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アウトドアのスノーピークが業績を下方修正 ソロキャンプして焚き火を見つめる時かも

 「スノーピークって、おもしろいなあ」。いつも注目している企業の一つです。初めて店舗を見た時は日本のアウトドア用品店と雰囲気がまるっきり違っていたため、海外のブランド店と勘違いし、その後で新潟県三条市が創業地と知っって2度びっくり。以来、ショッピングモールで店舗を見つけたら、店内をぐるりと回り、アウトドア用品の売り方をチェックします。店舗のコンセプトはアウトドア用品を販売するというより、アウトドア用品を使ったライフスタイルの提案。モノからコト、サービスのソフトウエアを創り上げるマーケティングがこのまま成功するのかどうか。とても興味ありました。

パタゴニアと対極な味わい

 長野県の白馬村に行くと、必ず立ち寄るのが「パタゴニア」と「スノーピーク」。両店舗の味わいが対極的で、面白いのです(注;個人的な感想です、以下も同じ)。白馬地域は夏季も冬季も国内外から多くの観光客が集まる国際リゾート地。雪質の素晴らしさからオーストラリアなど海外のスキー客も多いので、アウトドア用品の有力なブランドの店舗があちこちに点在しています。高価なアウトドア用品が売れるのでしょうね。いずれの店舗もいつも以上にブランドの差別化に力を入れており、自社ブランドが放つオーラをすごく感じます。

 とりわけ、パタゴニアは環境や社会などを重視するESGの考えを徹底しています。店舗の陳列棚には商品に織り込まれたパタゴニアの哲学が並んでいるようです。店員のみなさんも気合いが入っているのか、あまり笑いかけてくれません。誤解しないでください。私は古くからパタゴニア・マニアです。スキーや登山に使うウエアや用品を恥ずかしなるぐらい購入していますし、30年以上も前に購入したシンチラフリースを今も着てきます。白馬の店舗は空気が重くて、スタッフさんと話しても楽しくなさそうなだけです。

 スノーピークはパタゴニアから歩いて5分ぐらいの場所にあります。ここは開けっ広げ。白馬村を取り巻く山々がひと目で見渡せるテラスがあり、まるでスターバックスみたい。店内はアウトドア用品店の商品棚というよりは、おしゃれなブティックのように陳列されています。店員さんも、お客さんが商品を見て回っているのを目で追いかけるようなことはしません。店舗の近くに温泉があるので、アウトドア用品店というよりは、道の駅を歩いている雰囲気。

売上高は10年間で7倍に

 それでもスノーピークの業績は右肩上がりで伸びていました。売上高はこの10年間で7倍も伸びています。金属加工の産地で知られる燕三条地域が創業地ですから、金属製のキャンプ用品はデザイン、使い勝手が洗練されています。シンプルで自然な発想で製作するブランド品が若い層を中心に訴求した結果、アウトドア以外でも衣料品など生活全般にブランドが浸透しています。海外展開にも力を入れているので、より海外テイストの製品やマーケティングの色合いが強まり、それがアルペンなど他の競合店との差別化に効果を挙げているのでしょう。

 しかし、その成長に急ブレーキがかかりました。23年期上半期の1−6月期は売上高が前年同期比16・3%減の131億円、営業利益が80・5%減の5億円弱と予想以上に悪化しました。通期予想も大幅に下方修正しました。2023年12月期は当初、これまでの好調な勢いを反映して売上高360億円、営業利益50億円と予想していました。下方修正した見通しは売上高278億円、営業利益は11億円弱。下半期も上半期の勢いを取り戻しのは難しいと判断し、同じ厳しさが続くと読んでいますが、できるだけ業績を回復しようという気合いが加味された半期見通しですから、2023年12月期を締めた段階はもう少し厳しい数字が並ぶ可能性もあります。

急ブレーキの理由は需要の見誤りか

 この急ブレーキの背景は業界も含めて需要を見誤ったと説明しており、成長の勢いには自信を見せています。予想を下回る売れ行きによって在庫処理による損失が増えているのは事実です。アウトドア用品の市場動向を見ると、日本はソロキャンプを広めたタレントのヒロシさんがテレビ番組を持つほどキャンプ人気が高まり、まだまだ根強い需要が見込めます。海外でも日本を訪れた観光客がスノーピークブランドを知り、購入しており、今後のインバウンドの勢いを考えたら、そう心配することはないでしょう。

 地方創生をキーワードに全国の自治体とも連携を深め、販売以外でも事業の裾野を広げるインフラが整っています。星野リゾートのビジネスモデルを彷彿させます。

 売り上げ減の一因として前社長の突然の辞任の影響を指摘する声もあります。1年前の2022年9月21日、山井梨沙社長は既婚男性との交際及び妊娠を理由に辞任しました。スノーピークは、シンプルで自然とともに暮らすイメージを纏ったブランドですから、企業イメージに損失を与えたと説明します。確かに日本国内の売り上げは2022年9月以降、月別で見ると落ち込み幅が大きい時もありますが、海外も同じ状況です。突然の辞任が影響したのかどうか。

経営計画と現実がミスマッチしていないか

 むしろ、日本国内、海外いずれも売れ行きが前年同月実績を下回る傾向が鮮明に出ているのが気になります。ここ10年間の成長ペースが速すぎて、実際の事業の勢いと経営計画がミスマッチしているのではないでしょうか。日本国内から海外へ飛び出し、世界ブランド「スノーピーク」を目指す気持ちはよくわかります。

 ただ、急激な企業成長はヒト、モノが追いつかず、結局はカネを失う事業構造に陥る落とし穴が待っています。スノーピークの企業の実力はどの程度なのか。経営計画を見ていると、経営コンサルタントが描いたと勘違いするほどよく出来上がっています。一度、冷めた目で自社の実力を見つめ直してはどうでしょうか。

 大きなテントの下に立派な家具が配置されたグランピングで美味しいワインや料理を楽しみながら、経営計画を眺めるとどうしても余計な勢いがついてしまいす。久しぶりに焚き火を見ながら、時々星空を眺めるソロキャンプに向かう時があっても良いかもしれません。

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