バイオ・合成燃料、事業化の道筋が見えてきたかも 官民協議会、議員連盟が相次いで設立
SAFやe-fuelなどバイオ燃料・合成燃料の事業化成功の兆しが見えてきたのでしょうか。推進を看板に掲げた官民協議会の設立や国会議員連盟が相次ぎ、官民一体で事業化する姿勢がより明確に打ち出されています。期待通り、加速できるでしょうか。
議員連盟の発起人は首相ら大物政治家がずらり
時事通信によると、議員連盟の名称は「カーボンニュートラルのための国産バイオ燃料・合成燃料を推進する議員連盟」(仮称)。10月24日に衆院議員会館で設立総会を開き、甘利明氏が会長に就く方向だそうです。設立の趣旨は、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル実現に向けて、バイオ燃料、合成燃料を事業化する政策立案を議論すること。
発起人がすごいメンバーです。岸田文雄首相、菅義偉前首相ら重量級の政治家が顔を揃えます。
議員連盟の趣旨は当然、バイオ燃料や合成燃料の普及、事業化への道筋を描く政策論議が中心になるでしょう。ただ、現在と前職の首相が並ぶこれだけの顔ぶれです。一寸先は闇が今でもまかり通る政治の世界ですから、私たちには見えない狙いが秘められているのかもしれません。秘め事については政治に詳しい人にお任せするとして、ここではバイオ燃料・代替燃料というかなりマニアック言葉に大物議員らを集める吸引力に注目します。
経産省は7、9月に官民協議会を
すでに経済産業省は7月にSAF、9月にe-Fuelの官民協議会の初会合を開いています。石油、自動車、船舶、航空の業界団体が参加しており、対外的に事業化を推進する姿勢を明確にしています。議員連盟も官民の背中を追い、応援する声が高まるのでしょう。
バイオ燃料や合成燃料は、航空機のジェット燃料や自動車のガソリン・ディーゼルの代わりに使われ目的で開発されています。航空機の場合、SAF(サフ)と呼ばれ、「Sustainable Aviation Fuel」の頭文字を取った造語です。日本語では「持続可能な航空燃料」と訳すのでしょうか。
主に植物などのバイオマス由来原料や、飲食店や生活の中で排出される廃棄物・廃食油などで生成しますが、微生物のミドリムシを原料に研究開発、生産しているユーグレナが実用化のめどをつけています。
自動車の場合はe-Fuelと呼ばれる合成燃料が主に使われ、水素と二酸化炭素を原料に製造される人工的な液体燃料です。太陽光 など自然エネルギーを利用して得た電気を使って生産するので、生産過程でもCO2の排出量を抑えることができるというのが売り文句です。ドイツや日本などで実用化研究が進んでいます。
事業化はこれからの段階
SAFもe-Fuelも実用化にめどをつけたとはいえ、事業として成功するかどうかはこれからの段階です。しかし、内燃機関エンジンに代替燃料としてこれまで通り利用できるため、「ガソリン車を諦めて電気自動車に切り替えるしかない」といった劇的な決断をしないで済みます。地球温暖化を促すCO2を大量に排出する産業として批判の矢面に立つ航空機や自動車の両産業にとって、CO2抑制をPRしながら事業構造の改革を進める選択肢を増やせますし、時間も稼げます。
欧州や米国では航空機のCO2を削減するため、飛行機の移動範囲の制限、ビジネスジェットの利用自粛などが議論され、自動車も電気自動車への全面切り替えを宣言するメーカーも現れています。国の経済、政策に大きく関わるだけに、企業としても政府、政治家とともに政策立案を議論するしかありません。
政策立案や予算化で推進が明確に
日本の場合も航空、自動車の主要企業は政府、政治家と長年、培ってきた信頼関係が下地にあります。バイオ燃料・合成燃料を推進する姿勢が対外的に政官民一体で示されたことは、今後の政策論議、予算化などでも明確に成果が出てくるはずです。