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「物言う株主」オアシス、東京ドーム、ツルハに続き、花王に食指、今度はどこの代理人?

 「オアシス・マネジメント」。この香港系の投資ファンドは「物言う株主」として株式市場を賑わす存在として知られ、大手企業のM&Aにたびたび登場します。多くの企業に株主として参画していますが、最近では三井不動産の東京ドーム、イオンのツルハでキープレーヤーとして陰の主役を演じました。ツルハのイオン傘下入りが決まった直後の4月、花王に経営改革を要求しました。経営の実権を握る考えは毛頭ないでしょうから、今度も舞台裏には花王に関心がある大手企業が潜んでいるのでしょうか。

M&Aの陰の主役

 オアシスは花王の株式3%超を保有しています。セス・フィッシャー最高投資責任者は記者会見で、事業採算が低下している同社製品のブランドは売却などで整理する一方、女性が占める主要顧客に合わせて女性の取締役を増やすよう求めました。株主総会か臨時株主総会で株主提案する考えも示したそうです。

 確かに花王の経営状況は突っ込みどころ満載です。まず収益力の低迷から抜け出せません。営業利益は2018年12月期から業績予想を下回り続けているうえ、純利益をみても2020年12月期から減益続き。コロナ禍など経営環境の悪化があるとはいえ、かつての花王の強さを知っているだけに、ちょっと情けない。2024年12月は大幅増益を予想していますが、本格的な回復軌道に戻る力が蘇ったのかどうか。

花王に突っ込みどころ満載

 取締役のメンバーも8人のうち女性は1人だけ。海外の投資ファンドを中心に女性の取締役を増やすよう提案するのが大きな流れになっており、花王同様、女性の登用が遅れていたキヤノンの御手洗冨士夫会長が2023年の株主総会で過半ぎりぎりで信任されたニュースが話題になったほどです。オアシスのフィッシャー氏は「12人のうち5人を女性にすべきだ」と話したそうですが、増やさざるを得ない状況にあるのは事実です。

 花王はオアシスの要求に対し、「2023年度決算で示した積極的なポートフォリオ管理と構造改革について、残念ながら十分な理解がなされていません」と反論し、「今後も直接対話を続けていく」とのコメントを発表しています。

三井不、イオンを”支援”

 オアシスは「物言う株主」としてみれば、かなり実績を挙げています。2020年10月、東京ドームに対し経営効率化を求めて社長ら取締役の解任を求め、TOBをほのめかします。その後、読売新聞グループ本社が仲介に入り、三井不動産が東京ドームの完全子会社化を決定。オアシスは三井不動産のTOBに応じて株式を売却しました。三井不動産は、東京・築地市場跡地の再開発で読売巨人軍のホーム球場となる新球場を検討しているといわれており、現在のホームグラウンドを運営する東京ドームの買収は渡りに船。オアシスの「物言い」は、読売新聞と三井不動産の思惑に見事にピタリとハマります。

 イオンのツルハ買収も東京ドームと似たシナリオでした。2023年8月、オアシスはツルハの同族経営体質に不備があると指摘して、社外取締役選任などについて株主提案しました。ツルハの株式13%を握る第2位の株主でしたが、筆頭株主は13%強の保有するイオンでした。イオンはドラッグストア第1位のウエルシアを傘下に収めており、業界2位のツルハを加えれば売上高2兆円、シェア25%を超えます。過当競争、成長力が低下するドラッグストアを支配するためには、上位の統合が最も最適な戦略でした。

花王の日用品はアジアなどで成長

 2024年1月29日、イオンは香港投資ファンドのオアシス・マネジメントとツルハホールディングの株式取得に向けて交渉すると発表しました。イオンはオアシスが握る株式を合わせれば26%を超え、ツルハを持ち分法適用会社として飲み込むことができます。

 さて、花王の展開はどう予想すれば良いのでしょうか。これまでの流れを振り返れば、オアシスが花王の場合でも現在は姿が見えない企業を念頭に落とし所を想定していると考えてもおかしくないでしょう。花王が強い日用品は、アジアを中心に世界で需要が伸びています。国内外の大手日用品メーカーが花王を飲み込むのか、あるいは新しい成長領域を求めて新規参入する予想外の企業が突然、現れるのか。これから一年、花王を巡るニュースが飛び交うのでしょう。

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