みずほ、監督官庁の金融庁とともに経営改革ができるのか?
金融庁が9月22日、9月中にみずほ銀行と持ち株会社のみずほフィナンシャルグループに対しシステム運営に関する業務改善命令を出しました。みずほにシステムの改修や保守点検計画の提出を求めるとともに、金融庁がみずほのシステムを実質的に管理するそうです。システムの更新や保守などの業務などの改善を通じて体制強化するようです。
みずほはこれまでも大規模なシステム障害を繰り返しており、このままでは金融システム全体に対する不安を招く恐れがあると判断しました。みずほの金融システムに関する宿痾については何度も書いてきましたが、その根源は旧3行合併による責任の押し付け合いにあります。そこに割って入るかのように金融庁が加われば旧3行+金融庁の4者がシステム改善に取り組むことになります。まして金融庁にデジタル系のエキスパートが多いと思えません。
船頭多くして船山にのぼる
「船頭多くして船山にのぼる」の悲喜劇を目の当たりにするのでしょうか。みずほの名称は瑞穂から由来しており、みずみずしい稲穂が実る日本を意味しています。みずほが山に登ってしまったら、もう瑞穂の景色はさらに遠のく・・・。
金融庁もやむに止まれない心境だったでしょうね。9月22日付の読売新聞一面によると、「システム運営を事実上、直接管理する行政処分となる。運営体制の抜本的な見直しを求め、再発防止につなげる金融当局が、民間金融機関のシステム運営の管理に乗り出すのは異例だ。度重なるトラブルについて、金融システムの安定を脅かしかねない事態とみており、みずほグループだけに任せておけないと判断した」とあります。
確かに金融システムに不安を抱きます。みずほのATMが何度も停止すれば他の銀行のATMは大丈夫なのか?と素朴に疑問を持ちます。しかも、繰り返される障害の原因を調査したリポートを見ていても、みずほ首脳の対応、障害時の情報のやりとりなどを抜き出してチェックしただけでも過去の障害の教訓を参考にして業務改善しているのかどうか。
金融庁のみならず預金者などユーザーからこうした不信は消えません。みずほはあれだけ優秀な人材を抱えながら、現状が改善どころか足踏みしているかのように映ります。
みずほのシステム障害を簡単に振り返ります。2002年と2011年に大規模な障害で金融サービスが停止。2019年に基幹システムとして「MINORI」にバージョンアップしましたが、しかし、みずほグループが統合する前身の第一勧業銀行や富士銀行、日本興業銀行の3行と取引したシステム開発会社を変更せずに再構築したため、3行合併の弊害である複雑なシステム設計がさらに錯綜した可能性が高いと指摘されていました。
2021年2月以降、4回にわたってATMや送金システム、インターネットバンキングで障害が発生しました。みずほグループは6月に再発防止策を公表していますが、8月に店頭などで障害が発生しました。
ところが今回の措置により、さらに心配のタネが増えました。金融庁がみずほのシステムを実質管理するといっても、ちょっと想像できません。政府、あるいは霞ヶ関主導でデジタル改革が進められる力がどこにあるのかな?と首を傾げざるを得ません。