Kawasaki 製造業のNinjaは、カーボンニュートラルを飛び越えられるか
「100年に一度の変革期」。地球温暖化に対応するカーボンニュートラル実現に向けて、自動車産業でよく使われるフレーズです。内燃機関エンジンを搭載しない電気自動車へ移行してCO2など温暖化ガスを減らすだけで終わるものではありません。日本経済の強さを生み出してきた「ものづくり」そのものの変革が問われています。日本の製造業はどう変わり、進化しようとしているのでしょうか。日本の製造業を代表する企業、川崎重工業が2030年に向けて公表した経営計画をもとに「ものづくりのゼロマネジメントとは?」を探ってみました。
製造業のおもちゃ箱
まずは川崎重工業とは? 創業は1878年。造船を手始めに車両、航空宇宙、ロボット、バイクやバギーの自動車などへ事業分野を広げ、明治から富国強兵、太平洋戦争の敗戦、そして奇跡の経済高度成長とあらゆる場面で日本経済の屋台骨を支えてきました。三菱重工業などと同様、多くの分野で製品を世に送り出しているため、いわば製造業のおもちゃ箱。日本の製造業の強さ、弱さのそれぞれを体現しているといって良いでしょう。川崎重工の中身を取り出して経営や事業がどう変容しているかを知るのは、多くの製造業にとって参考になるはずです
「Kawasaki」ブランドは日本よりも海外の方が知られているかもしれません。二輪車の「Ninja」は映画「トップガン」で主演のトム・クルーズが大好きで、シリーズ2作とも疾走するシーンが組み込まれています。鉄道車両はニューヨークの地下鉄などで走り回り、オフロード向け四輪車はテーマパークなどで大人気。無理やり時計の針を逆回転させますが、大戦中に開発・生産した「飛燕」は世界トップクラスの性能に到達した名機として知られ、私もプラ模型で組み立てました。
2030年に向けたグループビジョン
その川崎重工。2022年12月6日、「グループビジョン2030進捗報告会」を公表しました。2年前の2020年、カーボンニュートラル、経済安全保障、コロナ禍などのパデミック、物流の混乱など世界が直面する課題を想定し、経営改革のベクトルを定めたそうです。その2年後の今、資料では「2年前に想定したシナリオが現実に」と強調するぐらいですから、グループビジョンの進捗度合い、成果については「してやったり」の声が聞こえそうです。
グループビジョン2030進捗報告会の資料は次のアドレスから参照ください。
もともと川崎重工は企業イメージをいかに向上させるかに腐心する会社です。「優れた技術や製品は黙っていても理解してもらえる」と考える三菱重工業や日立製作所とは真逆の立ち位置を意識して、PRする傾向があります。製造業はどうしても情報通信などに比べて地味で堅苦しい企業イメージが定着しているためか、就活向けの広告として社名を連呼したり、駄洒落で興味を引くことに力点を置くメーカーが増えていますが、技術や製品を前面に出しての自画自賛は好きです。今回の「報告会」もその視線を忘れずに見ていきます。