蕎麦 まいて粉挽くまでの楽しみ

  大谷洋樹の岩手の風

 昨秋収穫したソバの調製作業たけなわです。新そばも年越しそばにも間に合わず、年を越してしまいました。刈り取って干したソバの束を道具でたたいて実を落とし、草や土塊などごみを除いた後、挽いて粉にします。

「畑ありませんか」と相談

 春に知り合いの農家さんに「畑ありませんか」と相談したところ即座に耕作していない畑を紹介してくれました。東京から岩手県盛岡市に移り住み20年近くの私は、その農家さんとのおつきあいも長いです。広さは2畝(約200平方㍍)ほど。

 昔は挽き臼を使いましたが、どこの家にもありません。家電量販店に行くと、刻む、する、くだく、挽くなど7つの機能がある優れもののミルサーがありました。一度に挽ける量が少なく効率は悪いですが、仕事をしてくれます。ソバ用のふるいにかけて、しあげます。 

 山に暮らす人から「目がかなり細かいふるいがよい」と聞きました。実をミルサーに入れて挽くと茶色の皮と粗い粉、細かい粉が混ざっています。それをふるいにかけ、網に残る皮を風選して除き、また挽きます。この作業を数回繰返すと選別されたそば粉が少しずつ積み上がっていきます。多少手間がかかっても自分なりに工夫して食べられるようにする楽しみがあります。畑を手当してくださった農家さんはもちろん、知り合いにさしあげます。

種まき、霜の時期から逆算して

 ソバは霜にあたると実がぽろぽろと落ちてしまいます。そこから逆算して天候をみながら種まきの時期を探るのも楽しいです。収穫まで75日といわれ、救荒作物として大事にした地域もありました。

 種まきは7月末ごろから。ところがその頃かつてないほど雨が降りません。地域の人からまいてもカラスに食べられるとの助言で、はやる気持ちを抑えるのにやっと。時期を少しずらし2回に分けてまき、1回目はまく直前にざあーっときて胸をなでおろしました。

 収穫は私が手刈りしていたのを見かねた農家さん、手際よく草刈り機で刈り取ってもらいました。昔は刈り取ったソバを結束していくつも立て天日干ししました。その覚悟でしたが農家さんから「農業用ハウスを使って」と助け船。風通しのいいよう束を地面から浮かせて並べました。外気にさらされず作業できます。さらに「製粉機をもっている人がいますよ」と力強い言葉。

よそ者を見守ってくれる人たちに助けられ

 農業はド素人ですが、今はほとんどつくる人もいない作物だからこそつくりたい。そんなよそ者を温かく見守ってくれる人たちを感じながら口にできるところまでたどり着きました。さて味の方は・・

大谷 洋樹 ・・・プロフィール

日本経済新聞記者、生活トレンド誌編集などを経て盛岡支局長を最後に早期退職、盛岡市に暮らす。山と野良に出ながら自然と人の関係を取り戻すこと、地方の未来を考えながら現場を歩いている。著書に「山よよみがえれ」「山に生きる~受け継がれた食と農の記録」シリーズ。

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