摘された箇所が131カ所。上級ブランドで1位のレクサスは147カ所ですから、ダイハツとホンダの初期品質に対する評価はかなり高いと判断して良いでしょう。全ブランド平均でみても、100台当たり不具合を感じた箇所は151カ所。1位の2社は20ポイントも優れています。
全ブランド平均でみると、前年の22年調査に比べて13ポイントも上昇しています。カーナビやオーディオなどを一体化した「インフォテインメント」がどんどん高機能化しているため、使い勝手が悪く、不具合を訴える声が増えたそうです。前回調査でも不具合が最も多いと指摘された項目で、指摘数が増えたことで、改めて大きな課題であることが浮き彫りになっています。
インフォテインメントが評価の課題に
インフォテインメントとはインフォメーションとエンターテインメントを組み合わせた造語で、カーナビを使った経路案内や道路交通情報の表示、さらにオーディオなどエンターテインメントを一体化したシステムを指しています。EVの競争力は自動運転や車内エンターテインメントがより重視されるとみられているため、このインフォテインメントの指数が改善するかどうかが、EVの売れ行きに直結するかもしれません。
インフォテインメントの不具合が増えた主因は車載音声認識やカーナビの使い勝手の悪さ。音声認識は「音声コマンドを認識しない、あるいは誤った認識をする」と回答する割合が増加しており、JDパワーは「実質性能は劣化している」と指摘しています。カーナビは年齢層が高くなるにつれて、不具合の声が増加しているそうです。「手順が複雑」や「ルートが一つしか示されない」などの意見が多く、機能自体は進化しているにもかかわらず「以前よりも使いにくい」が増えています。どんどん追加される機能を使いこなすためには、マニュアルを熟読する必要があります。そんな手間をかける人はそう多くありません。結局、使い勝手が悪いという結論に辿り着きます。
EVは航続距離に不満も充電は減少
注目したいのはやはりEV。航続距離が短すぎるという指摘が軽自動車で5・3カ所、登録車(エンジン1000C C以上)が4・2カ所ありました。航続距離は大ヒットした軽EVに不満を持つ割合が多いのですが、充電の不具合では軽が0・7カ所、登録車が3・5カ所と不満が減っています。JDパワーは「利用用途や運用環境次第では、充電トラブルの少ない軽EVの所有も利点の一つ」とみています。
自動運転の可能性を示す指標となる先進運転支援システム(ADAS)関連の機能は品質が改善しているようです。現行の調査項目に加えられた21年以降、不具合の指摘が多かった「車線逸脱ワーニング/レーンキープアシスト」が減少し続けており、「業界全体で品質改善が認められる」と分析しています。
軽から中型までの車両セグメント別のランキングでは、全ブランドで首位のダイハツが軽セダン「ミライース」とコンパクトSUV「ロッキー」で1位。予想通り、軽・小型車ではダイハツが強い。ホンダは軽ハイトワゴン「N―WGN(エヌ・ワゴン)」とコンパクトミニバン「フリード」でトップでした。
売れるEVは基本性能が左右
強引ですが、日本でヒットする「EVのクルマ」が調査結果から見えてきませんか。やはり当面は軽自動車がその先頭を切るようです。航続距離は日常生活に使えるバッテリー容量があれば十分。充電の手間がそんなに負担にならない。運転支援システムは今後の進化を考えれば、高齢者でも安心して使えるようになります。カーナビやオーディオなどは技術的な進歩が進み、改善するでしょうが、長距離運転の機会が少ない日常生活で使う限り、使い勝手の悪さがそんなに不満として出ないと考えて良いのでは・・・。
エンジン車と違い、ブンブン乗り回る楽しみは減りますが、EVの特性である電気で省エネルギーしながら、安心して走り回ることができる。つまり、基本性能がしっかりしたEVが売れるわけです。10年後、EVをリードするメーカーはどこでしょうか。
JDパワーの調査をみると、下記に車種別で初期調査のランキング1位が紹介されています。ダイハツ、ホンダ、そしてスズキ、トヨタ、スバルの名前が並びます。
車種別のランキングトップ
軽セダン第1位:ダイハツ ミライース
軽ハイトワゴン第1位:ホンダ N-WGN、スズキ ワゴンR(同点)
軽スーパーハイトワゴン第1位:スズキ ワゴンRスマイル
コンパクト第1位:トヨタ パッソ
コンパクトSUV第1位:ダイハツ ロッキー
ミッドサイズ第1位:スバル インプレッサ
ミッドサイズSUV第1位: トヨタ ハリアー
コンパクトミニバン第1位:ホンダ フリード
ミニバン第1位:トヨタ ヴォクシ
▪️写真はダイハツ工業のホームページから引用しました。