富良野

富良野・北の峰 地価上昇1位 インバウンドの受け入れは大丈夫?

 北海道富良野市のスキーリゾート地が住宅地の上昇率で全国トップに躍り出ました。国土交通省が3月26日発表した2024年の公示地価によると、富良野市の北の峰地区が1㎡当たり49500円、上昇率は27・9%。スキーリゾートとして高い人気を集める「ニセコ」がある北海道倶知安町が2020年に44%上昇と2年連続で全国1位となっていましたが、過熱気味のスキーリゾート投資が富良野市へ移ってきました。「ニセコ」は早くから外国人観光客の受け入れ準備を進めていましたが、それでも混乱気味。富良野市は大丈夫でしょうか。

富良野・北の峰スキー場

 北の峰地区は富良野・北の峰スキー場の目の前。パウダースノーの雪質は人気が高く、ニセコ、ルスツと並ぶ北海道を代表するスキー場のブランドです。アクセスは抜群。ニセコやルスツは新千歳空港からバスで2時間以上かかりますが、富良野・北の峰は旭川空港からバスで1時間程度で到着します。

旭川空港からバスで1時間

 実は毎冬、北の峰スキー場へ通っており、宿泊はいつも北の峰地区のホテル。スキーヤーも宿泊客も外国人が増え続けており、欧米・アジアから訪れたスキーヤーとリフトやレストランで一緒に並ぶのは当たり前の風景です。今年もオーストラリアのスキーヤーと一緒にリフト上で雑談しましたが、長野県白馬村、ニセコなどを訪れ、富良野には2週間ぐらい滞在する計画でした。

ナイトスキーはかなり寒い

 皮膚感覚でいえば、スキー場のスキーヤーの半分は外国人。なにしろゲレンデの食堂は最も混雑するお昼時、食堂のスタッフが話す最初に使う言語は英語。顔を見ただけでは日本人とアジアから訪れたスキーヤーか識別できないので、とりあえずスタッフは英語で確認します。多くの日本人スキーヤーは「はあ?、この人、なんて言ったの?」という反応です。スキー場を運営する新富良野プリンスホテルによると、今冬は3月末までに20万人を超える外国人スキーヤーが訪れ、昨冬よりも1万人以上も多いそうです。

ゲレンデ食堂のスタッフは英語を優先

 富良野・北の峰地区が地価上昇率で全国トップになったことに驚きはありません。地区には外国人向けの別荘が並び、路上に立つ大看板には不動産物件を販売する広告が英語で書かれています。20年以上も前からニセコが国際リゾートに向けて大きく風景を変える過程を見てきましたから、次は「フラノ」の順番と予想していました。

 ただ、地元は外国人のスキーヤーの急増や外国人向け不動産の増加を歓迎しているかどうか。北の峰スキー場の目の前で外国人向けレンタルスキー店のスタッフは、「富良野市がしっかり対応しないと、街がバラバラになってしまう」と心配していました。北の峰地区のあるレストランも、昨年と打って変わってお客さんの受け入れに消極的になっていました。昨年の冬に訪れた時は欧米のお客さんで満員でした。しかし、今冬は予約を抑え、店内の客数を制限。満員で慌ただしく料理を提供するよりも、客数が減っても地元のお馴染みさんを大事にしたいようです。 

 富良野市、市民の準備は整っているのでしょうか。ちょっと古いの恐縮ですが、富良野市が2018年にまとめた観光経済調査をみると、多くの市民は観光が富良野市の経済発展に重要と認めながらも、観光地として目指す姿として「環境に配慮した持続可能な観光地(66・1%)、「観光地としての発展よりも、住民の生活を重視して欲しい」(36・5%)、「通年で多くの観光客が国内外問わず訪れる国際観光リゾート地」(23・9%)となっています。

ニセコの教訓を活かして街作りを

 ニセコで最も人気が高いひらふスキー場を抱える倶知安町は、もう10年以上も前から国際リゾートに向けた計画を作成するとともに、町民に対しても英語講座などを開催し、外国人観光客を受け入れる体制と意識の充実に力を入れていました。それでも、ここ数年のホテルや別荘などの急激な不動産投資、外国人観光客の急増で魅力が低下したとして、「ニセコ離れ」が始まっています。

 富良野市は国際リゾート地の先進事例「ニセコ」を参考に今後の街作りに活かすのでしょうか。本来は、豊富な農作物、乳製品、ワインなどを生み出す北海道でも有数の農業地帯です。外国から不動産投資で街並みや農地が虫食いのように荒れてしまえば、市民の反発は大きくなります。地価上昇率全国1位は、これから待ち構える都市計画の課題の難しさを告げているようです。

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