カーボンニュートラルはもう忘れ去られるのか「停電寸前」が照らし出した儚い本気度
2050年までの目標を設定した日本政府は2022年度予算の脱炭素の具体化をどう考えているのでしょうか。3月22日に成立した同年度予算は60項目にわたって脱炭素に向けた事業を盛り込んでいます。大半の事業は現状をどう把握し、脱炭素に向けた施策を補助金などで支援する内容です。
残念ですが、実効性を考えるとスピード感はゼロとしかいえません。予算を成立した当日の新聞・テレビを再度チェックしてみてください。ウクライナ 侵攻という世界史に刻まれる悲劇が進行している最中とはいえ、ほとんどカーボンニュートラルの文字は見当たりません。
予算編成の発想が昭和から継承する高度経済成長型から抜け出していません。A→B→Cというプロセスを踏んで目標に向かっていく。連続性を旨としています。順調に進んでいる時は効果的でしょうが、カーボンニュートラルに向けての社会・産業の再構築は一度ゼロにリセットする勇気と決断を迫っています。
日本の政府はできないでしょう。今回の電力不足を見ても、水力に頼るしかない窮状に追い込まれて初めて日本の電力の現状を改めて突き付けられたのです。東日本大震災以降11年間も過ぎたにもかかわらず、エネルギーや電源のポートフォリオの多様化、技術開発など課題は遅々として進んでいません。
日本のカーボンニュートラル戦略で最も欠けているのものは、決断するスピードです。仮に2050年の中期目標に向かって走っていると考え直しても、もう残り30年もありません。中国による台湾への圧力、フィリピンやベトナムと争う南沙諸島などの領海問題ーー今後のアジア太平洋の安全保障の行方を考えると、今回のウクライナ 侵攻に匹敵するエネルギー危機が発生しても不思議ではありません。
再び、原子力発電の再稼働問題を持ち出すのもわかります。でも、議論するだけ時間がかかるだけです。新規火力を建設すれば良いのではないかと考える向きもありますが、現在稼働中の火力発電所の老朽化が進んでおり、今後も廃棄や改修が続きます。
日本全体の発電余力が回復すると楽観できないのが現状です。現実をもっと深刻に受け止め、危機に追い込まれた場合はどこまで節電できるのか、あるいは日常の生活で節電を織り込むのか。ありていな言い方をすれば、ライフスタイルを変えるしかないのかを考える時です。かなり踏み込んだ発想と施策が必要です。国民には苦しい選択ではあるのは間違いありません。しかし、日本のエネルギー、電源の現状は、すでにそこまで追い込まれているのです。
停電によるブラックアウトは突然、襲いかかります。私たちは天候が回復して太陽光発電が回復したといって安心している余裕はないのです。電力問題は1年、2年で解決はしません。
手をこまねいていれば、未来はブラックアウト
福島第一・第二原発は関東圏の電力需要のために稼働していました。11年前、思い知ったはずです。「次に備えて、節電を心がけよう」で対処できるレベルで済まないことを肌で知っています。電気自動車?、自転車通勤、ウォーキング?、リモートワーク?正解は一つではありません。数え切れないほどあります。電源ポートフォリオを変える難しさんは、私たちにもっと大胆な電力に対する発想転換が否応になく選択せざる得ないことを教えています。できなければ近い将来、生活も未来もブラックアウトが待ち構えています。