• ZERO management
  • カーボンニュートラルをZEROから考えます。

スバル「LAYBACK」創立70年目の新車 世界のEV市場で生き残る試金石に

 スバルが2023年7月、創立70周年を迎えました。その2ヶ月後の9月7日に発売された新車が「LAYBACK」。車体の一部をチラ見せするティザー広告がすでに公開されています。創立70周年記念とタイミングを合わせているのですから、これからのスバルを担う新車だと考えて良いはずです。

レヴォーグ+アウトバック

 「LAYBACK(レイバック)」はスバルの主力車「REVORG(レヴォーグ)」をSUVに仕様変更しており、同社のSUVを代表する大型車「OUTBACK(アウトバック)」をレヴォーグサイズの中型車クラスに仕上げています。開発コードは「レヴォーグ・アウトバック」と呼ばれていたそうですから、両車の特徴の「良い何処どり」したクルマ、つまりレヴォーグ+アウトバック=レイバックという車名が設定されたのでしょうか。ただ、基本車台はレヴォーグなので、正式車名は「レヴォーグ・レイバック」となったのでしょう。

 レヴォーグは走行性能が抜群。スバルの個性である水平対向エンジンにターボチャージャーを取り付け、フロントボディーにはターボに燃焼空気を吹き込むエアインテークの口がパカっと空いています。スバルといえば4WD(四輪駆動)と誰もが連想する吸い付くような路面走行を味わえますから、日常生活に使う乗用車でありながらドライバーは「走り屋」気分も体感できるユニークなクルマです。

 もう一つのアウトバックは、米国で現地生産するSUVの人気車種。日本でも高い評価を集め、発売当初は車を十分に揃え切れないこともあって広告を控えていたほどです。車名の由来となる「アウトバック」は人が住まない荒地、未開地を指しており、オーストラリアでは砂漠の向こうにある内陸奥深い土地を意味します。オーストラリアへ「アウトバックへ行ってくる」といえば、かなりワイルドな印象を撒き散らす気障な男性と思われるでしょう。

 レイバックはレヴォーグの走行性能、アウトバックの高い走破性を体現する新車になるのでしょう。中型SUVは世界で最も売れている車の領域です。電気自動車のテスラが販売するSUV「モデルY」は世界で最も売れている単一車種です。レイバックは日本向けに開発したとクロスオーバーモデルと説明していますが、きっと近い将来はモデルYや世界のSUVと競合する車として再登場します。

唯一の残念は車名!?

 しかし、車名だけは首を傾げてしまいした。英語で「lay back」はゆったり、リラックスという意味がありますが、さまざまな意味合いを含んでいます。フィギアスケートではのけぞるポーズ「イナバウアー」のイメージですね。「アウトバック」のバックを活かしたつもりかもしれませんが、全く迫力が違います。レヴォーグの「レ」も由来しているのかもしれませんが、こちらもレヴォーグらしい走行性能を連想する社名にはならない。日本向けSUVと説明していますから、「レイバック」で貫き通すのでしょうが、せっかくアウトバック、レヴォーグの良い何処どりをしたのに車名でイメージを消し去ってしまうなんて・・・。久しぶりに「スバルなら、やっちゃうんだよなあ」という言葉が出ました。

 スバルに社名を変更する前の「富士重工業」時代は、自動車メーカーというよりは機械メーカーの発想で新車開発していました。車としての機能は他社に負けない、むしろ勝るのですが、車体デザインがあまりにも個性的。てんとう虫と呼ばれた「スバル360」の素晴らしいデザインを思い浮かべる人が多いと思いますが、あれは例外。わざと無骨に仕上げたとしか思えないデザインが主流です。このスバルらしい的外れがまた魅力でしたが・・・。

テスラのモデルYなど勝負できるか

 もっとも、最近のスバルは的を外さず、SUVで確実にヒットをかっ飛ばしています。米国で最も売れているスバル車「フォレスター」はじめ「XV」や「クロストレック」など中小型のS UVは日本でもかなりの強さを発揮しています。ある営業担当者は「SUVの使い勝手を知ったトヨタやホンダのお客さんがスバルへ流入し始めています」と喜んでいました。

 スバルは今後、電気自動車(EV)の投入を本格化します。主力は当然SUV。第一号のEVとして「ソルテラ」が昨年発売されましたが、こちらは最初の第一歩。レイバックのみならずフォレスター、アウトバックなどが新たなモデルになって近い将来、EVとして登場するはずです。

 テスラの最量販車「モデルY」と価格差があり、まともに競合するかどうかわかりません。ただ、スバルの顧客はテスラと同じ富裕層で重なります。スバルの最大の個性であり、強みである水平対向エンジンを搭載しないEVとして、テスラや中国BYDとどう競い合うのか。楽しみです。

 「レイバック」はコンセプトや走行性能を考えれば、着実に売れる車です。その成果をどうEVに反映するのか。スバルの次の70年を占う車です。

◾️ レイバックの写真は関連資料から引用しました。

関連記事一覧