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早朝、雲が描く美しいぺワ湖

ポカラを歩いていたら、村上春樹の「世界の終わり」の脱出口を見つけてしまった。ナマステ

 バス旅は8時間ぐらいかかります。日本でバスで8時間といえば高速バスを思い浮かべるでしょうが、当時はテレビのドキュメンタリーで目にするような山の峠を昇ったり降ったり。道路の大半は舗装されていません。バスは日本だったら絶対に車検は通過しない車両です。ポカラまでの道のりは荒地と峠越えの連続です。

ポカラに続く峠道

ポカラに続く峠道

 古いサスペンションはギシッギシッという音が絶えず続きます。音が絶えないということは荒れた道路からの衝撃も絶えないということです。地震体験車両を思い出してください。バスに乗ってはいるのですが、バスの座席に腰をおろしているわけではありません。常に上下に飛び上がっているのです。体内の内臓も揺れ放しです。内臓の配置がずれないか心配でした。

 ネパールのバスといえば、乗客が屋根に座る風景を見たことがありますよね。車内に座っていられないので、バスの屋根で揺られた方が良いと考える乗客が現れます。

 とりわけ外国人の観光客はネパールのバス旅行といえば屋根の上というのが「お約束」という先入観を持っています。道路の事情が許すならバスの屋根を座席代わりに乗ってみたいと考える外国人は多いのです。私もそうでした。しかし、現地の事情を熟知している現地のネパール人は極力、屋根には座りませんでした。

道中、舗装・排水工事も

道中、舗装・排水工事も

 なぜ?って、道路事情が外国人の予想を上回るほど悪路だからです。道路から巻き上がる砂ぼりがすごいうえ、バスから伝わる振動が半端ないのです。映画やテレビで見るほど乗り心地は良いどころから、酷くてはっきり言って乗ってられません。もう意地になって屋根に居続ける外国人観光客はいましたが、必死でした。「おい、テレビで見たドキュメンタリー番組と違うじゃないか」と心の中で嘆きながら、耐えていたはずです。そして屋根に座った乗客の半分ぐらいは途中、車内に戻ります。ひどい揺れは変わりませんが、砂ぼりや泥は襲ってきませんから。

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羊男とトリックスターの存在

 ポカラを初めて訪れた1980年代後半、村上春樹さんの小説にのめり込んでいました。羊年生まれということもあって、小説に登場する羊男の役回りが好きです。

 高校生の頃、ユング自伝などを読んで心理学に精通しているフリをしていた時期がありました。生意気な頃です。ユングの世界にのめり込んだその時、トリックスターを知りました。それが羊男そっくりに感じたのです。常識や秩序にとらわれず、周囲を慌てさせるいたずら好きなキャラクターです。

 ユングは人間の潜在意識に潜む影のような存在とみなし、心理分析のキーワードに設定していました。思春期の頃です。なんとなくトリックスターの存在と役回りが高校生の自分にはスッと納得できたのです。授業の休み時間、ユングの心理学で性格や家族などを推測する遊びを楽しんでいたら、学校内で「占いが当たる」と評判になってしまい、「占いじゃない、心理学だ」と心の底では思いながらも女子生徒に「占って」と頼まれると「ああ、良いよ」とニコニコして「あなたの性格は・・・」とわかった風に話していました。

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