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モビリティの時代 BYD など中国勢 世界に躍り出る存在感が抜群 かつての日本の再来

 ジャパン・モビリティショーで最も勢いを感じたのは中国メーカーでした。この1年間で電気自動車(EV)の販売で世界1位に躍り出たBYD。そしてバッテリーメーカーの欣旺達動力(SEVB)の2社です。日本車メーカーのトップが語る口調とは雲泥の差。自社の戦略を語る声は大きく、力強い。飛ぶ鳥を落とす勢いという表現がピッタリ。「世界のどこにも負けないぞ」。この覚悟を感じました。1980年代、世界のモーターショーでよく目にした日本車メーカーの姿と重なります。

言葉は力強く、時には絶叫も

 「BYDのパートナーとともに全国を走って回りました」。BYDジャパンの劉学亮社長は日本語で一つ一つの言葉に力を込め、ほぼ絶叫に近い声の調子で目の前の報道関係者に向けて話し始めました。今回のショーで最大の注目企業であるBYD。同社のブースは多くの人が押しかけてびっしり。姿は見かけませんでしたが、創業者の王伝福氏ら同社のトップが揃っていたようです。日本市場への期待が伺えます。

 劉社長が語る内容はとても明快。数字もどんどん飛び出します。同社の重要なビジョン「テクノロジー」「グリーン」「フューチャー」の3点を挙げ、地球の平均温度を1度下げるため、EVや太陽光など新エネルギーの活用に取り組んでいると説明。続けて、世界には400拠点、従業員60万人、6大陸で世界400都市、70以上の国と地域で活動し、自動車は58の国・地域で販売。2022年、2023年上半期はEVの販売世界1位となり、販売台数は累計500万台を超えたと一息で言い切り、「今日から日本のEVの新たな未来をここから始めます」と締めました。

日本開拓へまっしぐら

 力強い言葉の思いは販売増の1点に込められています。同日開催された報道者向けプレゼンテーションで日本車メーカーの社長は異口同音に「未来社会への夢」について語るのとは対照的に、BYDはクルマを売る姿勢を明確に強調します。その割り切った構えは小気味良いぐらい。これから成長に向けて迷いなくどんどんアクセルを踏む企業の気概は違います。

 BYDは車種を増やしている途中で、ファミリーカー、SUV、スペシャルティーカーへとほぼメニューは揃い始めています。劉社長がビデオを使った経営戦略の中でスペシャルティーカーとして紹介したクルマは一見、「アウディTT」に似ているなあと感じていたら、劉社長はアウディからデザイナーをスカウトしたと話します。ショーに展示した「U8」は高級SUVとして近く発売しますが、こちらも英国の高級車「レンジローバー」か「ディフェンダー」に似ています。

ベンツと共同開発した高級ミニバン

 素晴らしい車なんでしょうが、既視感があります。もっとも、日本も1980年代は同じでした。現在、カーデザインで高い評価を集めているマツダは当時、ベンツなど欧州車に似た車を開発し、「プアマンズ・ベンツ」と揶揄されていたものです。BYDは日本の戦略を踏襲しているだけです。

日本を追いかけ、追い抜く

 BYDは1995年、中国の深圳でバッテリーメーカーとして創業しました。2003年、電気自動車に参入。2008年9月に世界的な投資家のウォーレン・バフェット氏が株式の10%を取得し、注目を集めました。当時のBYDはバッテリーメーカーがEVに進出したというレベルで、実際にBYDの車はまだ発展途上。車の主役は乗客よりも重くて大きなバッテリー。なんとか収納して人間のスペースを確保した印象が強かったのを覚えています。日本には2015年に太陽光発電事業を開始。2022年に日本の乗用車市場に参入、ついに中国製EVが上陸したと話題となりました。

 BYDはエンジン車で築いた自動車大国の日本を追い上げ、EVで追い抜く未来図を描いています。100年に1度の変革期という常套句で説明できない時代が日本を待ち構えている気がします。ところが日本車は周囲の変革に気づかず、現在の状況に甘んじてしまう。強いと信じているのは当事者だけ。すでに日本の自動車産業が足元からガラガラと崩れ始めているのではないでしょうか。

 BYDに負けない力強さを感じたのがバッテリーメーカーの欣旺達動力(SEVB)。申し訳ありません、この会社は知りませんでした。ショーの会場を歩き回り、車載用バッテリーのブースを一つ一つ勉強していたら、SEVBと出会いました。展示はシンプル。急速充電は10分間で80%を充電できる、航続距離1000キロを目指すといった文字が目に止まり、会社概要も含め、スタッフに聞いたら日本語で説明してくれました。

BYDに負けない気合いを感じる

 「1000キロはまだ実現していません。研究開発レベルです」と率直に答えてくれました。バッテリーの性能向上は世界のメーカーがしのぎを削っています。やはりキャッチフレーズだけかとがっかりしていたら、車載用バッテリー生産では中国で10位以内に入っており、研究開発も加速していると強調します。そして「中国は今、世界で最もEVを生産している国。その中国で上位グループにいるということは、世界でもトップグループなのです」と強い口調で畳み掛けてきました。私の胸中を読まれ、侮るなかれと言われた気がしました。

10分で80%まで充電可能

 供給先もすでに世界の自動車メーカーに納入しており、日本では日産自動車に供給しているそうです。「今、ここで説明を受けている人は、日産のバイヤーです」と話すと、その日産の人はびっくりして振り返っていました。なかなか無い光景です。モビリティショーとはいえ、実際の購入先が部品メーカーとビジネストークしている最中、全く知らない人間に対し名指しで「日産の人」とは教えることはあり得ません。日本企業なら軽率と怒られるかもしれません。あまりにも単刀直入とはいえば、そうかもしれませんが、それだけ日本市場での開拓に強い気持ちを持っている表れと理解しました。

中国勢の気合いに目が覚める

 正直、モビリティショーに出展している日本企業のみなさんからは、ビジネスよりも自動車工業会、もっといえばトヨタ自動車の豊田章男会長が音頭を取って「モーターショー」から衣替えしたイベントに付き合った感が見え隠れしていました。しかし、中国企業は違いました。真正面から日本市場の開拓に挑んでいます。この気合いに目を覚まされました。

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