自動車、不正認証でも安全なら、ついでに車検も見直して
自動車業界の不正認証を巡る議論を眺めていたら、ふと気づきました。「車検」も同じじゃない。自動車の量産に欠かせない「型式指定」について四輪車・二輪車の5社が認証試験で不正を働き、取得していましたが、トヨタ自動車の豊田章男会長は認証基準より厳しい条件で試験しており、「安全に問題はない」と言明します。ホンダやマツダの社長も記載の問題について謝罪しながらも、クルマの性能に支障はないと主張します。豊田会長は認証制度の見直しにも言及しました。
車検も変わって良いはず
国の認証制度に頼らなくても良いほど車の安全性、性能が達成されているなら、ついでに車検制度の見直しを議論しませんか。自動車はエンジン車からEV(電気自動車)へ移行する100年に一度の変革期を迎えています。この際、過去の遺物は一切合切まとめ、「古い時代遅れの考え方」として捨てましょう。
「車検」。車を保有している人なら、説明は不要でしょうが、改めて確認します。安全に走行できるかどうかの保安基準に適合しているかをチェックする制度で、正式名称は「自動車検査登録制度」。乗用車の場合、新車登録から3年後、以後2年ごとに車検しなければ公道を走ることができません。トラックなど貨物車は車種によって異なりますが、毎年車検が原則です。
車検は世界で最も信頼される日本車の品質を支えてきました。日本の車オーナーは、世界でも最も厳しいといわれ、かつて納車時にボディに傷一つでもあれば返品必至と言われたほどです。それが日本の自動車メーカーの品質管理を鍛え、安全で壊れにくいという高い評価を築き上げました。
車検は73年前にスタート
もっとも、現行車検の基本がスタートしたのは1951年。73年前は、車の技術は現在に比べればまだ未熟そのもの。耐久性の欠如や整備不良などによる故障も多く、安全に人を運ぶ品質を保証する制度として義務化されました。しかし、今や走行中に故障に襲われるケースはとても少なくなっています。車の保有者なら、新車で購入して3年、以後2年ごとに車検する必要があるのかと疑問を持つ人が多いのではないでしょうか。
一方で車検費用は負担が重い。車検サービスはさまざま形態が増えているので、負担額にばらつきはありますが、一回当たり10万円が目安かと思います。車検時に故障などで交換する部品がなくても、関連した諸税が加わり、車検の負担は変わりません。むしろ、メーカーのディーラーや整備業者のために定期的な仕事として確保しているのではないかと勘繰りたくなる時もあります。
日本は世界でも厳しい
世界の車検事情はどうでしょうか。クルマ文化の米国では一部の州を除いて車検はありませんし、ルールに厳しいスイス、世界最大の自動車市場の中国もありません。欧州ではドイツ、フランス、英国、スペイン、イタリア、スウェーデンなど自動車産業が盛んな国に限られています。必要な経費の負担も日本ほど重くありません。
トヨタなど日本の自動車業界は型式指定制度で不正認証しても、安全性を担保できると自信満々に語っています。世界に冠たる高い品質を疑う気はありません。1980年代からの日本車の国際競争力が実証しています。型式認定制度が時代にマッチしなくなっているなら、もう70年前の車検制度も時代から取り残されているのは間違いないでしょう。車検制度が大幅に変われば、自動車の需要も変わります。
一緒に変革しましょう
ましてエンジン車からEVへ切り替わる今です。車検制度が今のままで良いわけがありません。ついでで良いですから、自動車各社の皆さん、車検制度も議論の材料に加えてください。国土交通省も耳を塞ぐことはないでしょう。それとも車検制度を必要しているのはやはり自動車産業ですか。そこは100年に1度の変革期です。勇気を持ってユーザーと一緒に変革に挑みましょう。