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セイコーマートはセブン、ローソンの教材、人口減でも生き残る地域密着のコンビニモデル

 北海道には素晴らしい特産品が数多くありますが、セイコーマートもその一つ。創業の地、北海道にしっかりと足場を築いた日本最強のコンビニチェーンです。広大な北海道の隅々に店舗を展開しながら、常に多くの食品や日用品を揃え、店内で調理した出来立ての総菜やパンも販売します。地元密着に徹し、住民と近所付き合いする距離感がウリです。

広大な北海道の隅々に店舗展開

 全国チェーンのセブンイレブンやローソンと同じじゃないかと思うかもしれません。発想が全然、違います。コンビニのビジネスモデルは大都市圏を中心に店舗を展開し、商品や売れ行きを集中管理し、配送するのが基本。早朝から深夜まで長時間、お店を開いていても収益ができるよう売れ筋の時間帯に合わせて商品を揃え、なおかつ配送コストを徹底的に低減するのです。

 ところが、セイコーマートは全く真逆。北海道の人口は500万人と東京都の半分しかなく、毎日商品を配送する地域は6県+新潟県に相当する広大な土地。生鮮品も含めてきめ細かく商品を店舗に届け、収益を上げる物流効率はそう簡単には真似できません。しかも、北海道の人口減は全国トップクラスで加速。大半の店舗はいかにお客さんを引き寄せるかに汗を流しています。

 現在のセブンイレブン、ローソンは、セイコーマートのノウハウを学んで日本型コンビニを開発したと考えています。米国発の「空いてて良かった」を死守しながら、日本らしいきめ細やかな商店の良さを取り込んだのです。

 しかし、全国チェーンのコンビニは今、新たな経営モデルの構築を迫られています。全国にもう出店する地域が無いほど溢れ返り、過当競争に喘いでいるにもかかわらず、東京など大都市以外の地方は人口減に歯止めがかかりません。国内で苦戦するセブンイレブンは、ローソンやファミリマートにとっても再び経営革新しなければ生き残れないと背中を押す警鐘でもあるのです。

 だからなのでしょうか、セブンイレブン、ローソンが改めてセイコーマートとの競争に挑み、学ぶ動きが始まっています。

セブンは札幌に全国初の店舗

 セブンイレブンが7月、札幌市で「全国初」の店舗を開きました。場所は札幌市中央区南7条西11。都心の住宅街です。店舗面積は200平方メートルと標準店舗の倍近い広く改装しました。

「全国初」を銘打つ理由は商品構成にあります。陳列棚に5300品目が並びます。他の店舗より700品目ほど多いそうです。北海道の道民の好みを考慮して、昆布だしの醤油ラーメン、魚介類の珍味を充実したほか、野菜・果物など生鮮類、冷凍肉や総菜、粉ミルクなど乳児向けと幅広い商品を加えました。東京などのコンビニは必要な商品だけを買いますが、北海道は車社会ということもあって一度にまとめ買いする傾向にあります。それだけ客単価も高くなります。品揃え、販売方法など店舗運営自体が「全国初」の試みとなるのです。

 セブンイレブンの創業者、鈴木敏文氏の発想から見れば、大きく逸脱します。経営効率を少しでも高めるため、全国一律の商品構成を貫き、大量仕入れによるコストダウン、無駄のない配送効率を実現して高収益を上げてきました。しかし、ここ数年はお客のニーズと合わず、店舗当たりの収益はローソンやファミリーマートなどライバルを下回っています。セブンイレブンの最強伝説はすでに過去の栄光です。「全国初」の試みを札幌市で実験した後、北海道内の6都市でも展開。その成果を参考に全国に広げる方針です。

ローソンは稚内で集中出店

 ローソンは稚内市で挑戦中。稚内市は北海道最北端にある3万人の都市で、セイコーマートが18店展開する独占地域です。ピーク時の5万5000人からほぼ半減しているうえ、物流効率の悪さもあって全国チェーンは収益を見込めないため、出店していませんでした。

 ローソンはあえて2023年8月に進出しました。すでに7店まで広げましたが、2025年6月には3店を同時に開店しました。インバウンドなどの観光客需要も伸びており、店舗運営に自信を深めたようです。北海道新聞によると、ローソンは「地方出店のモデル」と評価しているそうです。

 セイコーマートの強さは、お客さんのニーズに合わせ店舗運営を変える軽いフットワークにあります。店員の対応は全国チェーンと違ってマニュアル一辺倒ではなく、近所の商店の空気を醸し出します。総菜やパンなどを店内調理する「ホットシェフ」、ワインの充実などコンビニの常識を超えるサービスに先鞭をつけ、それを見たセブンイレブン、ローソンが追いかけるパターンです。

 セブンイレブンは経営不振の足元をみられ、カナダのコンビニ大手から買収提案されていました。提案そのものは撤回されましたが、セブンイレブンの経営改革はまだ何も進んでいません。札幌市での「全国初」の試みは一例に過ぎませんが、ローソンと同様に北海道内でセイコーマートと競いながら、経営改革のヒントを発見するはずです。

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