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安全評価の不可思議 トヨタ・スバルのEV、発売直後にリコール、その後も続くが5スター

 目が点になりました。

「NEWS! SOLTERRAがJNCAP2022年度安全性能評価でファイブスター賞を受賞」

発売直後からリコールが続くソルテラ・bZ4Xが高い評価に

 告知が目の前にあります。スバルが配布している宣伝用パンフレットに織り込まれていました。SOLTERRA(ソルテラ)は2022年5月の発売直後にリコールになった車です。まだ1年過ぎていません。しかも、同じ年度内に6月、9月、10月と3回もリコールが続きます。そして2023年2月16日にもリコール。2月のリコール内容をスバルのHPから引用します。

リコール届出番号 5283 

リコール開始日 令和5年2月17日

不具合の部位(部品名) 衝突被害軽減制動制御装置(衝突被害軽減ブレーキ用前方カメラ)

基準不適合状態にあると認める構造、装置又は性能の状況及びその原因

衝突被害軽減ブレーキにおいて、制御プログラムが不適切なため、駐停車している車列の側方を通過する際に、前方カメラとミリ波センサによる車両認識に差異が発生し、システムが停止することがある。そのため、システムが再起動する間、警告灯が点灯して衝突被害軽減ブレーキが作動しないおそれがある。

改善措置の内容 

全車両、衝突被害軽減ブレーキ用前方カメラのプログラムを対策仕様に修正する。

 最初のリコールは2022年6月、車台と車輪を結びつけるハブボルトの不良でした。急加速や急停止するとその負荷でボルトに異常が生じて脱輪する恐れがあるものでした。自動車メーカーとしては基本中の基本技術です。タイヤと車台が離れたら、走行できません。通常のリコールはディーラーに持ち込み、修繕するパターンですが、ハブボルトのリコールはメーカーから運転中止と伝えています。深刻度合いがわかるはずです。

 タイヤの脱輪事故といえば、2000年代、三菱自動車が死傷事故を起こして販売が激減、経営破綻寸前に追い込まれた事例を思い出します。池井戸潤が「空飛ぶタイヤ」と題した小説を発表、テレビドラマや映画になりましたからご存知の方は多いでしょう。

 ソルテラはトヨタ自動車と共同開発した電気自動車。トヨタがほとんど開発、生産しており、スバルはソルテラ、トヨタはbZ4Xの車名で発売されています。その後もリコールが続き、9月に運転支援装置、10月にエアバッグが対象となり、2023年2月も運転支援装置の不具合です。いずれもリコールをかけて改善しているので、リコールを隠した三菱自動車の悪質性とは比較になりません。

リコールは安全性を高めるものだと知っているけれど

 新車は画期的な技術を採用しています。人間の技ですから完全無欠を求めるのは無理。むしろ不具合をメーカー自ら積極的に公表してクルマの安全性を堅持する努力はとても大事です。

 しかし、国など第三者の目によって高い安全性の評価を得ることとは別ではないでしょうか。ソルテラとbZ4Xは発売してからまだ1年間を過ぎておらず、ハブボルト、運転支援装置などでリコールです。いずれも運転者らの命を守る最も重要な技術です。ウインカーなど周辺部品・技術の不具合と全く違います。

安全評価は国交省の独立法人が判定

 5スターの評価を下したJNCAPとは、1995年から始まった自動車アセスメントで、米国で行われた安全評価に倣ったものです。現在は国土交通省の独立行政法人である自動車事故対策機構が実施しています。

 同機構のソルテラ/bZ4Xの評価を見てみました。2022年は最高の★★★★★で、評点は199点中186・16点。評価は2つのカテゴリーで行われ、衝突安全性能はAランク(100点中87・29点)、予防安全性能はAランク(91点中90・87点)。衝突安全性能は前面、側面、歩行者保護など10項目で、予防安全性能は被害軽減ブレーキ、車線逸脱、後方視界など8項目でそれぞれ細かく評価しています。合計18項目のうちフルラップ前面衝突(運転席)と歩行者保護(頭部)の2項目だけがレベル4で、残る16項目は最高評価のレベル5。

リコール続きで販売実績も少ないのに

 素朴な疑問が消えません。2022年に発生したリコール3件のうち9月は運転支援装置、10月はエアバッグです。運転支援装置は予防安全性能のコア技術のはずですから、評価がすべてレベル5となるのでしょうか。リコール案件は評価を下げるほど重大なレベルではないと評価したのでしょう。ただ、2023年に入ってすぐに再び運転支援装置のリコール。これって本当に信頼できるレベルなのか不安に思うのはおかしいでしょうか。

 また評価対象の実績が少ない。同じ年にリコール合計3件で、最初のリコールで3ヶ月ほど発売・生産は止まっていますから、2023年2月のリコール対象車は2023年2月現在でスバルが251台、トヨタが499台。1000台に手が届いていません。これしか実績がない新車に対して、5スターと評価できるのでしょうか。自動車事故対策機構は衝突実験などの動画も発表していますが、素人が動画を視聴しても安全性能の判定はできません。

メーカーの意図も読めない

 メーカーであるスバルがソルテラが5スターを得たと宣伝する意図が読めません。1970年代から米国ではラルフ・ネーダーやコンシューマー・リポートなどが自動車の欠陥問題を取り上げ、自動車メーカーと激しい論議を交わしました。この結果、自動車の安全性や信頼性を高め、自動車メーカーが消費者に説明する能力を高めました。クルマの安全性評価は、図面で決まるものではないはずです。

スバルは米国でも高い評価だから、まあ良いか

 やはり今回の5スターを見ると、日本の安全評価には首を傾げてしまいます。もっとも、スバルは米国でも最も安全なクルマ、ブランドとして高い評価を得ています。ソルテラは共同開発とはいえ、事実上トヨタ車です。スバルの技術者らの渋い顔が目に浮かびます。スバル車に対する信頼は揺ぎませんが、メーカーや評価機関に対する目は厳しく見つめるしかなさそうです。

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