半導体ラピダス 軟弱地盤、環境保護にも注目を 量産計画の課題になる可能性も
半導体産業の再興をかけた日の丸プロジェクト「ラピダス」。2ナノ(ナノは10億分の1)の世界を目標に巨額資金、最先端技術、優秀な人材を集める努力には課題山積です。是が非でも実現してほしいですが、政府の目玉政策とはいえ見落としてはいけない視点があります。
建設地の北海道千歳市周辺の地盤と環境保護です。泥炭層など脆弱な地盤があり、磐石な工場が必須の半導体量産にとって足枷になるとの見方があります。軟弱な地盤の沈下を止めるのは難工事だそうです。土壌改良などの工事、さらに量産開始後もウトナイ湖などラムサール条約登録地に流れ込む美々川や千歳川など周辺河川の環境も注視する必要があります。経済成長を最優先した昭和と違い、見逃すわけにはいきません。目論見通り、ラピダスは量産できるのでしょうか。
泥炭層で物流を支える動脈にめどが・・・
半導体の巨大プロジェクトは農水産業が基幹産業である北海道経済にとって、最も理想的な先端製造業の進出。次代への経済効果は計り知れません。ところが、泥炭層が思わぬ時限爆弾となりそうです。北海道の各地に広がる泥炭層による軟弱な地盤で工事は予定通りに進められるのか。完成後も計画通りに操業できるのか。そんな不安材料も潜んでいました。
新たな物流の大動脈として期待される「道央圏連絡道路」(国道337号)の全面開通のめどが立っていません。道路計画の大半はすでに供用されており、工事は進行中です。このうち長沼町ー南幌の14・6キロの一部は泥炭地に覆われて地盤が弱く、道路工事を進めながら地盤の安定性を確かめており、北海道新聞は「全面開通の時期は示せる段階にない」と工事当局のコメントを伝えています。
道央圏連絡道路は日本海側の石狩湾新港と太平洋側の苫小牧港の80キロを結び、札幌市、ラピダスが立地する千歳市、新千歳空港を経由します。北海道の主要道路である道央自動車道、国道36号は長年、渋滞が当たり前となっているだけに、人流・物流をスムーズに進める第三の動脈として期待されています。
なにしろラピダスが半導体を量産するためには多くの資材の運搬が見込まれます。ラピダスの半導体工場の周辺には半導体装置メーカーなど量産を支える関連産業が集まるからです。航空母艦の周りに巡洋艦や駆逐艦などが囲み、戦闘力と防衛能力を高める戦略と同じ発想です。
当然、半導体の素材や関連部品の納入、完成品の出荷など物流が膨大に増えます。道央圏連絡道路を経由して日本海側の石狩新港、太平洋側の苫小牧港に振り分けて機材などを搬入・搬出する進めることなり、計画通りに遂行できるかどうかはラピダス量産の成否を握る重要なカギ。
工場の土台は盤石か
ラピダスの量産そのものにも泥炭層の影響があると囁かれています。2ナノを目標にした半導体生産は、極めて精緻な生産ラインを構築しなければいけません。量産を開始しても、軟弱な地盤で工場の土台が歪み、生産機材の位置がずれたりすることは絶対に許されません。泥炭層の軟弱地盤の影響を排除するため、工場周辺では大手製鉄メーカーからコンクリートの原料などに使用される鉄鋼スラグを大量にかき集め、投入されているそうです。量産開始した後も工場の地盤地下の恐れはあります。万が一、生産ラインの歪みが生じれば、量産は目論見通りに進めないことになります。