インドネシア in 北海道を実感 労働力が観光力に直結?好循環が加速

  インドネシアの存在感が北海道で急拡大していると聞きましたが、1年ぶりに訪れた札幌で「まさにその通り」と実感する出来事に出会いました。

大丸地下でニシンを買うインドネシア人

 札幌駅の大丸地下にある鮮魚店。観光客目当ての〇〇市場と違って、いつも新鮮な魚やカニなどを安心して買える価格で並んでいます。札幌在住の頃はもちろん、東京へ移ってからも札幌駅に着いたら、まず目の保養を兼ねて眺めに行きます。

 今回はとってもおいしそうなニシンが売られていました。価格も納得の水準。「すっごくきれいな艶をして、うまそう」とお店の女性に話しかけたら、「焼いても煮てもおいしいけど、刺身でもいけるよ」と勧めます。「今夜はホテル宿泊だから、眺めるだけでごめんなさい」と謝っていたら、ヒジャブを被ったインドネシアの女性がニシンに興味を持ち、真剣に選び始めました。すでに買い物カゴに野菜などが入っており、夕飯の食材を探しているようです。

 鮮魚店の女性がすかさず「煮物でも焼いても、おいしいよ」と問いかけると、その女性は女性に調理法をもう一度確認して納得したのか、ニシン2匹を買いました。

 ニシンは江戸時代から北海道を支える貴重な漁業資源で、北海道で育った私にはまさにソウルフード。残念ながら、東京では丸ごと1匹のニシンを見かけることも少なく、居酒屋でもお品書きに加わることはめったにありません。北海道でも極度の不漁が続き、縁遠い魚になってしまいましたが、最近は豊漁が戻り、文字通りかつての春告魚に。

 そのニシンをインドネシアの女性が迷いもせずに買ってしまう。偶然出会った風景に驚きしかありません。もう北海道、札幌の生活にすっかり慣れている空気を体に纏っています。

 「インドネシアの人はすっかり札幌の生活に溶け込んでいるんだ」という驚きを抱え、繁華街のススキノ方面に向かったら、多くのインドネシア観光客が目に飛び込んできます。インバウンドの観光客で賑わう狸小路でもスカーフのように頭から被るヒジャブが目立つせいか、1年前に比べてドッと増えた印象です。

 出会いは続きました。居酒屋で2時間ほど飲んだ後、ほろ酔いで歩きながらホテルに向かっていたら、時計台近くの交差点で突然、英語で「ホテルを探しているんです」と声をかけられました。エッと驚いて振り返ると、ヒジャブを被ったインドネシア人の女性5人が暗い歩道で立っていました。

 降雪が強いうえ、道路工事で交差点が一部通行止めされ、周囲は真っ暗。しかも酔っ払っていたので全く気づきませんでした。よく見ると、大きなキャリーケース2台をそれぞれ引っ張っており、5人で合計10台。歩道など周りは除雪していないので、キャリーケースを牽引できず、見動きできなくなり、立ち往生した様子です。

交差点で戸惑うホテルに辿り着けない女性

「どうしたのですか?」と尋ねたら、「宿泊予約したホテルまで歩いて行きたいのですが、道に迷いました。ホテルは〇〇でススキノにあります」と女性グループのリーダーと思われる人が答えます。頭の中で「えっ、ススキノのホテル」と???が10個ぐらい連なりましたが、スマホで確認したら、ホテルは実在していました。

 しかし、歩いていけば30分近くかかる距離です。しかも、降雪は強く、除雪できていない歩道が多く、深夜まで観光客や酔っ払いで混雑する通りを女性5人が10個のキャリーケースを引きずりながら、ホテルまで行進するのは絶対に無理と思えました。

 へたくそな英語を駆使して「こんなに雪が降る夜に歩いて行くのは不可能。タクシーでホテルまで向かうしかない」と説明すると、「お金はどのくらいかかる?」と訊ねます。「お金はあるのか」と確認したら、自信なげに頷くのでちょっと不安でしたが、日本に旅行するぐらいだからタクシー代はクレジットカードで支払えるだろうと思い、「タクシーで行くしかない」と再度、勧めました。

 ところが、いつもなら頻繁に走るタクシーが道路工事の通行止めで、周囲に全く見当たらない。土地勘がないので仕方がないのですが、札幌駅から不慣れない雪道をキャリーケースを引っ張り、疲れ果て呆然とした場所がまた不運でした。

 しばらくの間、タクシーを探すはめになりました。ようやく1台止まってくれたのですが、目的地のホテル名は知らないし、キャリーケースが多いので、運転手さんはとても無理と首を振ります。ここまで世話したら、見捨てるわけにはいかないので、「インドネシアの若い女性がせっかく札幌に来たのだから、送ってあげてよ」とスマホで調べたホテルの場所を画面で教えます。「人も荷物も分けるから、2人だけでも連れてって」と説得しました。

 その後、もう1台のタクシーもなんとか捕まえ、さきほどと同じ説得を繰り返して残る3人をタクシー車内に荷物と共に押し込みます。バイバイと走り去るタクシーに手を振り、なぜかホッとしました。

 赤道直下の国であるインドネシアの人たちに雪国・北海道を理解するのは簡単じゃないことは十分にわかりますが、若い彼女たちには不思議な国のアリスと同じような不安と楽しさを味わったのではないでしょうか。

来年はベトナムを上回り、第1位かも

 北海道新聞によると、2025年6月末の道内在住外国人は6万9620人と7万人に迫り、このうちインドネシア人は前年比45・5%増の1万1167人と5割近い増加率を示しました。5年前に比べ12倍も増えたそうです。最も多い在住外国人はベトナムの1万4035人ですから、インドネシアは昨年の第2位の中国の1万495人を追い抜き、2026年には第1位に躍り出るの勢いです。

 北海道新聞は人口増が続くインドネシアでは若者の就職機会が限られているため、職を求めて人手不足が深刻な北海道を訪れ、貴重な労働力となって北海道経済の新たな担い手として期待が高まっていると伝えています。

 JR北海道の旭川ー札幌を結ぶ特急に乗っても、ヒジャブを着る女性グループをよく見かけました。友人同士、家族連れなどさまざまですが、高価な皮の冬物コートを着こなすグループもあり、富裕層が北海道を訪れ始めているようです。

 北海道に在住するインドネシア人は故郷の家族や友人を呼び寄せたり、インドネシアでは体験できない雪国・北海道の魅力を伝えているのでしょう。北海道ならではの食の文化、大自然の魅力が広がり、観光客が増える流れが加速していることを肌で感じました。

◆ 写真はススキノの交差点風景。イドネシアの観光客と関係ありません。

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