車戯画・ソルテラが照らすスバルの未来(3) トヨタを離れ、ホンダ、アップル視野に世界へ
電気自動車ソルテラ試乗をきっかけにスバルの未来を書き綴っていたら、遊び心が再び騒ぎました。連載「ホンダが消える」シリーズでも挑んでみた「スバルの近未来」を透視してみたいと思います。鳥獣戯画を倣い、車戯画の塩梅で「スバルがこんな自動車メーカーになったら、うれしい」を綴ります。以下は、巻物の戯画を捲る気分でお読みください。
富士重時代から技術志向、世界戦略は?
以前にも書きましたが、スバルは富士重工業時代から技術を極めることに専念するあまり、ホントはかなり過激な形容詞を付けたいほどですが、経営戦略と縁がない自動車メーカーです。優れた技量を持つ職人さんが日産自動車をパトロンに戦時下の中島飛行機次代に生産した「零戦」「隼」のような車を再現したいと思ったら、わかってもらえずに日産を離れ、GM、次いでトヨタ自動車とお金持ちの後ろ盾を求めて渡り歩きました。いすゞ自動車との米国の合弁生産も渡りに船のような気持ちで決定したのが舞台裏の実情です。
ご存知のようにパトロンは雇った職人さんの気持ちをそんなに察しくれません。GMの場合は英語が障壁となって、それを好都合に知らないふりができましたが、トヨタとの資本提携では通用しません。ただ、トヨタの場合も経産省が産業政策の一環としてスバルとの提携を持ちかけたこともあり、トヨタ自体が心底スバルの技術を欲しいと思っているわけではなかったはず。だから、スポーツカーを共同開発した後の提携効果は続かず、ハイブリッド車の導入にもスバルは腰が引けていました。スバルにとって、創りたい車を支える経営の信用力が欲しかっただけですから。
しかし、地球温暖化に直面する世界経済はスバルのわがままな思いを許しません。ドイツのポルシェにも負けない自負を持つ水平対向エンジンはマツダのロータリーエンジンとまでいきませんが、燃費効率は決して優れていません。スバルのファンは燃費にこだわりません。しかし、排ガスの抑制、脱炭素の流れは内燃機関エンジンの未来そのものを消してしまいました。
電気自動車も積極的だったとは思えません
ソルテラをトヨタと共同開発するまでの胸の内を勝手に察すると、開発陣から疑問の声が出ていたと思います。電気自動車やハイブリッド車の技術で遅れているとはいえ、走って楽しいクルマを開発する技術とノウハウはスバルが上回ると信じていたからです。トヨタと共同開発したスポーツカー「BRZ」を例に振り返ると、開発や販売の現場からトヨタの後塵を拝するといった思いは微塵も感じられません。経営規模、顧客層などメーカーが抱える販売手法の違いを考慮する必要はありますが、スバルならではの世界を築いた自信の裏返しでもあります。