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エア・ローソン登場か?幻のエネオス出資構想は三菱商事のやる気の無さを曝け出す

 「エア・ローソン」の看板を見て、思わず立ち止まりました。正確には「Air LAWSON」。羽田空港のモノレール駅を降りて、出発口に向かう途中にあります。空港内店舗なので「エア」の冠が加わったのでしょうが、なぜかエア・ギターの「エア」と同じ意味の文字と重なったのです。

エア・ギターは演奏したフリ

 エア・ギターは、ギターを抱えていないにもかかわらず、あたかも本物のギターを抱え、実際に演奏しているように大きな身振り手振りで演じます。ローソンも近い将来、コンビニエンス・ストアとしての機能と個性を失い、看板は変わらなくても中身が空っぽな「エア・ローソン」になってしまうのではないか?そんな白昼夢を見てしまいました。

 夢を見る根拠が無いわけではありません。2024年2月、三菱商事とKDDIは、ローソンを折半出資の子会社にすると発表しました。ローソンは三菱商事が株式の過半を握っていますが、KDDIがTOB(株式の公開買い付け)で50%を取得し、両社折半の出資比率に切り替えます。この結果、ローソンは株式上場を取りやめます。

 ところが、このTOBの舞台裏にはもうひとつシナリオがありました。石油元売り最大手のエネオス・ホールディングスが出資し、三菱商事、KDDI、エネオスの3社でローソンを経営する構想でした。KDDIの参画は、通信とスマホを使った金融サービスなどをコンビニで広める狙いが込められていますが、エネオスは全国に展開するガソリンスタンドチェーンの活性化にありました。

ガソリンスタンドの活性化として構想

 エネオスは全国に1万2000店の系列スタンドを展開していますが、コンビニを併設する約260店舗は来店客数が通常のスタンドに比べて多く、ガソリンの販売量は3倍も多いそうです。買い物や休憩などでコンビニに立ち寄り、ついでにガソリン補給や洗車するパターンです。ガソリンスタンドは新車販売が頭打ちになっているうえ、過当競争による経営悪化でスタンド数は減少しています。エネオスとしては、ローソンを傘下に収めてガソリンスタンドでガソリン以外の多種多様なサービスを提供し、日常生活に不可欠なサービス拠点に衣替えする考えでした。

 しかし、ここ数年、エネオス経営トップがセクハラで解任される事態が続き、三菱商事からローソンへの出資を提案されても、経営判断できませんでした。なんとも恥ずかしい話です。今後、電気自動車(EV)が普及すればガソリン販売そのものが一段と減少します。EV向けの充電設備などの投資でスタンド経営が大きく様変わりする重要な時期を迎えているだけに、コンビニの集客力は期待できました。

ローソンを救う経営戦略は誰が?

 もっとも、いずれもKDDI、エネオスがローソンをどう活用するのかが焦点で、両社の思惑通り経営戦略が進むとは限りません。最優先されなければいけないローソンが直面する経営環境への迅速な対応がおざなりになっています。セブンイレブン、ファミリマートに比べて商品力、集客力が弱く、上位2社の背中は遠のくばかりです。早急にローソンのコンビニとしての役割・機能を再構築しなければ、業界3位とは名ばかりで、取り残されるだけ。

 KDDIのみならずエネオスまで巻き込む構想が明らかになったことで、親会社の三菱商事がローソンの建て直しに自信を持てず、KDDIとエネオスに経営のリスク分散を託す露骨な意図が炙り出てしまいました。中期的な戦略は横に置き、とりあえず安全な経営基盤を再構築する気持ちはわかりますが、本来の主役であるローソンの未来戦略は見えないままです。

5年後のローソンの看板は・・・

 なんとも情けない話です。親会社が子会社の窮状を救う処方箋を見つけられず、事実上KDDIとエネオスに丸投げする。三菱商事にとってローソンの経営戦略は先行きが五里霧中だから、徒手空拳で他の大手企業に身を任せると判断したとしか思えません。やっぱりローソンは「エア・ローソン」になってしまう。そんな気がしてなりません。5年後、ローソンの看板はエアとなってどこかに消えてしまっているかもしれません。

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