ブルーベリー染めに挑戦 落果をいかに消費するか ロボット採取の研究も知りました。
ブルーベリーを原料に使った染色に挑戦しました。野菜栽培でお世話になっている農家さんが主催したイベントに参加したのです。その農家さんは多彩な野菜を育てて直売や周辺の小売店に卸していますが、キウイ、ブルーベリー、ブラックベリーなど東京近郊で盛んな果物も育てています。農家として作物を生産、販売するだけでなく、野菜や果物を食べる私たち消費者に取り立てのおいしさや野菜がどんなふうに実るのかなどを知って欲しいとの思いから、家族で参加できる収穫体験や会員制野菜の栽培を手掛けています。東京など大都市で営農する課題に対して一つひとつ解答を探している姿勢にはいつも敬服しています。
野菜と果物の違いを知っていますか
ちなみに知っていましたか?。野菜と果物の違いを。特に定義は無いようですが、野菜は地面をはったり地中で育ったりするもの、果物は茎が固くなり木となって伸びた枝から実となったもの、だそうです。
さて染色です。初心者ですから、麻紐や木型、棒などを利用した絞り染めの手法に従います。素材は手軽に染められるシャツを選びました。今年春で会社勤めを終えましたので白いワイシャツを着る機会は無くなり、それに伴い白いシャツも活躍の場を失ってしまいました。もう10年以上も着古した白いシャツが何枚もあります。生地がヨレヨレになっているで雑巾ぐらいにしか利用できないかなと思っていました。サラリーマン人生と同じですね。歳月を経てヨレヨレになったら、もう雑巾掛けしかできないのかも・・・。いやいや、そんなことはないと思い直してブルーベリー染めで白いシャツをリフレッシュすることにしたのです。
染色に必要なブルーベリーは想像した量よりも多かったです。本格的な染色作業ではありませんので家庭ならきっと一個はあるポリバケツを使うのですが、シャツを浸す程度の染料の量、つまり浸す深さが必要です。タオルなら折り畳めるのでバケツの底に張り付けるイメージで染料を節約できるのですが、素材にシャツを選んだため、長方形や真四角の木型を生地と一緒に麻紐で縛り上げると全体の嵩(かさ)が大きくなってしまいました。亀甲縛りなんて高等テクニックを使えるわけがないので、自分なりにイメージした柄を染め込むためには木型を何枚も使ってブルベリー色に染める部分、染めずに白い柄が浮き出る部分を想像しながら縛り上げます。そうなるとシャツと木型でバケツ上部にはみ出るぐらいのスペースを使ってしまうのです。写真を見てもらうとわかりますが、染色するために必要なブルーベリーの染料の量は、シャツが吸収する染料分も考慮するとバケツの3分の1は必要でしょうか。
ブルーベリー染めですから、染料の原料はブルーベリーをそれなりの量を潰して染料の液体にします。実際の量はイベント主催者の農家さんが行ったのでわかりません。でも、バケツに入っている染料液を見ると、食べた方がブルーベリーのためになったかなという気持ちがちょっとだけ湧きました。
染めの時間は15分から20分です。浸している間も染料をしゃもじでシャツにペタペタと塗り付けたり、液体にしっかり浸るようにひっくり返したり。色合いを濃くしたい場合は、浸ける時間を延ばすそうです。ブルーベリーの染料に浸した後は、ミョウバンの液体にまた15分程度浸します。染めもミョウバンも同じ程度の時間感覚のようです。これでブルーベリーの染料が水で洗っても落ちにくくなるそうです。ミョウバンよりも鉄粉の酸化鉄の方が染め落ちを防ぐという話もありますが、酸化鉄を使用すると一瞬赤く染まったように見えるようなので色の変化がないミョウバンを選んだそうです。染めたシャツは写真の通りです。久しぶりの染色でしたが、イメージ通りです。インスタ映えはしませんが気に入ってい(笑)。
ただ、ブルーベリーから染色液を作るためにわざわざ収穫したおいしい粒々の実をどれだけ潰してしまうのかと思い、ちょっとだけ心が痛みました。ところがブルーベリーの畑に行って初めて気付いたのですが、実っている樹木の地面にはたくさんの実が落ちています。というのも、熟成した実は軽く触っただけでポロポロと落下してしまうことがあります。樹木の間隔はそれなりの距離で離しているとはいえ、収穫する時には枝葉は伸び、実も房のように育ちますから、収穫しようと樹木を縫うように歩くとおいしいと見える実は熟成が進んでいるので触るだけでポロポロと落ちてしまいます。ぶどうほど枝と実の接着度?が強くないんでしょうね。
ですから、収穫するために不慣れな私みたいな人間がブルーベリー畑に立ち入ると実を収穫しているのか、わざわざ実を落とすために歩いているのか分からなくなってしまいます。畑を歩き回ると、実を落とし、その実を潰してしまう悪循環です。「もったいない。もったいない」の繰り返しになります。
東京農工大はロボットによる採取を研究
先日、ロボット研究で最先端を走る東京農工大教授から開発の現状を話を聞く機会がありました。偶然ですがブルーベリーの採取ロボットのエピソードが紹介されました。ブルーベリーの実は熟成すると簡単に落下するので、採取作業を自動化するためには熟しているか未だ熟していないかを選別するセンサーを設置して、一つ一つ収穫していくそうです。想像してみてください。ブルーベリーの実は小さいです。人間の指でひとつ一つ採取しても、取り損なって落下させてしまいます。農家さんが教えてくれましたが、ロボットの視覚センサーが実の熟成度を見極めて採取するので見分けに時間がかかります。24時間稼働ぐらいの時間とコストを想定して研究開発しているそうです。そうなると人間の手で採取した方が簡単じゃないと思ったら、ロボットによる作業自動化の研究開発はそこで止まります。
農業シロウトとしては図らずも落下したブルーベリーを集めて染料など利用する手はあるかなとふと思いつきました。正直いうと、落下したといっても見た目は落下する前にブルーベリーと変わりませんし、味も変わらない気がします。むしろほどよく熟していています。落下した実を集めれば、個人的な趣味の染め物やジャム料理を楽しめる気がします。
「ブルーベリー畑に大きなビニールを敷くか、それとも傘をひっくり返して落下した実を集めて、完熟ブルーベリーとして売ってはどうか」のアイデアも浮かびました。もちろん、採取ロボットが軌道に乗ればブルーベリーの収穫には弾みがつきます。ブルーベリーは人気が高まる一方ですから、経営にもプラスになるはずと思ったのです。
こんな思いつきを農家さんと雑談したら、そうなるとブルーベリーの販売価格が下がることになりかねないと言います。ブルーベリーは健康食品として注目を集め、幅広い層で人気を集めています。直売場や小売店、スーパーなどで販売している価格でどの程度利益が上がっているかは不明ですが、今の価格から下がれば栽培農家はやはり厳しくなりそうです。ポロポロ落下した実を集めて安く売れば、農家もブルーベリー好きも万歳と思ったのですが、東京など大都市近郊の農家さんが栽培している作物の損益採算点は果物の廃棄が減れば供給が需要を上回って価格低下が始まる微妙な均衡点にあるのでしょう。
農業には大規模に栽培して大量販売する北海道型のような農家もありますし、小規模ながら特定の消費者を狙って栽培、販売して利益を確保する大都市近郊の農業経営もあります。大都市近郊の農家の方が大市場が近いので多種多様な作物を手掛けられ、収益を上げやすいと農業の専門家は言います。
しかし、天候に左右されやすく同じ時期に同様な野菜が集中しがちです。多種多様な作物を生産しても、価格の乱高下の宿命から逃れることができません。より特定な層を想定した個性的な野菜を生産するという動きもありますが、料理店以外でどの程度購入するのか。消費者の野菜・果物の知識、料理経験は思ったよりも乏しいと実感しています。「規格外」でも書きましたが、スーパーの店頭などに並んでいる野菜以外に購入する層は未だ熟していない印象を持ちます。人気の有機野菜を例に取り上げても、無農薬、低農薬野菜とどう違うのかなど消費する側で理解が十分に浸透しているとは思えません。落下したブルーベリーの粒ひとつから供給と需要の均衡の難しさ、特に大都市型農業の課題を思い知った染色経験でした。ただ、染色したTシャツを見てわかるように、わかったつもり、理解はマダラ模様に染まったぐらいです。