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台湾ヤゲオ、芝浦電子を買収 電子部品でも追い抜かれるか日本!?

 台湾電子部品大手の国巨(ヤゲオ)が芝浦電子をTOB(株式公開買い付け)で買収しました。買収交渉は紆余曲折がありました。発端はヤゲオが提案。芝浦電子が反発したことで、ミネベアミツミが名乗りをあげ、合意に向かうかと思いましたが、ヤゲオが巻き返しに成功しました。

 芝浦電子は電子機器に重要な温度センサーに強く、自動化などで需要が増える電子部品の開発に欠かせない重要な技術です。ヤゲオは広範に展開する電子部品事業に組み込み、電子部品王国の日本を追撃するでしょう。かなりの脅威です。かつて日本が世界市場の過半を握った半導体は今や、台湾TSMCが世界トップの座にあります。ヤゲオは電子部品で日本を抜き去り、第2のTSMCに躍り出るのでしょうか。

第2のTSMCに

 ヤゲオは芝浦電子の完全子会社化を目指しており、芝浦電子は2026年1〜3月期までに上場廃止になる見通しです。買収総額は約1090億円。

 ヤゲオは1977年に設立され、世界有数の電子部品メーカーとなっています。事業分野は抵抗器、コンデンサ、インダクタ、トランス、リレー、アンテナ、無線部品、回路保護部品と広範に渡っており、チップ抵抗器、タンタルコンデンサで世界トップシェア。パワービーズとモールド、MLCCとインダクタでも第3位のシェアを握っているそうです。

 広範な電子部品を扱っているだけに、取引先は宇宙、自動車、5Gなどの通信、産業機械、医療、IoT、電力、コンピュータ周辺機器、家電などほぼ全産業に及んでいます。世界に販売、生産、研究開発の拠点を構えており、従業員数も35000人。

 一方、芝浦電子は1953年、サーミスタと呼ばれる温度変化で反応する電気抵抗の製品で創業しました。得意の温度センサーはハイブリッド車など自動車、エアコンなど空調機器、家電製品と幅広い分野で温度計測や機器制御に利用され、技術力は世界でもトップクラスと評価されています。無駄なエネルギーロスを抑える神経細胞のようなものですから、地球環境の温暖化防止に向けて進化する機械製品に欠くことができません。これからもっと応用される分野は広がるでしょう。世界シェア13%を握っていることもあって、この4年間の決算をみても営業利益率は12〜18%で推移しています。

自動化の波に乗って相乗効果

 ヤゲオと芝浦電子の相乗効果は十分に期待できます。販売先である宇宙、自動車、産業機械、電力、情報機器は今後、生産工程はもちろん、機器の自動化が加速します。人工知能を内蔵してあたかも人間が指示を出すかのように機能します。生産工程や機器が環境変化を敏感に反応しながら、正しく性能を発揮するためには温度センサーなど制御部品の精度がカギを握ります。ヤゲオは文字通り、芝浦電子の技術を飲み込み、それぞれの事業にDNAとして移植するはずです。

1980年代、日本のエレクトロニクス産業は世界市場を押さえていました。半導体は世界トップシェアを握り、電子部品も村田製作所やTDKが大躍進していました。しかし、半導体は日米との貿易摩擦によって手足を縛られたまま、サムスン電子など韓国勢との投資競争に敗れます。その韓国勢は受託生産からスタートしたTSMCによる追撃に負け、世界一の座を奪われました。日本の半導体はといえば、半導体復興にむけてTSMCの支援に頼っている現状です。

 半導体は凋落しましたが、電子部品はまだ健在です。村田やTDKなどは技術開発でも世界の先頭を走っています。しかし、ヤゲオが芝浦電子を取り込みながら、電子部品の品質、開発を加速すれば村田も危うい時が訪れるかもしれません。ヤゲオが芝浦電子の買収で後出しジャンケンを挑んだミネベアミツミの提案に諦めず、買収成功に燃やした執念は見事です。

 といっても、電子部品は日本の製造業にとって最後の牙城。村田、TDK、がんばれ!!!

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