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内部告発と破壊を変革の力に②ツイッターと東芝、独裁か呉越同舟、生き残るのはどっち

 米タイム誌の「Person of the year」で2021年末に表紙を飾ったのはイーロン・マスク。電気自動車(EV)のテスラーを創業して世界のEV市場を席巻。民間宇宙航空会社のスペースXも事業を軌道に乗せました。いずれも「できるわけがない」と揶揄されながらも、予想を上回るスピードで事業を拡大、見事大成功へ導きました。ビジネスの常識を打ち破る「Disruptor(ディスラプター)」の象徴です。(すいません、今回は敬称を略します)

21年の表紙を飾ったイーロン・マスクはツイッターの経営改革に

 マスクは、2022年に入っても渦中の人物です。世界一の富豪として自らの巨額資産を使ってSNSのツイッターを買収し、民主主義にふさわしいメディアをめざして経営改革に取り組んでいます。と、ここまでは美しいストーリーでした。マスクは、ディスラプター。既存の産業やビジネスを打ち壊して、誰も驚く事業を立ち上げる才能の持ち主。テスラやスペースXを成功させたからといって、輝かしい成功を成し遂げたタレントが企業再建に直結すわけではありません。

 とりわけツイッターは創業当初から経営には四苦八苦していました。創業者のジャック・ドーシーもSNSのインフラとして自信を持ちながらも、経営の先行きに自信を失っているかのようでした。ツイッターCEOに就任したマスクは7500人の従業員を大幅に解雇するほか、従来の広告収入に依存しない経営モデルを改めようとします。

 キャッシュフローを改善しようと多くの部門を整理するのですが、事実と反した情報などをチェックする部門を解消したり、マスク批判の記者のアドレスを停止するなど逆に広告主の離反を招きます。「操縦桿が効かない飛行機に乗って落下しているようだ」。思ったように経営改革を実行できない胸の内を米メディアに吐露しています。

破壊者が経営再建できるか

 ついにというか予想通りというか、経営を手放すポーズを見せます。天才は気まぐれです。ツイッターのユーザーの投票で辞任が多数を占めたら、CEOを辞任すると言明しました。投票結果はNO。

 ところが案の定というか、後任が定まりません。元CEOで創業者のジャック・ドーシーや、フェイスブックの元COOでナンバー2だったシェリル・サンドバーグが候補に上っています。登場するのは昔の名前ばかり。以前に別の記事でも書きましたが、シリコンバーレーも人材不足。

 マスクの自由奔放な発言と経営手法がツイッターの経営を根幹から揺さぶり、SNSのインフラストラクチャーとして定着していた将来を危ぶむ声も出ています。ただ、注目したいのは、ツイッターがこの大騒動の中で経営再建の最適解を探す努力にツイッターユーザーも含め多くの人間が関わり、批判し、蛇行しながらも前進していることです。

ツイッターと対照的な経営再建が東芝

 右往左往する経営再建に取り組むツイッター。その先輩が日本にいます。東芝。ただ、イーロン・マスク流経営再建を独裁型で進んでいるツイッターとは全く対照的です。いつから始まったのか思い出すのもうんざりするほどだいぶ前から経営再建が二転三転してきましたが、何も決まらず経営陣は事実上、放り出しています。ファンドとのむなしい交渉、上場を維持するのか非上場の道を選ぶのか。直近では日本の有力企業が出資して株式市場から降りて再建する方向で進んでいると伝わっています。

 東芝は電力や鉄道など社会インフラの事業を抱えているほか、グループには半導体のキオクシアもあります。日本経済にとって重要な企業グループというわけです。しかし、出資する企業はJR、電力、自動車など幅広い産業にわたり、よく言えば日本経済が全員野球方式を選んで東芝を再建する形です。

呉越同舟で船長が何人も

 しかし、実態は呉越同舟。東芝の経営は誰がリードし、責任を持つのかが見えません。船長がいるのか、それとも船長が10人ぐらいいるのか。経営再建の幟を立てた船が山に登る可能性すら感じます。東芝の再建が進み始めたとしても、どんな経営改革ができるのでしょうか。国も含めた利害関係者、ステークホルダーが多すぎるため、大胆な決断ができるとは思えません。出港の汽笛ばかりが鳴り響き、スクリューは空回りするだけ。

 企業再建をがひと筋縄で進まないのは承知しています。最優先しなければいけないのは、この企業は存続する価値があるのかを見極めることです。そこがスタート地点。存続する価値があるなら、生き残るに必要な強さをより強くする。そして不要な部門は切り捨てる決断力が不可欠です。

何もせずに朽ちるのか、大胆な決断で活路を見い出すのか

 ツイッターの経営再建で演じるイーロン・マスク流が日本で再現されたら、かなりの批判を浴びるかもしれません。ディスラプターが評価される米国だからこそ、横暴ともいえる強引な経営改革が実行できるのです。

 この才能が今の日本にも必要です

 なぜなら、東芝の再建劇をみていると、衰退する日本経済と二重写しになるからです。1990年代から何も変革できず経済成長も年収も横這いのまま。歳月を無駄に費やしています。高度成長期の成功体験を忘れらないまま年齢を重ね、地盤沈下が加速しているにもかかわらず、目の前の酷い現状を直視しない。少子高齢化社会は、経済の活力を確実に奪っています。

 企業も人と同じ。日本の変革にはやはりディスラプターの野蛮さと知性の両方を兼ね備えた人物が必要なのです。

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