• ZERO management
  • カーボンニュートラルをZEROから考えます。
  • HOME
  • 記事
  • ZERO management
  • そごう・西武がセブン&アイ ・ヨドバシに反発 「流通再編は1+1=1」寄せ集め経営のツケ

そごう・西武がセブン&アイ ・ヨドバシに反発 「流通再編は1+1=1」寄せ集め経営のツケ

  百貨店を経営する「そごう・西武」がストライキに突入するかもしれません。百貨店のストライキは1950年代、三越や岩田屋で実行されたぐらい。もしストライキが実施されれば60年以上の空白を塗り替える”大事件”に。背景には親会社のセブン&アイ・ホールディングスが発表した「そごう・西武」の売却計画。従業員らに対する説明が不十分だったせいか、衰退する百貨店を切り捨てる姿勢に労組が反発しています。経営規模拡大を狙って百貨店を買収したものの、グループ内で相乗効果を引き出せず、スーパー、コンビニ、百貨店の寄せ集めを脱しきれない。これまでの経営戦略のツケが回ってきたようです。

労組がストを検討

「そごう・西武」の労働組合は7月3日、スト権確立の是非を問う投票の実施を組合員に告示しました。投票結果は25日に公表されるそうです。賛成が過半数となれば、スト権が確立されます。百貨店の従業員は約5000人。組合員は8割を占めるそうですから、たいへんな組織率です。実際にストを実行すれば、全国にあるそごう・西武の10店舗は機能しなくなるでしょう。

   従業員が反発する売却計画をざっとみてみます。セブン&アイは2022年11月、米国の投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに対して「そごう・西武」を売却すると発表しました。フォートレスはヨドバシホールディングスと組んで「そごう・西武」の店舗を刷新する考えです。

 西武池袋にヨドバシ進出も

 ヨドバシは新宿はじめ主要駅前に店舗を構え、その集客力によって大量販売、成長する戦略で成功してきました。「そごう・西武」でも同様の戦略を踏襲するのは確実で、とりわけJR池袋駅前にある旗艦店である本店の低層階をフルに活用する考えです。

   セブン&アイにとってそごう・西武の従業員の反発は予想外だったのでしょうか。米ファンドやヨドバシが傘下に収めた後、そごう・西武の店舗はその立地条件などを考慮して閉鎖や人員削減が見込まれます。 しかも、西武池袋本店は西武のブランドイメージのみならず、埼玉県と東京のターミナルである池袋駅、そして東京・豊島区の街の顔となっています。

 西武ブランドとは色合いが異なる量販店のヨドバシカメラが出店すれば、せっかく築いた店舗の高級イメージが崩れるだけでなく、池袋そのものの街の雰囲気も大きく変わるかもしれません。自身の職場を守る労組が反発するのは予想できますし、西武池袋本店がある豊島区が西武ホールディングスに対し、店舗の存続を求める嘆願書を提出したのも肯けます。

スーパーと百貨店は水と油

 セブン&アイは売却計画の詳細について売却先のフォートレスなどに対する守秘義務を理由に従業員らに十分な説明をしていないようです。そごう・西武の労組が百貨店業界としては異例のストを構える姿勢を見せるのも、従業員、店舗、地域の未来に対する不安を感じているからでしょう。

 セブン&アイのそごう・西武の売却で浮き彫りになったのは、スーパー・コンビニと百貨店の間にある距離感です。スーパー・コンビニの客層は、客単価も含め百貨店と大きく違います。片や1円単位で値札を決めるのに、百貨店は外商も含め高級品を販売するノウハウと顧客名簿が企業の力です。歴史もまるで違います。スーパーは戦後の高度経済成長期で飛躍しましたが、百貨店は江戸時代が創業の源。従業員の姿勢も水と油、全く正反対。スーパーは米国で生まれた経営手法をコピーし、そのまま実践することを仕込まれます。現在はだいぶ変わったようですが、百貨店は店舗の現場をメーカーや仕入れ先から派遣される販売応援員にある程度任せ、自分自身の販売ノウハウと信用を背にいかに多くの顧客を抱えるかが勝負。

買収しても相乗効果出せず

 2005年にセブン&アイがそごう・西武を買収した時でさえ、そごう・西武は近い将来手放すといわれていました。イトーヨーカ堂から創業し、コンビニでも世界を席巻するビジネスモデルを確立しましたが、上意下達で育った経営幹部が、創業者・堤清二のもとで個性的な店舗運営で急成長した西武流通グループと水が合うわけがありませんでした。

 もっとも、百貨店同士の提携でも同じことがいえます。伊勢丹・三越グループをみてください。同じ傘の下にいますが、伊勢丹も三越も創業以来築き上げた販売手法、ブランドを堅持しています。三越は窮地から脱した後は、再びかつての三越です。伊勢丹も新宿本店に頼る一本足打法のまま。

 流通業の新陳代謝は続いています。高度経済成長からバブル崩壊後の長期化するデフレ経済、さらに新たな脅威であるネット販売の台頭などに対応するため、百貨店、スーパー、コンビニ、家電量販店は互いを飲み込み、あるいは飲み込まれる再編を繰り返しています。

 しかし、結局は百貨店もスーパーも同じ傘の下に収まっても、互いの違いを確認しているだけ。異なる業態の提携から新たな刺激を得て革新的な事業モデルを創造できません。せめて1+1=2と答えたいところですが、足し算にもなっていないのが現状です。

経営判断は引き算だけ

 経営が厳しくなれば、引き算でしか生き残れません。セブン&アイがそごう・西武を引き算し、あとはヨドバシに任せると判断するのも当たり前かもしれません。流通業の再編は、今後も同じシナリオで繰り返されるのでしょう。

関連記事一覧