• HOME
  • 記事
  • Net-ZERO economy
  • 原子力最中(モナカ)を食べたことがありますか 現場は津波による危険性を予見していた

原子力最中(モナカ)を食べたことがありますか 現場は津波による危険性を予見していた

福島第一原子力発電所の廃炉作業が遅々として進んでいません。震災当時、水素爆発や注水作業などを通じて原発の得体知れない複雑な構造だけが強く印象付けられたのではないでしょうか。私は福島第二の2号機格納容器内を見学したことがあります。当時、第一原発と第二1号機は運転開始し、2号機は運転開始に向けて仕上げている段階。3号機は建設途上でした。2号機は運開前ですから、放射能の危険にさらされずに格納容器に入ることができたのです。といっても米国GEから技術導入して建設した福島第一計画の延長線上にある第二ですから、格納容器の設計や構造はまだ発展途上。格納容器の内部は配管や設備が複雑に配置されており、炉内を動き回る動作はまるでジャングルジムの中を潜り抜ける感じでした。明るく内部がはっきり見ているにもかかわらず、説明してくれる東電職員の背を追いかけるためには手足や体をいろんな形に変える必要があります。震災時や廃炉で作業する困難さは想像をはるかに超えるものでしょう。

原子炉はエイリアンの女王の巣と同じ印象

原子炉そのものを見ることができました。思ったよりも小さい印象でした。どっかで見たなと思いながら、後で思い浮かんだのは映画エイリアンで描かれた女王の巣です。主人公を演じるシガニー・ウイーバーが女王の巣に近づき、女王と相対しますが、女王を包み守る巣と似ていると感じたのです。もちろん原子炉とエイリアンが得体の知れない怖さで重なったこともあります。その怖さを再び感じたのは「水」についてでした。使用済み燃料プールなど原子炉の制御で水は重要な役割を負います。「原発はフグの調理と同じ。とにかく水をたくさん使って安全性をコントロールする」とかなり乱暴な冗談を交えて説明する人もいます。そこで「水を循環させるポンプが壊れて制御する水が無くなった時はどうするのですか」と同行した東電職員に聞いたことがあります。「その時は海水注入です」。即答でした。「海水を注入すると原子炉設備が塩分でダメになってしまうので極力避けたいが、水がなくなれば制御不能になり、炉心溶解につながりますから」。続きがあります。「ただ制御ポンプの電源は無くなりません。この場所で発電しているのですから」。「でも送電塔が倒れたり、送電網が不通になることはあるはず」と聞き返したら、「発電所から電気がなくなることはありません」と強い調子で返されました。発電所=電気は無くならない、このイコールが理解できませんでした。しかし、東日本震災で制御ポンプが津波で停止しました。自衛隊のヘリコプターによる海水注入のシーンを覚えている方は多いはずです。40年近い前に素人でも思いつく疑問になぜ対応できなかったのか?危機想定がなぜ改善されなかったのか?

東芝の現場は津波による危険性を予見していた

東芝の親しい人が教えてくれたことがありました。GEが開発した原子力のBWRを技術導入する形で日本の原発、福島の原発は建設されました。米国は竜巻が多い国です。竜巻を想定したので、制御ポンプは地上に配置された。しかし、福島は津波に襲われる可能性が大きい。東芝の技術陣は津波を想定して制御ポンプを地上よりかなり高い場所に設置しようと提案したことがあるそうです。その時のGEの答えは設計変更になるが、日本は事故があった時の責任を取ってくれるんだろうねと言われ、やむなく設計通りの配置になったと語ってくれました。四半世紀近い前の原発関係者の内部のやりとりですから確認は取れません。しかし、不安を安心に変える時間は十分にあリました。現場を知る人間の声が経営トップに伝わらず、解決すべき問題を解決できない。日本が課題を解決できず凋落の道から脱せられない原因の一つです。

関連記事一覧

PAGE TOP