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オリィ研のモビリティとは「人と出会い、会話し、役割を担う」孤独を解消する未来を創る

 オリィ研究所の創業者、吉藤健太朗さんのお話を聞く機会がありました。吉藤さんは分身ロボット「OriHime」を介して遠隔地に居ながら、あたかもすぐ隣で会話し、一緒に仕事や趣味を楽しむことができる社会を目指しています。仮想空間「メタバース」を現実空間で実現するイメージと理解していますが、どうでしょう?。個性的なキャラクターと優れた機能を両立したロボットを開発しているのは知っていましたから、一度はお話を聞きたいと考えていました。

とても刺激的なモビリティを披露

 場所は10月末に開催したジャパン・モビリティショー。吉藤さんらが参加するパネルディスカッションを見つけました。かなり期待して聴講に参加しましたが、期待以上でした。モビリティショーは日本の自動車メーカーなどが近未来の移動を自動車、飛行機、ロボットなどを使って展望するイベントでしたが、「移動」を考えるうえで最も刺激を受けたのはオリィ研の吉藤さんのお話でした。

左から2番目が吉藤さん

 パネルは1時間程度、ロボットとモビリティの近未来をテーマに議論しましたが、吉藤さんがモビリティについて述べた言葉を基に「移動」に対する考えを要約してみました。

移動は人間の孤独を解消する

移動するのは、人と出会うために行く。そこで人と出会い、対話し、新たな人との関係性を作ることができる。身体が移動できなくてもインターネットを使って移動することも、移動の一つと考えている。出会い、対話、そして何かしらの役割を持つこと。この三つが揃えば、人は孤独を解消できる。たとえ身体が不自由になったとしても、分身ロボットを使って移動できれば孤独にはならない。だからこそ我々はモビリティに取り組み、決して足を止めないし、止めてしまわないよう、どう未来を創っていくのか。これがモビリティに対する考え方。

 自動車や飛行機などを土台にモビリティを考えてきただけに、としても新鮮な視線を感じました。カーボンニュートラルの実現を追い風に電気自動車(EV)が近未来社会のモビリティの主役になります。人工知能やインターネットの技術をフルに活用して自動運転は当たり前になれば運転席は消え、車内は家族や友人らと会話や音楽、映画などを楽しむ空間に変わります。

 自動車は過去100年間、移動と共に運転そのものがエンターテインメントの一部でした。しかし、EV時代が到来すれば、運転するエンタメは消えてしまい、車内空間は自宅のリビングルームやホテルのロビーのような雰囲気に変貌します。目的地に到着したら、温泉やキャンプ、あるいはスポーツを楽しむ。移動は移動先の目的を実現するための時間で、移動そのものの価値はA→Bへ到着以外、無くなってしまうのではないか。新幹線も自動車も区別はなく、目的地に到着するだけの過程に過ぎなくなるのではという疑問が頭の隅から消えませんでした。

過去100年間の移動が覆る

 吉藤さんのモビリティは違います。移動そのものに価値創造があるのです。到着地での目的は同じですが、移動するからこそ、会いたい人と対話ができ、次のステップに踏み出せる。新たな発見、体験も可能になる。たとえ寝たきりの状態であっても、スキューバーダイビング、宇宙旅行はできる。それはネットを利用した分身ロボットを介した宇宙旅行だとしても同じ価値がある。移動は自らの世界をどんどん切り拓く役割を持つと考えています。

 吉藤さんは病弱などで学校に行けない時期もあって、「人と出会うことで人生が変わっていくと考えている」と話します。高校、大学を通じて車椅子、ロボットの研究・試作を進めながら、「ベッドの上にいながら、会いたい人と会い、社会に参加できる未来の実現」を理念に2012年9月にオリィ研究所を設立しました。これまでに多くの実績と高い評価を得ています。詳細については下記にホームページのアドレスを記載しましたので、そちらから参照ください。

 吉藤さんの「移動によって人は孤独を解消できる」との発言を聞いてマザー・テレサの言葉を思い出しました。「最も大きな苦しみは、やはり孤独です。愛されていないと感じることですし、だれ一人友がいないということなのです」。移動がもたらす力が生きる力になるとは考えもしませんでした。

 吉藤さんは途中、港区にいるスタッフ「マサ」と目の前にある分身ロボット「OriHime」を通じて会話し、会場の参加者とコミュニケーションを取ります。マサさんは脊髄の難病で身動きが不自由ですが、分身ロボット「OriHime」が視線入力で遠隔地から操作するマサさんに代わって目となり、会話します。マサさんは次のように移動の素晴らしを語ります。「広島や日本橋などでを行ったり来たり一緒に仕事をしています。収入を得られ、朝目覚めたらパソコンつけてと、働けることは素晴らしいですよね。交通費や通勤時間などがないので、究極のモビリティだと考えています」。

究極の瞬間移動とは

  吉藤さんは「瞬間移動」という言葉を何回も使います。分身ロボットを移動先に配置してあれば、ネットを介して意識が瞬間移動して、目指す場所にいれば、それは現実なのだと。ドラえもんの「どこでもドア」は不要だと笑います。瞬間移動を可能にするモビリティ社会が到来すれば、人間の可能性はどこまで広がるのでしょうか。モビリティの主役は自動車、飛行機などと勝手に思い込んでいた浅慮を改めて恥じるしかありません。

 残念なことに会場のインターネットの状況が悪く、途切れ途切れに。近未来のモビリティを語るのがショーであるにもかかわらず、近未来の必須インフラであるネットが繋がらない。主催者は自動車工業会です。会場はビッグサイト。日本最大級の会場で、スポンサーの資金にも余裕があるイベントであるにもかかわらず、基本のネットが不通とは・・・。なんともお粗末で、派手な演出にばかり力をいれ、最も大事なインフラを見落とす主催者の限界が垣間見えました。これが日本の現状なのでしょう。

オリィ研究所のホームページはこちらから

https://orylab.com/

◼️ 写真の「OriHime」はオリィ研究所のホームページから引用しました。

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