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モビリティの時代 トヨタの規律 日野とダイハツは自粛 祭りよりも反省優先 未来を語れず

 とても意外でした。ジャパン・モビリティーショーはコロナ禍を乗り越えた自動車産業が電気自動車(EV)などカーボンニュートラル時代の未来・夢を語るお祭りだと思っていました。勘違いでした。日野自動車とダイハツ工業はエンジン関連の不正行為があったとして自粛モード。ダイハツは報道者向けプレスデーのプレゼンテーションも開きませんでした。広報担当に確認したら、「不正を反省し、自粛しました」。両社ともトヨタ自動車グループ。豊田章男会長はお祭り騒ぎを楽しんでいましたが、日野とダイハツは置いてきぼり。これがトヨタの規律なのでしょうか。

「お客様」「総合品質」が繰り返される

 日野の小木曽聡社長はとても静かな口調で語り始めました。「創業以来、人や物の移動を支えるため、技術や商品、サービス、そして日野自身も進化させ続けてきました」。その後も「総合品質」「お客様」の言葉が繰り返し登場します。「安心して使っていだだける」「24時間体制の故障整備」など顧客の便宜を最優先する姿勢を強調しました。目指す姿についても、「カーボンニュートラルへの貢献」「人流・物流課題の解決」を提示し、トータルサポートと商品で実現する「総合品質」を今後も死守する理念と語ります。

 すぐ隣のブースで開催したいすゞ自動車のプレゼンとは対照的です。「加速させよう、運ぶ未来」をテーマに2012年にボルボから買収したUDトラックスと共に、南真介社長は映像を使って街を走り回るトラックの可能性に満ち溢れた未来を語り、華やかな演出でいすゞ・UDのこれからを紹介しました。社長のテンションも展示内容も大違い。

 日野も展示車や担当者の説明を通じてカーボンニュートラルを目指したEV戦略を説明しています。社長が未来を語らなくても、展示車や先進技術を介して日野の未来を語れば十分との見方もあります。

現場の皆さんが信頼回復を担う

 しかし、日野の展示で最も目を引いたのは、現場の皆さんの声です。トラックの生産、販売、整備など裾野の広い現場の意見を顔写真を添付して紹介するパネルが並んでいました。新聞記者の現役時代、日野自動車の工場は世界で最も生産性が優れ、最高品質のトラックを生産し、高く評価されていました。

 世間ではトヨタのカンバン方式が注目を浴びていましたが、玄人筋では日野が展開するTQC(全社的品質管理)やユニークな生産改革を学べとの声が多く、生産や販売の現場へたびたび通いました。そして毎回、日野をより素晴らしいトラックメーカーにしようと努力する真剣さに敬服したものです。

 日野はエンジンの不正試験などで大赤字を計上しています。不正の原因は究明され、開発部門の無責任主義が指摘されていますが、自動車メーカーのような大組織で現場が勝手に判断し、誤魔化すようなことはあり得ません。経営の上層部が指示しない限り、起こり得ない不正事案だと考えています。

 その信頼回復の前面に立つのが、現場の皆さんでしょうか。日野は不正発覚の後、EVなど新規格の商用車開発に取り組むトヨタグループの会社から”破門”され、最近復帰を認めらたばかりです。その間、三菱ふそうと一体化してトヨタ子会社から外れ、ベンツとトヨタの共有会社となっています。世界トップクラスのトラックメーカーを弄び、手放すトヨタの戦略が理解できません。

 その日野が近未来をどう切り開いていくのか。モビリティショーの趣旨から見ても、多くの入場者は知りたいと考えていたでしょう。

名車シャレード

ダイハツは社長の会見無し

 ダイハツはプレスデーで社長が語る場がありませんでした。軽自動車市場をスズキと競い合いながら開拓する一方、軽スポーツカー「コペン」などユニークなデザインと発想でクルマの常識を塗り替えて来た会社です。現在はトヨタ子会社ですが、もともとは大阪発動機が祖業で、1967年に対等な関係を前提に提携しトヨタ入りました。

 この経緯があるだけに、トヨタグループの中でも、トヨタの色合いに染まらずに新車開発、生産、販売する社風が根付いています。1977年に登場した「シャレード」は、そのデザインと走りの良さから日本製小型車のイメージを一新し、世界を驚かせました。

 新車市場の4割を占める軽でシェアトップのメーカーです。モビリティショーのダイハツブースは、多くの入場者が詰め掛け、自分が所有する軽がEVになるとこう変わるのかと展示車を品定めする家族連れをよく見かけました。

コペンの未来モデル

新車の4割を占める軽のトップが語らない

 話題性だけで注目すれば、トヨタや日産、ホンダ、ベンツ、中国のBYDなどが多くの耳目を集めます。しかし、実際の車ユーザーは軽自動車の近未来に大きな関心を持っています。スズキとダイハツがどうEV時代を描いているのか。多くの人が知りたかったでしょう。モビリティーショーが現在の、そして未来のユーザーと共にクルマを考えるために衣替えしたのなら、ダイハツに未来を語る場を設定しなかった今回のショーをどう反省するのでしょうか。

 不正行為を理由に未来を語れなかった日野とダイハツ。プレスデーだけでなくショーの開催期間中、社長が登壇して不正事案も含めて説明し、それを乗り越えて自らの近未来、そしてクルマを利用するユーザーの未来を夢と共に語ってほしかった。

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