• ZERO management
  • カーボンニュートラルをZEROから考えます。

ニデック挫折の教訓 ③ 会計監査法人は不正経理を止められない

 厳しすぎる見方と言われるかもしれませんが、ニデックの不正会計を見逃したPwCジャパンに対する批判はすべての会計監査法人が問われるものです。

すべての会計監査法人が問われる

 会計監査法人が手を抜いているというわけではありません。ビジネスモデルはデジタル時代を迎え、監査、経営コンサルティング、税務・法務を軸に多岐にわたっていますが、株式上場企業や大企業の会計監査が今も経営を支える大きな柱であることに変わりはありません。厳正に監査する相手は、失うわけにはいかない顧客でもあるのです。

 優良顧客の場合、ライバルが虎視眈々と狙っています。奪われるわけにいきません。顧客と衝突してまで監査過程を杓子定規に進めることができない場合があるのです。「馴れ合い」「見逃す」までいきませんが、会計処理がグレーゾーンと判断できる場合はそれ相応の理屈付けによる解釈によって正当な会計処理と捉えることがあります。

 監査業務は当然、巨額な報酬が伴います。監査報酬は中小企業、大企業などによって異なりますが、トヨタ自動車など世界で事業展開する企業は10億円を超えます。ニデックの場合は、2015年3月期から2024年3月期までは5〜6億円で推移し、2025年3月期は9億7700万円とほぼ倍増しています。監査証明業務の3億6400万円が上積みされたためです。

 もちろん、監査を受ける上場企業が監査報酬を節減するために会計事務所を次々と変更し続けたら、企業の財務諸表に対する信頼性は大きく損なわれてしまいます。監査業務は企業と会計事務所が相互に信頼し合うことが大前提にあります。

ニデックは「与しやすい相手」と捉えていた

 ところが、ニデックと監査法人のPwCジャパンは、長年築き上げた信頼関係が大前提を破壊してしまいました。第三者委員会は調査報告書でニデックがPwCジャパンを「説得しやすい相手」「与しやすい相手」と捉えていたと断定しています。 

 委員会による調査の過程では、ニデックの役職員が会計監査人に不正確な情報、ミスリーディングな情報を与え、都合の良い意見を引き出そうとする様子が至るところで観察された。また、ニデックの役職員が、PwC京都を「説得しやすい相手」、「与しやすい相手」と捉えていたことを示す証拠も多々発見された。(中略)今般発見された会計不正の中には、ニデックの役職員がPwC京都に対して虚偽説明をしたり、必要な証拠書類を隠蔽するといった不誠実な対応がなされていたものがあったが、これも、PwC京都を「与しやすい相手」と捉えていたことと必ずしも無関係ではないと思われる。しかし、会計監査人の了承を得られれば不正な会計処理が正当なものとなるわけではないのは当然のことである。

 ニデックの会計監査法人はPcWジャパンですが、調査報告書で「PwC京都」と記載したのは、ニデックと会計監査法人の関係が通常と異なる意味合いがあることを示しています。

 ニデックの会計監査法人は長年、京都を地盤にする京都監査法人でした。元々は中央青山監査法人の京都事務所でしたが、中央青山は2005年に巨額粉飾決算を引き起こしたカネボウ事件の会計監査法人だったため、解体に。京セラ創業者の稲盛和夫氏が京都発祥の企業の安定した監査業務を維持する狙いで支援、京都監査法人が設立されました。その後、世界的な会計事務所のPwCグループの傘下に入り、現在のPwCジャパンに名を変えます。

 ニデックとPcWジャパンは、その馴れ初めからみて「企業の言い分を求めやすい」関係にあったとみて良いでしょう。ただ、京都出身の企業が京セラはじめ不正会計に手を汚したことはありません。不正行為の責任を負うのはニデックであることは間違いありません。

ニデック以外でも粉飾は続く

 もっとも、PwCジャパンは営業担当者が顧客から31億円を詐取したプルデンシャル生命の監査法人でもありました。「PcW京都」じゃなくても、PcWジャパンの監査業務にはなにか問題があるのでしょうか。

 新聞記者として会計監査法人を取材した経験からいえば、ニデック同様、恫喝などで監査の判断を歪めた事例を知っています。相手はPcWに並ぶ大手会計監査法人でした。監査報酬をエサに無理難題を押し付けるだけでなく、会計監査法人が対外的にひた隠す問題を交渉材料にしたようでした。どんな組織も叩けば、埃が出てきます

 ほとんどの会計監査は厳正に進められています。ただ、ごく一部とはいえ、不正会計を見て見ぬふりをする会計監査法人がいたとしたら、企業の財務諸表は信頼できなくなってしまいます。米国でも2001年、石油大手エンロンの粉飾会計事件で名門のアーサー・アンダーセンが解散、消滅しています。高収益企業を演出する不正会計の誘惑に駆られる企業はまだまだ続きます。果たして会計監査法人は止められるのでしょうか。

関連記事一覧