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米スーパーマーケットのホールフーズ やっぱり違う ヨーカ堂、イオンがんばれ

「アマゾンはいろんな企業を買収しているが、あの買収は本当に良かった案件ですよ」。アマゾンのある幹部と話していたら、嬉しそうに話していたエピソードが忘れられません。米国のスーパーマーケット「ホールフーズ・マーケット」です。

入店した瞬間、空気が違う

 「やはり、違うなあ」。最近、米国のホールフーズを訪れ、店内に入った瞬間の印象です。日本や米国などのスーパーに比べても、店内を流れる空気が違うのです。「セーフウエイ」「ターゲット」など大手チェーンに比べて狙っている客層はかなり所得が高いため、店頭に並ぶ野菜、惣菜、ワインなどは割高ですが、すべてが新鮮で色艶も良く、健康志向を明確に打ち出しています。店内をスッと通り抜けるだけで陳列、通路、品揃えなどに見入ってしまいました。

 日本のスーパーマーケットと比較すれば、紀ノ国屋、成城石井、クイーンズ伊勢丹、三浦屋などが思い浮かびますが、ピッタリとハマる店舗イメージではありません。日本と米国の国土の違いもあって、店舗の規模などで単純に優劣を見ても意味はないと思います。ただ、ホールフーズを初めて訪れた印象を何度か反芻していると、「こんなスーパーが近所にあったら、うれしいなあ」という思いは消えません。もちろん、陳列棚に並ぶ商品の質が違うので、割高になります。実際に買うかどうかは別にして、スーパーマーケットのウインドウ・ショッピングも楽しいかなと思います。

客は高所得層が中心

 訪れたホールフーズは米国西海岸でも高所得層が暮らす都市として知られ、店舗は街の中心部にあります。周辺の街区はオフィスビルの他にオシャレなお店やマンションが立ち並んでおり、東京で例えれば恵比寿のようなイメージでしょうか。

 改めて店内を見学します。緑色に輝く「Whole Foods Market」がドンと正面に掲げられた店舗のドアを開けると、視界は思ったよりも広く、店内の真ん中あたりまで見通せます。買い物かごはドア横にありますが、視線の真正面にはかぼちゃなど野菜がずらりと山積みされています。カボチャはいろんな種類が積まれており、どれも表面がピカピカ。美術館のオブジェのよう。「本当に食べられるのかな?」と疑いたくなるほど。

 まず商品棚のレイアウトに視線がロックオン。店内を一望できるよう配置され、商品棚の高さも店内奥を見通す邪魔にはならない低さに設定されています。キョロキョロしながら、店内を歩くと、あそこにパン売り場があって、左手にサンドイッチ、サラダ、お寿司、調理済みパスタなどの惣菜売り場が、ちょっと奥にはワイン売り場か、という具合にいろんな商品棚が視界に入ってきます。

 日本でいえば丼サイズの紙箱を持って、調理済みパスタ、ライス、フルーツなどを盛り付けるコーナーもありました。ここで食べたい食材を盛り付けて箱詰めした後、自宅に帰ればすぐに食事できる感じです。北海道でよく見かける「勝手丼」に近いですね。

 オレンジジュースが欲しかったので、店内のスタッフに場所を聞いたら、「この通りをまっすぐにいけばありますよ」と教えてくれました。「スーパーの店内をまっすぐに行けばって大袈裟だなあ」と笑っていたら、本当にまっすぐに歩き続ける感覚の距離ぐらい離れていました

レイアウトに心打たれる

 圧倒されたのは飲料の種類と量でした。ワインやビールは、日本の量販店を軽く上回る品揃えでした。店舗にすっぽりと酒販店を丸呑みしたイメージです。オレンジなどフルーツジュースも豊富で、さまざまな果物のミックスでお客の好みに答える陳列です。牛乳、チーズなど乳製品は右から順に飲んで食べたら、何ヶ月かかるかなと考えるぐらいでした。ドリンク類は店内の奥にあるため、陳列棚の高さも天井に迫るほどでした。

 店舗の中ほどまでは店内を見渡せるように設計し、店内の奥は高いケースに変えて量と質をふんだんに見せつけるレイアウト。店舗が広いからできることなのでしょうが、日本で経験しない体感でした。

 イトーヨーカ堂やイオンも品揃えは豊富ですが、同じような陳列棚がずらりと配置されるか、うず高く積み上げた商品棚が壁のように立っている店舗が目につきます。レイアウトの前提がスーパーマーケットは毎日のように通うお客さんが相手。商品はどこに何があるのかわかっているということなのでしょうが、それではお客さんはお目当てのモノしか選ばず、「今日はこんな商品が売っている」というエンターテイメントの要素がスポッと抜け落ちしています。

 広い店内を歩き回り、新しい発見にワクワクする買い物。有機野菜など健康に配慮した品揃えや商品表示などホールズフーズの凄さは多く語られていますが、品揃えに汲々としている日本のスーパーマーケットが最も学ぶ点はワクワク感ではないでしょうか。商品戦略がコンビニの強い影響を受けたため、効率重視に走り、買い物する楽しさを売ることを忘れてしまったのかもしれません。

歩き回り、発見するエンターテイメントも売る

 個人的に気に入ったのはレジです。セルフの他にレジスタッフによる精算コーナーもありました。10台ぐらい揃えており、精算するお客はコーナーの入口に並んで精算レジが空くのを待つスタイルです。お客のほとんどはセルフに行くのかと思っていたら、レジスタッフのコーナーもお客さんでいっぱい。精算が終わったレジは、マイクで「5番へ」と呼び出してくれます。買った食材は、2枚重ねの手提げがついた紙袋に詰め込んでくれます。結構な重さでも大丈夫ですし、デザインもなかなか。日本の中途半端なレジ袋を考えると、なんか良いですよ。

 日本の場合、一列に並んだ精算レジにそれぞれ並びますが、スタッフの技量やお客さんの買い物量によってレジごとに列の長さ、精算の待ち時間が変わります。どのレジが早く終わるのかとスタッフの技と並んでいるお客さんのカゴの量を見極めてレジを選んだはずが、予想に反して精算レジの遅さにイライラする経験を持っている人が多いと思います。ホールフーズの方式は日本の家電量販店などでも採用しており、驚くアイデアはないのですが、なぜか日本のスーパーマーケットでは採用されていません。この日米の差はなぜなのでしょうか。

 最後にホールフーズの歴史を簡単に。1980年にテキサス州オースティンで、個人営業の自然食品店として創業。健康に配慮した品揃えがウリだけに、全米展開するうえでも高い所得層が集まる都市を選んでいます。2017年にアマゾンが137億ドルで買収し、話題になりました。書店のネット通販でスタートしたアマゾンが割安さだけでなく、対面販売のノウハウなどをホールフーズから取得するのが目的といわれました。

購入実感、割高じゃないですね

 ちなみにホールフーズは割高だから、高所得層が顧客と言われていますが、実際に朝食や夕食の食材として1週間程度購入した経験からいえば、「高い!」という印象はまったくありません。日本でいう「街中華」的な地元の店で食べた場合と比較しても、割安です。1回の外食分の費用で2食を賄えるイメージですね。

 日本に進出したら、高級スーパーと呼ばれるチェーンはかなり動揺するのではないでしょうか。

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